拙僧に拳で語ろうとは、無茶もいい所。

軽く撫でてやったら、あっさりと口を割りよった。
世話役のネポス老の住居。長年に渡り、暗殺を指示してきたドンだ。
「・・・という訳だ。悔恨の日々ぢゃったよ。だが仕方なかった。」

「ヤケにあっさりと話してくれたな。」
真相を話すよう迫る拙僧に、ドン・“鼻利きのネポス”は応えた。
ネポス老は、一時マルカルスを支配していたフォースウォーンの一員。街から追い出され、彼らの王が囚われの身となった後、かの王が牢獄から送ってくる指示に従って、黙々と暗殺を続けてきたらしい。
「王は何故、暗殺の指示を?」
「処刑されるのを止めさせる為ぢゃ。」

「つまり取引か。」
「ああ。この街の名士を気取る男とな。街の実権を握っておるのは、あの男ぢゃ。我々フォースウォーンに邪魔者を排除させ、飼いならした衛兵にもみ消しをさせておる。腐った奴ぢゃて。」

「これで全てか?」
「ああ、知ってることは全て話した。だが、残念ながらこの館を生きて出させる訳にはいかぬのう。」
「・・・あんたがな。」
真相を洗いざらいぶちまけたのは、拙僧をこの館から逃がさぬよう、準備をするため。
誤算だったのは、取り囲んだ部下全員を持ってしても、拙僧に敵わなかったこと。
とうとう黒幕が分かった。
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