ウインドヘルムの街に入ってすぐ、興味深い話が聞こえてきた。
「やっぱりあいつは殺人鬼なんだね!よく分かったよ!」
「ちがうの・・ちがうのよ。」
「ご婦人。先ほど、物騒な話をされていたようだが?」
「・・・聞こえてしまったのね。アヴェンタス・アレティノのことよ。」
子供相手に難儀していた女性をつかまえて、聞き出したところによると、アヴェンタス・アレティノという少年の住む家から夜な夜な不気味な呪文が聞こえてくるという。
以前はそんなことはなく、母子の仲睦まじい暮らしぶりは普通そのものだったが、母親が他界してから一変したとのこと。何でもリフテンの孤児院に預けられた少年が、脱走してこの街に帰ってきてからというもの、呪詛のような言葉が聞こえるようになったらしい。
トラブルは冒険者の糧。
さっそく拙僧は鍵のかかっていたアレティノ家のドアを開け、するりと体を中に滑り込ませた。そして奥の部屋へこっそりと忍び寄ると・・・
ビンゴ!
骸骨やら奇妙な肉やらで形取った怪しげな人形を並べ、黙々と呪文を唱えながら、ナイフを人形につきたてるアヴェンタス少年の姿があった。
「やっと来てくれたんだね。」
少年は拙僧を見て、驚く風でもなく、にへら~っと薄気味悪い笑みを浮かべた。
・・・こわい
・・・マジで怖いよ、この子。
少年の依頼を受けて、リフテンのオナーホール孤児院へとやってきた。
ここの院長グレロッドは、引き取った子供たちに虐待を繰り返しているらしい。
念のため、子供たちや養育士の女性に話を聞いてみたが、アヴェンタス少年の話に嘘はなかった。
いつか殺されるかもしれないと怯える子供たち。
もはや一刻の猶予もない。
「帰りな!ヨソ者の出る幕じゃないよ!」
・・・それが、この婆さんの最期の言葉になった。
「やったあ!こんな日が来るなんて!」
「自由だ!自由だ!キャハハハ♪」
「グレロッドがいなくなった!グレロッドがいなくなったーー!」
事態を知って、はしゃぎまわる子供たち。
良かれと思った末のことだが・・・人の不幸に興奮する子供たちをみて、奇妙な感じがした。
疲労を覚えた拙僧は、そそくさとウインドヘルムに帰った。
「ありがとう。依頼どおり、ヤ(殺)ってくれたんだね?」
「ああ。ヤ(犯)った。」
「婆さんが相手だと簡単だったでしょ?」
「いや、婆さんが相手だからこそ、キツかった。」
「へえ?プロでもそうなんだ。で、最期の様子はどんなだった?」
「腹上死にパターンなんてあるのか?」
「え?」
「ん?」
・・・何やら、アヴェンタス少年と拙僧の間に行き違いがあったような気はするが、依頼者の期待通りの結果になったようだし、まあ是としよう。
疲れた身を横たえて、自宅で一眠りした後、奇妙な手紙が届けられた。

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