「どおりゃああーー!娘を返さんかい、ワレーーーー!!
」
砦に突入してからと言うものの、エンモンはずっとこの調子だ。

フォースウォーンの姿を見止める度に、得物のつるはしを振り上げて襲い掛かっている。
フォースウォーンの連中は、奇声を発して襲い掛かる男よりも、その背後にいる拙僧の姿を見て、戸惑っていた。
(エ、エダジマ!なんであんたが一緒にいるの?)

(馬鹿野郎。お前達のせいだろ!)

(え?何のこと?)

(分からんのか?この人の娘さんを誘拐したんだろ?)

(あ、あれは金になるらしいってボスが言うから。)
エンモンの肩越しに、拙僧とフォースウォーンのアイコンタクトが交わされる。時にはジェスチャーまで交えて。
(とにかく、適当にやられたフリして倒れとけ!)

(あんたはどうすんだ?)

(俺はこの人を見張って、ずっとついてく。)
エンモンのつるはしが空を斬る度に、フォースウォーンがいささか、わざとらしく絶叫して倒れていく。
「うわあああぁぁ!!や・ら・れ・た~~~!」
下手な演技だが、無我夢中のエンモンに気づく様子はない。
「お父さん!」
「おお!フョトラ!無事だったか。」
「お父さん、助けに来てくれたの?」
「ああ、お前の為ならどこだって駆けつけるさ。」
「それにこの人が助けてくれたんだよ。」
「お坊さん?・・・ありがとう。」
「いやいや、どういたしまして。」
フョトラは次代のシビルに選ばれたことを知ると、大いに喜んだ。
エンモンも娘が神に仕える巫女になることに賛同した。
「俺も娘に着いてっていいか。娘が心配だし、その・・・
女神官をいっぺんでいいから一目見てみたいし。」
このエロ親父め。
まあ、いいか。拙僧も他人のことをどーこー言えんし。
「良くやってくれたわね。ありがとう。」
次代のシビルが無事やって来たのを見て、ハマルはとても喜んだ。
「あなたにはお礼をしなきゃ。」
「いーよ。もともと拙僧が引き起こしたトラブルなんだろ?」
「でもあなたのおかげで、万事上手くいったのも確かだわ。ちょっと手を出して。」
拙僧がおずおずと手を差し出すと、ハマルは優しく口付けをした。
ドキン
「はい。これであなたにはディベラの加護がつくわ。これからの旅が無事であるように。」
「ふ、不覚。拙僧ってば盗賊なのに大事なものを盗まれてしまいました。」
「は?」
「それは拙僧の心です。」
「はあ?」
「ハマルぅぅぅーーー!好きだああ!!」
「こ、こら!離しなさい!私は神に仕えるものですよ。コラ、止めなさいってば!!」
あとの出来事は想像にお任せします・・・。

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