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【2024/04/25 06:35 】 |
033 フオラのためにミストウオッチを探す


「助けて!お願い!助けて!」
「落ち着いて。一体どうしたと言うんです?」

雪山を移動中、突然道の向こうから走ってきた女性に助けを求められた。
酷く慌てているようだ。

「山賊です。私は彼らに誘拐されそうになったんだけれど、上手く逃げ出してきたの。」
「そいつらに追われてる?」
「分からない。上手く撒いたかもしれないけど。」
「とりあえず街まで送りましょう。」
「いいえ、大丈夫よ。それよりあなた達を腕の立つ冒険者と見込んでお願いです。どうかミストウオッチに行って、そこをアジトにしている山賊達を壊滅させて下さい。」


ともかくミストウオッチへとやってきた。
見張りの山賊に「身代金はどーなった?」だの訳の分からない事を言われたが、とりあえず倒した。

さてさっそく1Fに侵入。
隠密行動をしていたにも関わらず、いきなり死角から話しかけられる。
俺ってスニーク下手だなあ。



「良かった。奴らの仲間じゃなさそうだ。」
「あんたは?」
「俺はクリスター。行方不明の妻を捜している。方々探したんだが、まだ見つかってない。最近、ここの山賊の悪評を聞きつけてね。もしかして、と思ってやってきた。妻が行方不明になったのと、ここの山賊の評判が高くなったのは同時期なんでね。なんか胡散臭いと思ったんだ。」
「で、こんなところで何をやってる?」
「見りゃ、分かるだろ!俺は戦士じゃない。荒事には向いてないんだ。だからこれ以上、先に進めなくて困ってる。良ければ妻を捜してくれないか?」
「奥さんの名は?」
「フオラだ。きっと彼女はここにいる。そんな気がするんだ。」



「こういうダンジョンって、結局ゴールは最上階だったりするんですよね~。」
「じゃあ、中を抜けるの止めて、いきなり裏山伝いに天辺に行ってみる?」



「ビンゴでしたね。一切の戦闘なしに、いきなりラストステージですよ。・・おっと扉に鍵がかかってるな。」
「クリスターからもらった鍵が役に立ちそうよ。」



「こそこそしている、臆病者さん。一体何の用?」
「あんたが山賊の親玉か?・・・フオラって女性に用があるんだ。いるか?」
「フオラって・・・。どうしてその名を知ってるの?」
「待って。知ってるんだな?やっぱりここにいるのか。」
「知ってるも何も私がフオラよ。」
「えっ・・・・。」



「馬鹿でどうしようも無い夫との生活が嫌で逃げ出したのよ。ここにやってきて、ごろつきどもに私の実力を見せたら、すぐに従順になったわ。今やここら一帯の傭兵や腕利き共が、皆私の傘下に入りたがってる。」
「そいつはすごいな。でも旦那さんはどうする?」
「いっそ始末して・・・いや、ダメ。別に恨みはないもの。・・・ねえ、お願い。上手く彼を言いくるめて、諦めさせてもらえないかしら?」
「う~ん。でもどうすれば・・。」
「これを使って。」
「これは結婚指輪?」
「そうよ。何の因果か、ずっと手放さずに持ってたの。未練なんてさらさら無いのにね。」
「・・・分かった。とりあえずやってみよう。」



帰りはミストウオッチの塔内を抜けたが、頭領の知り合いということで、山賊達は皆友好的になり、あっさりと通らせてくれた。



「おお!待ちわびたぞ。どーだった?」
「これがあった。」
「こ、これはフオラの指輪じゃないか!?彼女は一体??」
「探したが、姿は見当たらなかった。」
「そうか。もうどこかに連れていかれてしまったんだな。でも生きてることには違いない。ありがとう。ヨシ、別の場所を探すことにしよう。」



クリスターが塔を出た後、死角からフオラが現れた。
「聞き耳を立ててたのか?」
「あなたが上手くやってくれるかどうかを見るためにね。」
「もう彼はここには来ないだろう。」
「そのようね。ありがとう。いずれ何らかの形で恩義に報いるわ。とりあえずその指輪を報酬としてもらって頂戴。それなりの値段で売れるはずよ。」
「本当にいいの?」
「いいのよ。縁が切れてさっぱりしてるんだもの。感謝してもし足りないぐらいだわ。」


山賊の壊滅はならなかったけど、友好的関係は結べたし、まあいいか。
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【2012/12/01 16:26 】 | 伝承の旅 | 有り難いご意見(0)
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