俺はシセロの頼みを聞いて、ロレイウス農場へとやってきた。
「あ~、ロレイウスさん?」
「そうだが。何か用か?」

「近くでシセロって人が・・・」
「それ以上言うな。俺が知ってることを言うんだったらな。当ててやろうか?あの頭のイカレた道化師野郎が立ち往生して困ってるんだろう?そして車輪の外れてしまった荷馬車を俺に直して欲しい。・・・違うか?」

「当たってます。っていうか、どうして彼の頼みを拒否るんですか?ちゃんと報酬は支払ってくれるんでしょう?」

「金は問題じゃない!あいつの格好を見たろ?はん!道化師だ!?このスカイリムで?ずっと俺はここで過ごしてきたが、かつて一度だってあんな奴を見たことはないぜ。」
「まさか、それが理由じゃないですよね?」

「俺が言いたいのは奴はイカレてるってことだ。それに、あいつの荷物も怪しさ満点だ!母親の棺桶だって?間違いなく嘘だね!武器だったらどうする?スクゥーマだったら?・・・あんな奴には関わらない方が利口なのさ。」


「ん~。確かにそうかも。」

「分かってくれたか、兄ちゃん。」
「でもどうしたらいいだろ?俺、ちょっと絡んじゃいましたよ。」

「大丈夫さ。巡回中の衛兵に通報すればいい。」
俺は街道に戻って、シセロに見つからぬよう、離れた所で衛兵が来るのを待った。
「すみません。この先をもう少し行った所で、不審者がいて、怖くて通れないんです。」

「不審者?どんな奴だ?」
「道化師の格好をしています。時々奇声を発するし、とにかく異様な雰囲気を持っています。」
「よし、分かった。調べてみよう。」
「よろしくお願いします。」
「おい、そこのお前。こちらを向け!」
「はあん?シセロを呼ぶのは誰だ?」

「シセロと言うのか。積荷は何だ?」
「母の遺骸と棺桶だ。」

「本当か?ちょっと調べさせてもらおう。」
「触るな。何人たりともそれは許さん。」

「ほう?衛兵の職務を妨害すると言うのか。それではお前は立派な犯罪者だ。大人しく牢に入ってもらうとしよう。」
「ぬぬぬ・・。これはロレイウスの仕業だな。よくもよくもよくもシセロを裏切ったな!絶対にあいつに目に物を見せてくれる。許さん、許さんぞ!」
「あんたは何も心配しなくていい。もう少し待てば、交代の衛兵がやってくる。そうすれば全員で街まで移動して、奴を牢にぶち込んでくれる。」
「ありがとうございます。これで安心して旅を続けられます。」
「ぷぷ。なんか残念な事になったね。」

「お前は全くシセロの役に立たなかった。がっかりだ。残念だ。失望だ。」
「まあ、車輪はきっと衛兵が直してくれるよ。ただし証拠物件として押収されるだろうけど。」
「ああ!シセロは秩序を守るのが大好きなんだ。シセロはただ立っていただけだ!何もしちゃいない。不当だ。横暴だ!」
俺は喚き散らすシセロの下を去った。
「どうだ?奴を衛兵に突き出したか?」
「ああ。」
「はっはー!お前は最初から気に入ってたんだ!おう、これ少ないけどとっとけ!」

「え?別にいいよ。」
「いいから取っておけって。このご時勢だ。何かと物入りだろう?」

「・・分かった。ありがたく受け取るよ。」
「そう、こなくちゃ。まあ、何も心配することはねえぜ。お前さんは巨悪の芽を事前に摘み取ったに過ぎないんだ。そう思いな。」
「う~ん。」
まさか後日ロレイウスの言葉が真実になろうとは・・・この時の俺には思いもよらなかった。
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