シセロの逮捕から数日後、奇妙な噂が俺の元に飛び込んできた。
『シセロは闇の一党の一員ではないか?』
気が狂ったとしか思えない、かの道化師がかなり体を鍛えていたこと。

彼が連れていた『母親』の遺体が、数百年以上も昔のモノと分析されたこと。

その割りに、異常なまでに保存状態が良いこと。
まことしやかに衛兵の間で囁かれる、これらの情報を入手してきたのは、あらゆる人脈を駆使したライム先輩の功績である。他にも、押収した彼の日記などがあったらしいが、詳細な情報は俺には入ってきていない。
シセロは、ドーンスター周辺の北方地域から南下している最中だったようだ。

どこから来て、どこに向かっていたのか?
尋問と同時進行で、現在、多数のペイル兵が治安を乱す仇敵『闇の一党』の尻尾を捕まえるべく、捜索に当たっている。さらに有力な情報提供者には、報酬が首長から出されることになり、色めきたった賞金稼ぎや冒険者らも捜索に加わっていた。
かく言う俺とハルカ先輩もその一人である。
「う~、さぶ。本当にこんな所に闇の一党のアジトがあるんですかねえ?」

「ありえないことじゃないわ。実在するかどうかさえ疑わしいと言われている・・・長年、秘密に包まれた組織なんだもの。普通の思考で捜索していては、駄目なんじゃない?」
「ともかく寒すぎて、俺もう体力的に限界です。峠の向こうに灯台が見えますから、あそこで休憩しませんか?」

「カイトくん・・・研究熱心なのは良い事だけど、もう少し身体の鍛錬もしないと駄目よ。」

「魔法の修行はともかく、体力的なのはどうも苦手で・・。そういう分野は先輩にお任せしますっ!」

「もうっ!」
「先輩・・・馬が死んでます。」
「おかしいわね。飼い主はどうしたのかしら?」
「なんかヤバイ事が起こってる気がしますよ。」
「そうね。用心しながら灯台の中に入ってみましょう。」
灯台の中は夥しい量の血で床も壁も赤く染められていた。
「せ、せんぱい。これって・・・。」
「カイトくん!向こうで人が倒れているわ!」
「浅黒い肌・・・レッドガードのようですね。ハンマーフェルに多くが住んでるんでしたっけ?」
「そうよ。スカイリムではあまり見かけないわね。でも独立心旺盛な人が多いって聞くから、中には遠いスカイリムまで来る人達もいるみたい。」
「先輩!こっち!」

「あれれ?シャウラスよ、これ。」
「あー知ってます。地下洞窟やら遺跡やらで、よく出没するんでしたよね。でも何故こんな所に??」
「分からない。・・・ともかく誰かがこいつを倒したようね。」
「ってことは生存者がまだいる?」
「可能性はないとは言えないわ。探してみましょう。」
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