さすがにソリチュードのドーン城ともなれば、厨房はデカイな。
コック帽や制服も一通り揃っているようだ。
一式借りてみた。結構様になってるな、うん。
「美食家様ですね。お待ちしておりました。ポタージュ料理の下ごしらえはほぼ済んだんですけど、仕上げの指示を頂きたいんです。」
「わかった。美食家自身の指示だ。ありがたく受け取れ。」
「はい!感激です!」
「まずは『スイートポテト』だ。」
「・・なるほど。芳醇な甘みが広がりますね。私も時々使うんです。」
「次は『吸血鬼の遺灰』だ。」
「ひっ。本気ですか!?」
「・・・美食家に口答えするのか?」
「いえ、決してそのような。なぜか厨房に材料もあることですし。」
「次は『巨人のつま先』だ。」
「ええ!?」
「コリコリした弾力があると、ポタージュ全体の味が増すんだ。」
「・・・そ、そうなんですか。なるほど、勉強になります。これも何故か厨房に材料がありました。」
「そして『金貨』だ。」
「も、もう驚きませんよ!そうか、あのざらざらした舌触りは、これが正体だったんですね。」
「ああ、そうだ。」
「これで終了ですね。では食堂へ料理を運・・・」
「待て!まだ最後の隠し味を入れていない。」
「え?そうなんですか!?てっきり完成したとばかり。」
「これを入れろ。」
そう言って拙僧はジャリンの根を取り出した。
ジーナは躊躇いもなく、ジャリンの根を鍋の中に入れ、しばらく煮込んだ後、火を止めた。
「美食家様。では食堂へと参りましょう。皇帝陛下を始め、来賓の方々があなたとお会いになりたがっています。」
そう言って、自分は鍋を抱え食堂へと歩き出した。
拙僧も後に続く。
「おお!そなたが美食家か。会えるのを楽しみにしていたぞ!」
「美食家を呼んで料理が食えるとは、皇帝というのも辞められんの~。」
そう言って拙僧特製のポタージュをあっさりと皇帝は口に入れた。
うっ。
皇帝は一瞬でソブンガルドへと召された。
皆の視線が皇帝に集まった一瞬の内に、拙僧は塔の上へと逃げ出した。
階下からは同席した貴族やら兵士やらジーナの叫び声が聞こえてくるが、構っていられるはずもない。
「止まれ!闇の一党め!」
脱出を試みる拙僧の前に、大勢の兵士たちが立ちふさがった。
そしてマロ指揮官が拙僧を見下ろしていた。
「よくも、わが息子を!お前は必ず成敗してやる。」
「えらく情報通だな?」
「お前の仲間の一人が裏切ったのさ。お前の命と引き換えに、闇の一党を見逃してくれだとよ。」
「まさか。」
「事実だ。だが俺の気が変わった。お前を始末し、さらに闇の一党も壊滅させることにしたよ。今頃、アジトの仲間もソブンガルドへ召されていることだろう。悪人のお前らでも行けたらの話だがな。」
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