リーチクリフ洞窟の中はドラウグルだらけだった。
拙僧とエオラと名乗る女、それにリディアはほとんどしゃべる暇もなく、ただひたすら敵を倒すことにかかりきりだった。
暗闇の奥から、次々と現れ出るドラウグル達。
いい加減、その数の多さに辟易したところで、ナミラの祭壇へと辿り着いた。
それはエオラの依頼を達成したことの証でもあった。
「ふふふ。ご苦労様。あなたには報酬を支払わなくちゃね。」

「じゃあ、さっそく!イタダキマー・・」

「待って!あせっちゃダメ。ここで今夜晩餐会を開くから、その後でね。」

「晩餐会?二人っきりじゃないのか?」
「ふふふ。美人が他にも来るわよ。楽しみでしょ?」
「そりゃ、まあ。ハーレムプレイと言うのも悪くはないが。」

「じゃあ、決まりね!で、あなたにはメインディッシュの用意をお願いしたいの。」

「メインディッシュか。分かった?で、牛・豚・鶏・魚・・・どれで行くんだ?」




「人よ。」

「人?」

「そうね。あの口うるさいけど、若々しいヴェルサス修道士が適任ね。」

「・・・分かった。」

「ああ・・・楽しみだわ。早く戻っていらしてね。待ち遠しいわ。」
「ほんとに!本当に大丈夫なんでしょーね!?」
「拙僧を信じろって!」
「私、食べられちゃうかもしれないんですよ!」

「人肉喰いが一同に会するって言うんだ。一網打尽の絶好の機会じゃねえか。」

「あなたは女性の色香に惑わされやすいという噂も聞いてます。」

「うっ・・・。」

「あっ、今、目が泳ぎましたね!」

「泳いでねえよ。とにかくあんたはもう奴らに目を付けられてるんだ。今日難を逃れたところで、未来はないぞ。」
「ううう。本当にお願いしますよ、従士様。守って下さいね。」

「男ってのは守りがいがねえよなあ。逆だったら良かったのに。」
目の前のヴェルサスと、エオラの艶かしい肢体を比較しながら、ため息をついた。
「何か言いましたか、従士様?」
「い、いや何でもねえよ。ホラ行くぞ!」
晩餐会の準備は整っているようだ。
食卓にはパンやワインやチーズが並べられ、先客たちが和気藹々とそれらを頬張りながら、チラチラとヴェルサスに視線を送っている。
居心地を悪そうにしながらも、ヴェルサスはホストのエオラに、招待されたことの謝意を述べていた。
「楽しんでいらしてね。あ、そうだ。まずはワインでもいかが?とびきりの品が入ったんですのよ。」

「それは楽しみだ。早速頂きましょう。」
ヴェルサスは何も知らないかのように振舞っている。ややぎこちないが、上々の演技だ。
その間、拙僧は招待客ひとりひとりに会釈をして回った。
「あ、あんたは!」
「あら?先日は夫の遺品の件でお世話になりました。」
マルカルスで雑貨屋を営む女主人リスベット。未亡人独特の色香が男心をくすぐってくれたもんだが、この人も死肉喰いだったとは。
「お前らは確か。」
「おう、従士さん。うちの肉を贔屓にしてくれてありがとよ。」
「まさかいつも売ってるのは?」
「あれは正真正銘の牛肉さ。ま、人に比べりゃ、味は落ちるけどな。」
「うちの番犬達が、いつも人を見て、激しく吠え立てるのは何故だと思う?」
「さあな。」
「味を知ってるからだよ。くっくっく。」
ふと、気付けばヴェルサスは祭壇の上で、高いびきをかいていた。
ワインに眠り薬が混入してあったのか!
「この方はもう何をされてもしばらくは起きません。あなたに一口目を差し上げますわ。」
「食事を済ませて、早く別室で3人で楽しみましょう。」
エオラが豊満な胸を揺らしながら、拙僧に語りかけてきた。

リスベットも傍らに来て、熱い視線を送ってくる。
「いや、ごめん。さすがに無理。」
守備範囲の広さには自信があるが、拙僧、やっぱ駄目だわ。
そう言って、エオラを剣の峰で殴って、気絶させた。
物陰に潜んでいたリディアもすかさず飛び出してきた。
その途端、客の一同が拙僧達に襲い掛かってきた。
「裏切者!」

「お前達の肉を食ってやる!」
・・ふぅ。ヤレヤレだぜ。
変な嗜好があるとは言え、一般市民が拙僧に敵うはずないじゃん。
「おい、起きろ。」
眠らされていたヴェルサスを叩き起こし、リディアに無事送り届けるように命じた。
「従士様は?」
「こいつらの後片付けをしていく。」
縛り上げた男達と、下着姿にしたエオラ&リスベットを横目で見ながら答えた。

リディアの目に非難の色が灯っていたが、あえて無視。
これぐらいの役得はあっても良いでしょ。
PR