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【2024/04/29 00:24 】 |
n039 信長元服 (細川家)5
銀杏の葉が赤くなる頃、本格的に細川家の摂津攻めが始まった。今回も大将として軍を率いる竜之介は、十河一存の敷いた行軍路(妨害工作により既に一部は潰されているが。)を通り、難なく国境の本願寺砦へ接近することができた。だが本願寺勢も主力部隊の他、加勢に馳せ参じた僧兵や一向宗らの団結により予想以上の抵抗を見せ、細川勢に夥しい出血を強いた。
 一時はさながら地獄絵巻のような様相を見せた細川方陣中にあって、長尾咲率いる随行医療隊は傷病兵の手当てに追われていた。
「はわわわっ!落ち着いてくださいまし!傷はそんなに深くはありませんよ。気丈になさって!あれっ、もう軟膏が足りませんわ。」
「咲様こそ落ち着いてください。その方が血を流されているのは額ではなく、腕ですよ。」
 傍らの看護長に叱咤されながらも、咲は本来の落ち着きを取り戻してきぱきと傷病兵の手当てを進めていった。戦場での混乱には不慣れなだけで、元々有能な医師なのだ。ともかく医療隊の献身的な看護により、傷病兵は早々の回復を果たし、再び戦場へと戻っていくのだった。
 次から次へと沸いて出る細川勢を観て、あたかも兵力が無尽蔵であるかのように感じとった本願寺勢は、まず先陣の兵達が明らかに動揺を見せるようになった。
 勝機を見て取った遼太郎と竜之介はここぞとばかりに突貫を試み、その作戦が功を奏して本願寺勢の防衛砦を、昼夜を分かたぬ猛攻の末に陥落せしめることができた。摂津に入った竜之介らの眼下に広がるのは、石山御坊までは遮るもののない平坦な大地が広がるばかりだった。


「進め進め、今が好機ぞ!敵が応戦体制を敷く前に、一気に石山御坊に取り付くのだ!」
すかさず杉隆滋の下知が飛び、鬨の声を上げて細川勢がどっと摂津領内になだれ込んだ。
 本願寺勢の散発的な抵抗はあったものの、全く意に介することもなく、それらを瞬く間に蹴散らしていった。 石山御坊から出撃した遊撃兵団すらも一戦してすぐに総崩れとなり、散り散りになって逃げ出した。が、城に篭る守備兵は細川勢が至近に迫りくるのをみて恐れをなし、城門を開けようとしなかった。
「開けろ!俺達を中に入れてくれ。」
 帰還兵が口々に叫ぶが、城兵は全く応じる気配がない。怒号が飛び交う中、とうとう帰還兵の中には寝返るものまで現れ始めた。本願寺勢の同士討ちの混乱に乗じて、易々と城門を突破した隆滋は城内の要所を次々と押さえ、ついに本丸にて総大将・本願寺証如や一門衆・願証寺証恵らを初めとした一線級の将を生け捕りにすることに成功したのである。本願寺証如にはすぐに逃亡されたものの、ここに石山御坊は陥落し、細川勢の掌握するところとなった。
 

 本願寺の将らは牢へと放り込まれたが、獄生活を送る数日間の間に最期を悟り、大人しく仏に祈りを捧げたり、只管念仏を唱えていた。だから不意に現れた遼太郎から出獄を促された時には、皆死を覚悟していた。だが思いがけず縄目を解かれて、城門の外に案内された時にはだれしもぽかんとした表情を見せた。
「・・我らをどうするつもりじゃ。」
「どうするも何も解放するのです。分かりませんか。」
「何ゆえか。戦に敗れた者は死者となるか捕虜として勝者の道具になるのが、戦国の世の倣いであろう。そうでなければ何のために戦う道理がある?勝って自分達の思いのままに国を作るのが我ら共通の願いではないのか?」
「確かに負けたくはありません。できるなら早くこの荒んだ世を平和に満ちた、民が笑って過ごせるような世にしたいと思います。ですが泰平の世を敗者の死屍累々の上に築こうなどと思ってもいません。」
「侮るなよ、そんな甘い考えが通ると思うか。」
「思ってますよ。割と真剣に、ね。」
「ふん、了解した。そなたがかような甘い戯言をいつまでほざき続けていられるか楽しみに見ててやろう。・・・さらばじゃ。次に戦場で敵として会うた時、情けをかけることはないぞ。」
「一向に構いません。何度でも我らが勝ちますので。」
 言葉とは裏腹に、願証寺証恵らは幾分かすっきりとした表情で加賀の本領へと落ち延びていった。彼らを見送った後、一部始終を物陰で見守っていた竜之介が遼太郎の肩をぽんっと叩きながら呟いた。
「伝わるといーな。お前の平和を希求する想いがあいつらにもさ。」
「信じてるさ。彼らだって、誰もが幸せになれる世の中を作りたいって考えてる。そう、根っこのところは皆、同じことを考えているんだってね。」
「さあて、上のモンらに詫び状を書くかねえ。捕虜に悉く脱走されましたって。」
「すまん・・俺の我儘で。」
「いいってことよ。国ひとつ手に入れた大功績があるんだ。幾らなんでも殺されることはないさ。」


 竜之介の言うとおり、彼らが処罰されることはなかった。そんな事よりももっと大きな火種が細川家には持ち上がっていたのである。
 それは松永久秀が野望を顕にし始めたことだった。細川家・四国勢を実質的に牛耳る彼は、半ば独断で北伊予や東土佐への敷設を始め、行軍路の途中には砦の建設も着々と行っているのだ。
その露骨な行動に細川家の諸将は噂に事欠かなかった。
「久秀殿は徒に河野や長宗我部を刺激しているように見えるが。」
「四国勢は軍事面に関しては、質量共に充実している。二正面での戦となっても勝てると踏んでおられるのだろう。」
「だが、河野はともかく長宗我部は厄介だぞ。それに海を挟んだ備前備中の浦上家にも気をつけねばなるまい。」
「功を焦っておられるのかもしれん。最近ぽっと出の若造ばかりが手柄を上げるのでな。」
「元は野心多き方だ。これまでが大人しすぎたのさ。」
「だが、公算なき拡張にはいつか限界が訪れるぞ。それが分からぬお方でもあるまいに。」


 時を同じくして本城・岸和田城に居座る一門衆筆頭の細川持隆も行動を起こし始めた。伊賀大和へ物見を頻繁に放ち始めたのだ。そして国境では砦の建設に着手していた。明らかに筒井領への侵攻を画策しているのが諸将には見て取れた。
 持隆は形式ばかりの評定を開いて重臣派だけで勝手に筒井家への侵攻を決めてしまった。ちなみに久秀にいたっては、事前に晴元に一通の書状で連絡を寄こしたのみである。


「今度は持隆殿か。一体どうなっているのだ。」
「久秀殿に煽られた・・という訳でもあるまいが。」
「殿に『兵農分離策』を説かれたとも聞くぞ。」
「農民と兵士を切り離すとかいう例の案か。発案は中村殿とも聞くが。」
 一門衆と革新派が積極的な領土拡張策を推し進める中、三好長慶ら重臣派は不気味なほど静観を保っていた。今はまだ動くときではない・・果たしてそう考えているのだろうか。

 そんな各派閥の動きにも一切動じる気配を見せなかった遼太郎や竜之介らだったが、ある報が彼らを震撼させた。なんと、北水館出身者中で稀代のアホと名高い青山春雅が元服し、細川家に召抱えられたというのだ!


「まずいまずいぞ!あーなんてことだ!殿はなぜ彼奴をお抱えになられたのだ!?」
「北水館出身者であればヨシ・・とお考えになられたのではないか。我らが少々目立ちすぎた為にな。自分で言うのも面映いが有能揃い、としてな。」
「誤解もいいところだ。あいつの取り柄はお綺麗な顔ぐらいだぞ。」
「どうもあの端麗な容姿と率直な物言いを気に入られて、傍仕えを許されているとか。」
「政事を引っかきまわさねば良いが・・。」
「いくらなんでも大した功績もない青二才を表舞台でいきなり重用されることもあるまい。せいぜい姫様方が御懐妊されたとかいう類の話を聞かされることのないよう祈るばかりだ。」
「(桜様に手を出したら・・いくらあいつでも承知せんぞ・・・。)」
「ん?何か言ったか?」
「あ、いや・・・・」

 果たして、二人の杞憂は現実となった。名誉の為にも姫の一人が身篭った・・・というわけでないことは先に断っておく。
 春雅が晴元の役に立ちたいとばかりに、波多野家に使者として出向き、両家の誼をより一層深くして見せると息巻いたのだ。そこまで言うならと色眼鏡になっている晴元の許しを得て、意気揚々と丹波・八上城に出向き、波多野稙通との交渉に臨んだ彼は、なんと波多野家の要請を独断で受け入れたのである。


「依頼内容は『室町御所の攻略』だとお!」
「管領が将軍を攻めるなぞ、前代未聞じゃねーか!?」
「あ、いや元々目の上のたんこぶかな~って、思ってたし。」
 八上城からの帰路、意気揚々と石山御坊に立ち寄ったいる立ち寄った春雅は、口をぽかんとさせる遼太郎と竜之介にあっけらかんと言い放ったものである。
 確かに武士に二言はなしとの例えどおり、『一方が困窮した折には、互いに力になる。』という誓約を交わした同盟相手の申し出をあっさりと断るのも難しい。戦国の世でそういった信義を大事にするのは今後の外交を思えば重要なことである。梟雄と評される者らからすれば、鼻で笑い飛ばしそうな話であるが。だが無理難題にあっさりと応じる馬鹿はいない。
 だからこそ、そこを上手く立ち回るのが使者に課せられた責務であり、実力の発揮どころであるはずだが、目の前でかんらかんらと高笑いしている春雅にそれは望みようもなかった。
 ただ一度受けた話を断っては晴元の顔を潰すことにもなる。かくして細川家中に半年以内に山城へ進攻するように命が下ったのだった。


そんな中、紅葉姫の髪結いの儀が執り行われたのだが、残念ながら家中全体が騒然としており、祝いの品もそっけないものばかりだった。見目麗しき彼女は父・晴元から空々しい祝いの言葉を投げかけられて「き~~っ!」と癇癪を起こしてみせたものである。



     
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【2015/10/31 10:09 】 | 信長の野望 | 有り難いご意見(0)
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