「姉貴は旦那と製材所を経営しているんだ。おーい!姉貴~!」
「おっ、いたいた。姉貴~!」
「あれ、レイロフ!無事だったのね。ちょっと心配してたのよ。何でもウルフリックが捕まったなんて噂を聞いたもんだから。」
「ああ、それ本当だぜ。2日前のことさ。」
「マジ!?ちょっとあんた大丈夫なの?」
「ああ・・・何とかな。こっちにいるカイトの手助けもあって、命拾いした。」
「カイト・・・さん?初めまして。レイロフの姉のジャルデュルです。」
「あ、ども。」
「弟の命を救ってくれたそうね。感謝するわ。」
「あ、いや。助けてもらったのはこっちの方っていうか。お互い様なんです。」
「レイロフおじさ~ん!帰ってきてたんだね!」
「よう!元気にしてたか?」
「うん。それよりまた帝国の奴らをギャフンって言わせたんだろ。いっぱい話を聞かせてよ。」
「ああ、後でな。頼みがあるんだが、その帝国の奴らがこっちに近づいてこないか、あっちで見張っててくれないか?」
「ちぇっ。分かったよ。どうせ、俺抜きで大事な話をするんだろ?大人ってズリぃよなあ。」
少年は悪態をつきながらも、レイロフに言われた通り、表通りで周囲の監視を始めてくれた。
ジャルデュルの夫も加わって、4人になったところで、レイロフがヘルゲンでの事を切り出した。
「何ですって!ドラゴン!?とてもじゃないけど、信じられないわ!」

「俺だって目撃者じゃなけりゃ、そう言いたいところだけどさ。しかし事実なんだよ。な、カイト?」
「うん。確かに俺も見た。あれは幻覚とか詐欺の類じゃない。本当に実在してた。大勢の死人も出たし・・。」

「どうやら本当の話のようね。となると、少々まずいわね。」

「まずいって何が?」
「ドラゴンよ!見ての通り、この村にはドラゴンから村を守る城壁も何にもない。ドラゴンが襲ってきたら、ひとたまりもないわ。」
「じゃあ、どうする?」
「・・・そうねぇ。ああ、そうだ!ホワイトランに行って、首長に話が伝われば守護兵を寄越してくれるかもしれないわね。あなた達、伝令をお願いできないかしら?」

「よし、分かった。俺達に任せてくれ。いいだろ、カイト?」
「ああ、もちろん。」

「ありがとう。うれしいわぁ。とりあえず私の家に来て頂戴。好きなだけ滞在してくれて構わないわ。ある物は自由に何でも使って。」
「こっちだ。」
旦那さんに案内されて、俺はジャルデュルの家にやって来た。
しばらくここで英気を養うことにしよう。
お、料理鍋だ。
ただ居候するだけなのも申し訳ないし、なんか料理でも作るかな。
「お、カイト。料理なんてできんのかよ!?」

「ま、上手かどうかは別にして、だけどね。」

「いやあ、大したもんだぜ。」
その日の晩は、俺が作ったキジのローストと野菜スープを皆で食べた。

ヘルゲン砦で帝国軍の食材をパクッてきたんだけど、早速役立って良かった。

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