「カイト、腰を落とせ!気配を殺すんだ!」
「気配を殺すってどうやんの?」
「しっ!黙って、じっとしてろ。」
レイロフが前方の様子を注意深く監視している。
俺も気になって、目を凝らしてみた。
「ク・・・マ?」
「そうだ、熊だよ。ある意味、帝国兵より怖え。」
俺も野生の熊の恐ろしさは散々聞かされている。
巡回中の兵士が襲われて命を落としただの、熊が冬眠に入る前の時期には山に入るなだの。
「あれって・・寝てる?」
「ああ、そうだな。このまま眠っててくれると助かるんだが。なるべく静かに移動しよう。刺激するなよ。」
「言われるまでもないよ。」
そうっと、そうっと・・・。
熊を起こさないよう、俺達は息を殺しながら、静かに脇を通り過ぎた。
「レイロフ!前方が明るいぞ。」
「やったな、カイト。外に出られそうだ。」
どうやらヘルゲンを上手く抜けられたようだ。
さて、外はどうなってるかな?ヘルゲンにまだドラゴンはいるんだろうか?
ウオオオオオン!
俺とレイロフが外に出た時、丁度ドラゴンが頭上をあさっての方角に飛び去っていくところだった。
慌てて岩陰に隠れたが、幸い俺達の存在には気付かれなかったようだ。
「とにかくヘルゲンから一刻も早く離れた方がいい。いずれ帝国軍がウヨウヨと集まってくるだろうからな。」
そう言って、レイロフは走り出した。
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