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【2025/03/16 13:27 】 |
晋陽にて(完)

晋陽が落ちた。迎撃に出ていた沮授隊2千を手玉にとり、部隊を殲滅させられた沮授が城に引き返すのに合わせて自軍の間者を城内に紛れ込ませることに成功した。夜陰に乗じて晋陽城に迫った魯蓮隊が間者によって開けられた城門を潜って城内に乱入。


元より2千しかいない少数の城兵に勝ち目はなく、袁軍はあっさりと降伏した。終わってみれば、董清軍に被害はなくまたもや彼の伝説に1ページが書き加えられることになった。

晋陽入りした董清は早速、部下に市中警邏を命じ、まずは治安の維持に努めた。民の信頼を得て今後の統治をやり易くするための布石である。今回は内政に力を入れるつもりはない。兵糧の補給を待って、薊へ攻め込むつもりである。敵兵は2万に満たない為、長期戦にはならないだろうと思っている。

晋陽では董清が矢継ぎ早に命を出し、市場の建設と兵の調練を再開していた。兵糧が届くまで、まだ幾ばくかの時がかかる。その間にやれるだけの事をやっておくつもりだ。

晋陽では兵の調練が繰り返し行われていた。いずれ行われる薊への進攻は、南皮を攻略中の平原軍と呼吸を合わせることができれば、絶大な効果が期待できるだろう。

董清は輸送部隊の到着まであと1ヶ月と見て、それに合わせて出陣準備を整えるよう諸将に命じた。その後は、それぞれ市場の開発に乗り出す者、兵の調練に精を出す者に分かれ、思い思いに過ごす事になった。折しも薊では闇雲に兵を増やす事に必死になっているようである。治安が急激に悪化しているようだが、構っていられないと言うのが守将たちの意見であろうが、遅かれ早かれ彼らは民の信を失い、自分たちの首を絞めていたことに気付くだろう。

晋陽に王忠隊より伝令が届いた。晋陽の駐屯兵がまるまる戦場で百日以上養える兵糧があとわずかで届きそうである。薊では1万近い兵が移動してきているようだ。合わせると3万程度の数になる。それだけ晋陽を警戒しているということだろう。落日の色濃い袁家にあって必死に足掻く様は、最早不憫とも言えよう。






その後、袁家を滅ぼした梁は、余勢を買って、とうとう孫家との全面対決に臨んだ。
将兵の質量ともに充実している梁に孫家が抗えるはずもなく、ついに主・孫策は屈服し、軍門に下ることを選んだ。中華全土を平定した梁は、この後永きに渡る平安の世を築くのであった。


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【2014/08/08 09:47 】 | 三國志 | 有り難いご意見(0)
神のみぞ知るセカイ






萌えたい、深く考えずに安心して笑える感じが良い・・ということでラブコメを観ようという気になり、
参考にしているサイトで上位ランキングしていた本作を観てみることにしました。
 
いやあ、面白かった。
1期~3期を一気に観ちゃいました。
 
なんか女の子が皆、かわいくて、それぞれのストーリーできゅんきゅん来たな~。
ゲーム内のヒロインに倒錯し、現実の女の子を見下していた主人公にもちょっとずつ変化が現れていたし。
 
攻略した女の子の記憶は消えていて、修羅場を迎えることなく、次に移れていたのに、
3期の女神編からは記憶が戻った女の子達を再攻略する様子が盛り込まれ、ワンパターンでなくなったのがさらに良かった。


基本的にはそれぞれの女の子の萌え部分が大きく貢献している感じで、
次に随所に散りばめられるギャグpartが支えている感じでした。
 
ストーリーも特にラストのちひろと歩美の同時攻略時には、ドキドキしたり身につまされたりしましたね~。
「おいおい、それはあかんやろ~」と突っ込みもしましたし。
 
ちなみに自分の中では一番面白かったのは栞で、一番萌えたのはかのんで、一番好きだったのはちひろだったりします。
もし現実女とくっつくならちひろで頼む~!
 
OPは1期がすごい良かった。
全編英語なんだけど、メロディがなんか琴線に響いてきました。
実は10分近い曲でON AIRでは一部が使われているのみということを知って驚いたけれども。
 
挿入されたかのんの歌や一部のエンディングもなかなか良い感じでした。
 
OP2期はちょっとがっかり。3期はまーまー、な感じ。



評価A
 
【2014/07/27 02:18 】 | アニメ | 有り難いご意見(0)
自軍の兵を損ねない将

「斥候からの報告によると、ちょうど山の反対側で敵部隊が進軍中とのこと。その数およそ一万。旗印から袁家の二枚看板の一人顔良の手勢と思われます。」
「我らの動きを察知されたか?」
「現段階では不明。しかし用心は必要です。」
「進軍止めい!この地で編成を整える。各部隊は速やかに輜重隊との合流を図るように。」


「やれやれ、やっと追いつきましたよ。」
「馬鹿野郎!てめえがなかなか来ねえから、待ってやってたんだろうが!ほれ、さっさと次行け!次!」
「へいへい。」

 
「やはり敵の諜報の網にかかったと判断した方が宜しいでしょう。」
「ああ、顔良はこちらの位置を把握していると想定した上で、行動するとしよう。」
「顔良部隊の進軍速度から逆算すると、遭遇地点はここらへんになるかと。」
「よし、そこで罠にかけるとしよう。」

  董清軍にとっては十八番の戦法も、新参の馬超や榛春にとっては、初めて目の当たりにすることになる。董清の采配を間近で見られる時が近付いていることを知り、胸が高鳴るのが自分でもよく分かった。

 
戦場を見定めた董清は諸将の布陣を確かめていく。
「鬼龍隊は右翼、林玲隊は左翼に回れ。大和隊と魯蓮隊は後背に位置し、火矢攻撃と連携して投石を始めよ。俺は正面に位置し、、皆の攻撃の補佐に回る。」
「若!顔良隊の攻撃を正面から受けて立つおつもりで?」
「案ずるな、そんなつもりはない。顔良は勇猛だが、深く考えることのできない馬鹿だ。猪突猛進な奴はきっと俺を見て、真っ直ぐに突っ込んでくるだろう。格好の的だ、外すなよ。その後は奴を撹乱するなり、止めを刺すなり、好きにするさ。我が隊に迫れども、奴の手は俺には届かん。」

 
顔良の真正面に、河北においても名高い董清の旗印が見えた。
「ほう、大将自ら前線に出張るとは、胆の据わった者か、余程の馬鹿と見える。いずれにせよ、この俺が引導を下してやるから、大した差はないがな。」
全軍に突撃の命を下した。自ら調練を施した兵たちが、驀進を始めた。野獣のように、手柄を立てんとして敵に襲い掛からんとしている。ふと、左右にも敵部隊が展開しているのが見えた。だが、それがどうしたというのだ。董清のこれまでの戦いぶりは熟知している。包囲される前に董清の喉元に自分の刃が届く・・・その自信が彼にはあった。もう董清隊は目前だ。
「自らの兵を損ねない将だ?ああん!?この俺が部下どころか、てめえ自身を終わらせてやるぜ!」


董清の顔が肉眼で判別できる・・・そんな距離にまで肉薄したところで、突如視界が暗転した。顔良隊の先鋒が突如口を開いた大穴に嵌って、吸い込まれるようにして消えたのである。穴の深さは落ちた人間が一瞬昏倒するほどで、大した殺傷能力こそないが顔良隊の動きを封じるには十分だった。次々と前線が立ち往生するも、そんな惨状を知らぬ後方は勢いを止めることなく尚も進んだため、味方に押されて穴に突き落とされる者、転倒したところを味方に踏み潰される者が続出した。壊乱状態になったところへ、火矢と岩石が雨霰と降り注ぎ、1万1千もの大部隊だった顔良隊は7割強を一瞬の間に失う羽目になったのである。しかも顔良はまだ兵の混乱を収束できず、火に巻かれて散々な有様だった。そこへ董清軍の容赦のない第二撃が食らわされようとしている。

 
統制の取れなくなっている顔良隊に、董清軍の第ニ射が飛来し、第一射の攻撃を辛うじて生きながらえた者達に、早いか遅いかでしかなかったことを知らしめた。遭遇してから半刻ばかりの出来事であり、ケガを負った顔良はわずかな供回りの者に支えられながら、晋陽城へと逃げ帰った。
董清は、鬨の声を上げる兵たちを静め、すぐさま進軍を再開させた。晋陽の南に兵舎やら軍事施設がいくつか建設されており、早急に破壊しておきたかったのだ。幸い、鄴からの味方の支援のおかげで、壺関の攻略に費やすはずだった時間は短縮できそうである。

 
顔良が一旦退いた。その隙に一気に軍を進めるべく、董清は各隊に号令を出した。だが晋陽でもそれは想定内の行動であったのだろう。城に帰参した顔良にすぐさま8千の騎兵を与えて、再出陣させたのである。今度は顔良が最も扱いを得意とする騎兵隊ということもあって、顔良は一度は失いかけた自信を取り戻す事ができた。だが、総勢5万近い董清軍に単騎で挑もうなどというのは到底視野が狭い証拠である。またもや返り討ちに遭うのが関の山であるのに、彼にはそれが理解できていないらしい。

 
「何だ?何が起こっている!?」
顔良は喚いていた。無理もない。突然、旗下の兵たちが混乱の極みに突き落とされ、火矢を射掛けられたかと思うと、自慢の騎兵部隊が瞬く間に半数近く討ち取られてしまったのだ。しかも遠くからは轟音と共に何かが破壊される音が聞こえてくる。あの方角には晋陽で軍事拠点を構えている平野がある。もしかすると兵舎や鍛冶場が狙われたのかもしれない。
「うぬぬぬ。どこまでも小癪な!」
彼の地が落とされると、晋陽で再軍備を整えるのははるかに難しくなる。しかし今、自分には指を咥えて見ている以外に手立てはなかった。いや、そんな悠長なことをしていられる状況ではない。自身の部隊、いや自身の命すら危険に晒されているのだ。今更ながらに董清の末恐ろしさが身に染みてきた。

 
「若!晋陽より援軍が向かっているとのこと!」
「将は誰だ?」
「沮授です!」
「ならばヨシ。全軍、沮授隊は意に介さずとも良い。前面に展開する顔良隊を血祭りに上げろ!殊更、我らが武威を示すようにだ。大和隊は敵兵舎を叩き潰せ!」
「御意!」
董清の下知を聞いて、まずは顔良隊の殲滅が始まった。顔良隊にとっては、もっとも恐ろしい瞬間であったろう。本気になった董清軍の攻撃を垣間見たのである。それは沮授隊への示威行為を兼ねていたわけだが、最早少数となった部隊が全滅に追い込まれる様は、まさに悪魔に魅入られたかのようであった。顔良はまたもや晋陽へ命からがら逃げ帰る羽目になった。
事も無げに顔良隊を全滅させた後は、董清軍は左右に展開して、沮授隊を待ち受ける陣形を取った。果たして沮授はどう対応するであろうか?余程肝の据わった者でもない限り、先刻までの地獄絵図を見せ付けられた後に、戦場のど真ん中に躍り出ることが出来る者はいないであろう。董清の読みでは、頭ばかり優れた大して武勇もない青瓢箪ともなれば、顔良が逃げ帰った今、晋陽に引き上げるのが関の山なのだが。

 
董清軍は進軍を再開した。全軍が晋陽に向けて、足並みを揃えて前進する。ちょうどここから狭い一本道に差し掛かるというところで、董清は全軍に一旦停止を命じた。守る側からすれば、この地を利用するのが一番である。攻め手はどうしても一隊ずつにならざるを得ず、兵数の少なさをカバーできるからだ。逆に言うと、ここは絶対防衛地点とも言え、自ずと選択肢が狭まってくる。すなわち打てる手の中から最善の手を選ぶのが参謀という人種であれば、沮授は間違いなくここで迎撃の為の兵を出してくるはずであり、それが彼の智謀の限界でもあるはずだった。董清はそれを逆手に取ればいいはずである。

 
思惑どおりに出撃してきた沮授隊を一瞬で葬り去り、董清軍は晋陽まで後僅かという距離まで接近した。彼らと晋陽を隔てているのは、沮授隊を殲滅する時にできた残り火のみである。今回はそのおかげで晋陽からの迎撃から身を守る盾にもなっていた。晋陽に駐屯する兵は僅かに4千。攻略完了まで秒読み段階にとうとう入った。

【2014/07/26 00:09 】 | 三國志 | 有り難いご意見(0)
緋弾のアリア

遠山の金さん、ホームズ、ルパン、ジャンヌダルク、卑弥呼。
「いきなりビッグネームが出てきやがって!」とどこぞのゲーム同様に叫びたくなるほど、聞いたことのある名前が出てくるわ出てくるわ。
 
主人公が金さんで、ヒロインがホームズ4世でって段階で、「あ、このアニメって、萌えとノリで乗り切ろうとしてる?・・と思ってしまったほど。
ただ終始、萌え萌えな女の子に格好良く戦わせていく流れなんで、当たらずも遠からずでしたが。
 
12話は短い。
原作は17巻とか凄い出てるのに、3巻ぐらいまでをぎゅぎゅっと凝縮して放送した感じ。
2クール分ぐらい放映して、本腰入れたら良いのにと思った。
話が急展開過ぎて、おそらく原作を思いっきり端折ったんじゃねーか感が否めなかったです。
だからとにかくストーリーというより、ツンデレと萌えとバトルを楽しんだアニメでした。
 
クライマックスに使われているBGMはテンション上がったな~。
 
特に8話の対ジャンヌダルク20世(若くして火あぶりにされて死んだのは影武者だそうだ。本物はちゃんと子孫を作ってた!)戦では、火を操る剣の使い手卑弥呼と、金さん、ホームズが共闘するけど、バトルが格好良く、しかもどストライクなBGMなんで繰り返し観ちゃいました。
あのシーンだけで何回再生しただろ?
そう言えば『ノーゲームノーライフ』の4話の演説シーンでも同じことしてたわ・・。
『るろ剣』の斉藤と志々雄の決戦でも同様のことを・・「油断?何のことかな?これは余裕というもんだ。」・・くーっ!シビれる!
 
OPは可もなく、不可もなくぐらいです。emoji
 
ちょいツンという感じのヒロインを始めとして、主人公ラブだったり、思わせぶりな態度を取る女の子達により、
ありがちなハーレム構成が知らず出来上がっている展開です。
 
 
評価 B
【2014/07/09 00:58 】 | アニメ | 有り難いご意見(0)
奇妙な北伐行
徴兵、訓練、巡察・・延々とそれが繰り返される。いずれの政策にも選りすぐりの将が当てられ、常に最高水準を維持できるよう工夫されていた。長安の政策はすでに内政重視から軍事重視へと一変している。
「内政?んなもん、出陣後に留守番がやっておけ。」
口にこそ出さないが、董清の顔にはそうはっきりと書いてある。さすがに露骨過ぎると民の反感を買うだろうと、福貴が市場開発を買って出た。
「現在の兵糧が18万。兵数4万で400日は保てるか。まだまだ雇用できるな。やはり5万は揃えるかな。」



 
董清、馬超、曹丕が義兄弟の契りを結んだ。いずれも若と呼ばれた者達だが、1つの王朝、軍隊を率いることも可能な資質に恵まれた者達である。馬超は先の西涼攻略戦で董清の戦いを目の当たりにし、曹丕は偉大なるあの父親を苦しめた(果ては滅亡に追い込んだ)者の一人として董清を最初は憎み、今では崇敬の念を抱いていた。それがふとしたキッカケで直接言葉を交わす機会を得、酒を飲み交わす中で、意気投合し、あれよあれよと言う間に契りを交わすことになったのである。

長安では引き続き、徴兵、訓練、巡察、兵装生産が行われ、その合間を縫って、市場や農場の開発が少しずつ進んでいっている。本格的な復興はどうしても董清が戦団を率いて出発した後になるだろう。

「良かろう。採用だ。」
 しばしの沈黙の後、董清は榛春に各将軍に伝えるよう指示を下した。意見が通った事に気を良くした彼女は軽やかな足取りで退出した。榛春・・・かの者は梁王の幕下にいた時分より新しく柔軟な発想をすることで評価を得ていたようだ。技術開発にも幾度か携わったと聞いている。梁王は彼女を育てよ、と董清の元に送ったのではないらしい。思わぬ贈り物を頂いたと素直に喜ぶとしよう。


長安の兵士数が4万を越えた。董将軍が北伐に参加するとの噂は、鬼龍や大和の情報操作も手伝って、早馬よりも速く周辺に伝わり、勝ち馬に乗ろうと野心ある若者や豪族、名士らが続々と参陣を願い出てきている。百戦百勝の彼の名将ぶりは、劉陵に勝るとも劣らず人気を博すようになっていた。董清率いる部隊は末端の軍属に至るまで英雄になれるという荒唐無稽な話まで飛び交っている。すべては主のために大和たちがあることないこと吹き込んでいる結果であった。一度兵として取り込んでしまえば、どんなゴロツキであろうと、精鋭に鍛え上げるだけの時間と労力はある。とにかく頭数を少しでも増やしたかった。
一部始終を知った董清が吐いた言葉が「勝手にしろ」である。まったく、兵士一人ひとりの夢想にまで責任は持てない。
 
 
解県港目指して4万7千の兵を率いて、王忠が進発した。本人は部隊長に選ばれたことで興奮しているが、人選に特に意味はなかった。単に「暇そうな奴」の中から、適当に董清が選んだだけである。とは言え、本人の意気込みは凄いものである。言わぬが花・・ということもあろう。
榛春の献策を入れて、まずは輸送隊を送った以上、長安に残った諸将は当面軍備増強から解放されることになった。しばらくは内政に専念することになり、穀倉の建設やら農場の集約やらに励む者も現れた。
 

孫家の怪しげな動きは確かに気がかりなところだ。
だが周信が必要な手を打っていることで、董清は長安の内政に邁進することにした。西部平野の商業都市は最後に造幣局を建設すれば完成する見込みだ。北部沿岸地帯の農業地帯の開発も順調である。ここで大穀倉地帯が出来上がれば、中原での大輸送基地の要になるだろう。
北伐を本格的に開始する前に是非とも進めておきたいところだ。


「槍兵の次は戟兵ですか。」
「そうよ。旋風の如く、密集地帯に入り込んで、周囲の敵部隊に打撃を加える事を得意とする戟隊だけど、それだけ集中攻撃を受ける可能性が高いわ。だから防御力を向上する手立てを考えて欲しいの。」
技術開発を続けるうち、黄権、賈逵、張春華を始めとした新野研究施設の面々は文武のあらゆる部門に深く鋭い知識を得るに至っている。きっと他勢力にしてみれば喉から手が出るほど欲しい人材であろう。だがそんな彼らに「無理難題だ!」と絶叫を上げさせるほどの要求を押し付けてくるのが蘭宝玉である。今日もまた青い顔をして蘭宝玉の部屋から出てきた黄権の顔を見て、末端研究員たちはこれから数ヶ月に及ぶ地獄を容易に想像できてしまうのであった。

 
 解県港の要所を無事制圧したとの報が王忠より齎された。董清は、休むことなく夏陽港の制圧に乗り出すよう、指示を与えた。まもなく長安の復興も間近である。多くの余剰人員が出ることが想定されるので、鄴もしくは今後平定予定の平原に移動して力を尽くせと命じてあった。

 
王忠が夏陽港の制圧に向かった。彼が見事制圧を完了すれば、いよいよ董清以下北伐に参加する将軍が長安を出立する事になる。長安では引き続いて徴兵及び調練を繰り返し、都を守護する最低限の兵は集めてある。あとは留守の将軍を信頼して、北伐に専念すれば良かった。
 
「これより出発する。後は任せた。」
董清、鬼龍ら主だった将が夏陽港へと旅立った。柔軟な発想力を見込まれて榛春も同行を許されている。また長安の復興に目処が付いてきたことで馬騰以下馬家の者達には、最前線にて働き場を求めるよう指示されている。とりあえず北伐の足がかりとなっている鄴に身を移す事になりそうだ。義弟の結婚に董清も馬超も祝辞を送ったが、如何せん軍旅の最中に知ったことである。いずれ正式に祝いの言葉を告げることになるだろう。


鬼龍隊と董清隊により西河港はあっさりと落ちた。密偵によれば、ここから晋陽まで地元の住民しか知らない山中を抜ける桟道があるらしい。梁軍は優れた踏破能力を兼ね備えているので、部隊の進軍には何ら差し支えないだろう。西からの災厄の到来に気付いているのかどうか、晋陽では兵の移動を行っているようである。

西河港に入った董清はすぐさま接収した営舎にて軍議を開いた。
今回の部隊構成も弩兵と投石機を中心として織り成す事を決め、隊の諸将の振分けも決定した。
一旦、この地で兵たちの鋭気を十分に養い、来週より長い遠征に乗り出すことになる。董清は新たな伝説を作るのか、ここが鬼門の地となるのか、それはまだ誰も分からない。

長安に残った宇文通らは徴兵と鍛錬を繰り返し、1万の精鋭を擁するほどになっていた。今行っている農地開発が順調に進めば、復興完了まであと僅かというところである。董清は進軍準備の最終調整を終え、いよいよ晋陽攻略に乗り出すときが近付いてきた。将兵ともに気力十分で、戦意は漲っている。長躯する間にそれを挫かぬよう、最大限配慮する必要があるだろう。今回の戦いの敵は晋陽兵だけではないのだ。

 
夏陽港から西河港への移動が遅れている。長江の河が氾濫し、容易に船で渡れなくなった為だが董清ら先に渡った者からしてみれば歯痒いことこの上なかった。出立の時が遅れたが、その分兵士達には十分なほどの休養を与える事ができた。ただ徒に時を費やしては望郷の念に駆られる者も少なからず出てこよう。懸念は尽きる事がない。
長安では最後の穀倉の建設に着手し、内政計画が最終段階に入った。そろそろ太守を決めて、その者に統治を委託する段階に来ていると言えよう。もともと潜在能力の高い都市である。どれほどの資金と兵糧を算出してくれるか計り知れない。

 
 董清を総大将した晋陽攻略軍が西河港を進発した・・・はずなのだが、あまりにも港は静寂を保っていた。大軍が動いた形跡がなく、港に侵入していた袁家の密偵も戸惑うばかりだった。
将のみで率いる兵が全くおらず、総勢でも10名に満たない軍隊であるとは夢にも思うまい。

 
董清達の物見遊山の如き進軍が続く。
「あなた、川だわ。」
「岸辺を歩くと危ないよ。足元に注意して歩くんだ。」
仲睦まじく、手を取り合って歩く新婚がまさか西涼の雄・錦馬超夫婦だと分かる者はまずいまい。彼らの周囲を歩く家人3人が天下に雷名を轟かしている五虎将軍だと判別できれば奇跡と言えるだろう。夫妻の後に付き従う侍女達が陽平関をたった一人で封鎖したかの林玲将軍や榛春将軍だとは・・(以下、略)

 
満を持して王忠隊が港を進発した。とは言っても大規模キャラバンとその護衛隊といった風情である。この程度の小細工で誤魔化せるとは到底思わないが、何かの撹乱にはなるかもしれない。「駄目もとでやってみましょー!」とは誰の発言かはあえて言わないでおこう。趙雄が懸念するとおり、本隊との連携が鍵になってくる。いずれ敵の迎撃があるだろうから、戦場になるポイントを正確に読みきる必要があった。

 
王忠「やべえやべえやべえ!」
輜重隊(その実、本隊)を率いる王忠は内心の焦りを隠しきれず、各部隊長に行軍速度を速めるよう指示を飛ばしていた。こんな大軍を扱ったことも初めてだが、輸送相手の董清達の足が恐ろしく速いというのが何よりの計算外だった。一体どんな調練を重ねれば、脱落者を一切出さずあれだけの速度で進めるというのか。とにかく董清から受けた命は唯一つ。「晋陽に着く前に追いつけ!」という至極単純なものだった。だがそれが如何に難題だったかは今頃になって気づかされた。

ひゃー!

 
「待ってくだせえ~。」
報によれば先鋒の鬼龍隊はすでに湿地帯を抜けて山間部へと差しかかったそうだ。まだ湿地帯の半ばにいる王忠隊にしてみれば、全く追いつける気がしない。だがさすがに将一人だけで関所や城に戦いをを挑みはするまい。とにかく脱落者を一切出さず、かつ迅速に行軍を続けるしかなかった。


【2014/07/08 23:48 】 | 三國志 | 有り難いご意見(0)
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