「ここはカルセルモ先生の研究所だ。入室許可は取ってあるか?」
「もちろんだ。」
いくらドワーフ研究の第一人者と言えども、所詮は人の子。
カルセルモ一世一代の恋愛をサポートした拙僧に頭が上がるはずもない。
四の五の言わず、研究室に入ることを許可させた。
「ん?なんじゃ、こりゃ?」
研究室内で見つけたバルブを回す度に、あちらこちらから悲鳴が聞こえた。
・・・なんかヤバイことしたかな?
ともあれ、誰の妨害を受けることなく、研究室の奥までやってくることができた。
途中、バルコニーに出たが、見晴らしが実に良かった。
マルカルスを一望できて、実にすがすがしいのだ。

(高所恐怖症の方にはお勧めできないが。)
「おお、これが解読に必要な手がかりか。」
カルセルモから先代の日記に書かれているのは、ファルメル語だと教えられた。
その解読に必要な石版が研究室の奥に置いてあるというから、ここまで来たのだ。
「この大きさじゃ、持って帰るのは不可能だな。」
あたりを見回した拙僧は、木炭と紙ロールが散乱しているのに気が付いた。
これを利用すれば・・・・。

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よし、拓本の出来上がり!
拓本を持ち帰った拙僧をエンシルとカーリアが温かく迎えてくれた。

「よし、これで翻訳ができますぞ!」
さっそくエンシルは日記の翻訳を始めた。
「どうやらあ奴・・・殺害される随分前から、メルセルの忠誠に疑念を抱いていたようですな。」
日記には、メルセルによる様々な悪行が綴られているらしい。
その中にはカーリアを驚愕させるものもあった。
「ノクターナルの墓所荒らしですって!?」
ノクターナルと言えば、夜と闇を司るデイドラの王だ。別名は『夜の女王』だったか。
「それが、どうかしたのか?」
「どうもこうもないわよ。ノクターナルは我々盗賊の守り神よ。ギルド没落の最たる理由はこれだわ!」
ここ数年のギルドの不運続きは、どうやら神様の加護を受けられなくなったことにあるらしい。
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