ううっ・・・
「気がついたようね。」
「私はカーリア。あなた達、盗賊ギルドが探し回っている相手よ。」
「・・・。」
「どうする?捕まえる?命の恩人を?」
「どうだかな。拙僧を毒矢で射たのはお前だろう?」
「あなたはその毒のおかげで命拾いしたのよ。意識を失ったあなたを見て、メルセルは事切れたと勘違いして止めを刺さずに去ったのだもの。」
「毒がなければ、みすみす刺されることもなかったさ。」
「私だって、迷惑を被ったんだからね。長年練り続けてやっと実行に移した計画を、あなたのおかげでおじゃんにされたんだから。」
いろいろと口論はしたが、カーリアは深手を負った拙僧の介抱を続けてくれた。
根はいい奴なのだろう。
とてもギルドの幹部連中が言うような極悪人には見えない。
不審そうに見つめる拙僧を察して、カーリアはすべてを話してくれた。
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カーリアとメルセルと先代はかって固い絆で結ばれた同志だったこと。
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メルセルが突然先代を殺害し、罪をカーリアになすりつけたこと。
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新しいギルドマスターになったメルセルの命でカーリアはギルド全員に追われる身となったこと。
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カーリアは潜伏先を転々としつつ、身の潔白の証明と復讐を果たすために、メルセル捕縛計画を練っていたこと。
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計画が功を奏し、メルセルをこの遺跡に誘き出すところまでは上手く行ったが、誤って拙僧を射てしまい、メルセルを捕らえ損ねたこと。
「で、拙僧に何をして欲しいんだ?まさか慈善事業でもあるまい。」
「実は協力者を必要としていたの。」
そう言って、カーリアは古い日記を見せてくれた。
「これは?」
「先代の日記よ。見ての通り、解読不能の文字で書かれてて、何のことかさっぱり。用心深い人だったから、こんなことをしたんだろうけど・・。」
「この日記にメルセルの罪を暴き立てる何かが書かれてると思うのか?」
「・・・という訳だ。エンシル。」
「校長先生の頼みとあっては断れませんなあ。それに先代のギルドマスターとは実は親友でしてな。」
「ウインターホールド大学と盗賊ギルドに繋がりがあったとは思いもしなかったな。」
「個人的つきあいですよ。私の研究室に以前、あ奴が忍び込んだことがありましてな。」
「昔話はまた今度ゆっくり聞かせてくれ。で、これを読めるか?」
「・・・残念ながら、私には無理です。ただ、これを読むことが出来る者を知っています。」
「それは?」
「マルカルスに住むカルセルモという男です。」
「ああ、あのじーちゃんか。」
「彼をご存知で?」
「ああ、先日ちょいとした手助けをな。」
「それなら話が早い。頑固で研究の邪魔をされることを何より嫌う人ですが、校長の頼みなら聞いてくれるでしょう。」
「・・・という訳だ。カルセルモ。まさか恋のキューピッドの頼みを無下にはせんよなあ?」
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