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【2024/04/27 12:36 】 |
n041 信長元服 (細川家)7
洛中の復興が進む中、六角家の嫡男義賢と桜姫との婚儀の話が持ち上がった。提案したのは重臣筆頭・三好長慶である。長慶は遼太郎の意を全く介することなく、婚儀の有用性を家臣一堂に説き、主君晴元に決断を迫った。晴元は一旦評定を中断させ、後日決断を下すことを皆に約した。

「一体どーしたいんだよ、遼。」
「したいって何が?」
「親友の俺にまですっとぼけてんじゃねーよ。桜様の縁談のことに決まってんじゃねーか。終いには殴るぞ。」
「・・ててて。殴ってから言うなよ。どうしたいもこうしたいも桜姫が幸せになるならそれが一番さ。」
「顔も見たことのない男の元へ嫁いでいくのが果たして幸せだと思うか。」
「一介の侍に嫁ぐよりかは何ぼかマシな生活が送れるさ。」
 室町御所に用意された城代の部屋で、遼太郎は数多の部下からの報告書に目を通していた。
いつもの飄々とした掴みどころのない笑顔を浮かべながら、遼太郎はてきぱきと政務をこなしていく。
「・・まったく。心中はどうあれ、お前の手と頭はよく動くのな。呆れを通り越して感心するぜ。」
 竜之介が嘆息しながら、どかっと遼太郎の脇に腰を下ろす。
「なあ、遼。お前の桜様へのその程度のものだったのかよ。長慶の野郎の薄汚い策略で、ほいほいと他の男に奪われるのを黙って見ていられるのか。」
「・・・俺だって悔しいさ。諦められるわけないだろっ。ずっとお慕い申し上げてたんだぞ。」
「ふーん。だったら、なんでこんな所で大人しくしてんだよ。さっさと桜様に気持ちを伝えてこいよ。」
「そんなの無理だって。殿が手塩にかけて育てられたお方だぞ。俺みたいなもんが何を言ったって、無駄なんだよ。」
「言ってみなけりゃ分からねーだろーがっ!」
 怒りの闘気を放ちながら、音もなく立ち上がった竜之介の渾身の蹴りが、遼太郎の背中に叩き込まれる。
ぐへえ!と痛すぎて声も出せないほどの悲鳴を上げながら、遼太郎は涙目で竜之介を睨んだ。
「煮え切らねえこと、言ってんじゃねーよ。背中押して欲しいんなら、いくらでも押してやるさ。それが親友の役目ってもんだからな!」
「分かった!やめろ。お前のそれは『押す』なんて水準じゃねーだろ。・・全く、俺じゃなかったら一週間は寝込むぜ。」
「お前以外にはやんねーよ。さ、もう一発気合入れてやろーか?」
「いや、もういい。」
 遼太郎は手で竜之介を制しながら、すくっと立ち上がった。そしてすたすたと奥御殿へと歩いていった。
「ばーか。最初からそうすりゃいいんだよ。」

 桜は縁談の話を姥から聞かされてから、不安で胸が張り裂けそうだった。
父上は一体、どのような結論を出すのだろう。私は六角家へと嫁ぐことになるのだろうか。
遼太郎様のあの笑顔はもう見られないのだろうか。・・・知らず、桜の目から涙がこぼれていた。
土台無理な話とは分かっていても、できればいつまでも嫁ぐことなく当家に留まり、遼太郎と与太話に興じていたかった。
彼との時間がどれだけかけがえのないものだったか、今わの際にあって桜は悟った。
(私は心底、あの方に恋をしていたのだ。)
 その時、表の方から喧騒が聞こえてきた。
「お待ちくださいませ!中村殿。こちらより先は奥の間ですぞ。お立場を弁えなさりませ!」
「ええい、どけい。どかぬか。火急の時なのだ。後生だからどいてくれ!」

 遼太郎の声が聞こえた途端、桜は思わず部屋を飛び出していた。
 そして庭の真ん中で侍女達に群がられている遼太郎の姿が目に飛び込んできた。
「遼太郎・・様。」
「姫!」
 桜は履物も履かずに、庭へ飛び出し、遼太郎の胸へと飛びこんだ。
遼太郎は思わぬ出来事に目を白黒させている。こういう時、想像以上の行動力を発揮するのは実は女人の方かもしれない。

 一部始終を見ていた姥から報告を受けた凪は、遼太郎を咎めるどころかうれし涙を流したという。そして夫晴元へ事の次第を説明し、桜の幸せを第一に考えてやって欲しいと懇願した。それは六角家への輿入れを意味してはいない。
 晴元は熟考の結果、この一件に関して、家臣団に不満を言わせぬ為、持隆、長慶、久秀の三人に自身の保有する国宝級の家宝を惜しげなもなく分け与えることにした。いわば物欲を刺激して心を買おうという下衆なやり方ではあったが、この三人には最も効果的な方法でもあった。
 おそらく長慶も実は最初からこれが狙いだったのだろう。喉から手が出るほど欲しかったはずの茶碗をいかにも素っ気無く受け取ると、あれほどの論陣を披露していたにも関わらず、黙って引き下がり以降は何も言わなくなった。


 こうしていろいろと裏工作はあったものの、家臣一堂の賛同を受けて、目出度く遼太郎と桜が縁組することが決まった。
 婚儀は盛大だった。義孝や竜之介の余興に人々は笑い、晴雅の唄に女官たちはうっとりと聞きほれた。そして遼太郎と桜がにっこりと微笑みあう姿を見て、晴元は二人を結びつけた決断に間違いはなかったことを確信したのだった。


 年が改まると、室町御所の修復を終えた細川家は前年から遺恨のあった筒井領へと進攻した。竜之介は室町御所から出兵するとともに、石山御所にも援軍の派遣を要請し、伊賀大和の国境で合流することを定めた。途中、筒井家からの停戦交渉はあったものの、それを無視して軍を進めると、筒井家はあっさりと白旗を上げて見せたのだった。


 難なく伊賀大和の地を手に入れた竜之介は褒美に『大和守護』の役職を授けられると共に、八千の兵を率いることを許された。数々の武勲を上げてきた竜之介に対し、妥当な行賞であると言えよう。
 

 その頃、室町御所には不穏な空気が漂っていた。隣国斎藤家と六角家が示し合わせたかのように、大軍団を室町御所へ差し向けたの報が入ったのである。筒井家進攻により洛中の警備が手薄になった一瞬を狙ったものであった。御所の留守を預かる杉隆滋は敵到来の報を方々に送ると共に、洛中の周辺に砦をいくつも築き、時間稼ぎを図った。
 一方筒井城で修復作業に当たっていた竜之介は、洛中危機の報に接し、旧知の間柄である服部保長の元を訪れていた。
「久しいな、保長殿。」
「竜之介殿もしばらく会わぬ間に大した出世振りで。」
「いやいや。早速だが此度ここに参ったのはそなたの力を借りたくてな。」
「察しはついております。私欲に目が眩んだ斎藤と六角両家の軍勢の後背を我らがかき回せば宜しゅうございますな。」
「話が早くて助かる。この恩には必ず報いる故。」
 

 先の洛中攻防戦を上回るほどの大規模な戦が展開された。杉が建設した砦が破壊され、一時は御所の警備を空にしなければならないほどの激戦が繰り広げられたが、服部保長の伊賀忍者が斎藤勢と六角勢を撹乱し、石山御坊の援軍が到来すると次第に細川勢の優位は確たるものになっていった。杉はここぞとばかりに斎藤勢に追撃を行い、その大部分を壊滅させたところで、意気揚々と御所への凱旋を果たしたものである。此度の戦乱の結果、斎藤家と六角家はその兵力をかなり減らすこととなり、細川家の名声はますます高まることになった。


 細川家にはかねてから領内への南蛮宣教師による布教活動に寛容であった為、南蛮寺(教会とうらしい)の建設が至る所で行われ、領民の中にはキリスト教で洗礼を受ける者も現れ始めた。晴元は文化の多様性が広がることをむしろ喜んだという。
 
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【2015/11/02 02:08 】 | 信長の野望 | 有り難いご意見(0)
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