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【2024/04/26 04:10 】 |
林玲の大功績

 福貴と大和率いる井蘭隊の攻撃も随分と堂に入るようになったようだ。たった百人が篭る関所を進軍ついでに難なく陥落させ、次の関へと向かっている。一隊だけで突っ走りかねないその猛進ぶりに慌てて鬼龍と董清も梓潼を進発した。頼りになりすぎる妻もある意味、困ったものか。董清はこれから延々と悩みぬくことになる命題にぶつかったのである。

 
 馬騰軍にも端々にまで気遣いのできる参謀が控えているようである。さすがに騎馬隊を駆る猛者ばかりで巨大な領地を擁するようになった訳ではないようだ。遠征地にて陽平関での調略失敗の報告を聞いて、董清はそう結論付けた。漢中に残り陽平関の封鎖を続けている林玲からも、敵将の意気が上がっているようだとの報告を受けている。天水での兵力増強も加速度的に進んでいると間者からの報告も受けている。いち早く益州を平定し、兵を漢中に帰した方が良さそうだ。


 天水の兵力は強大だが、馬騰軍が陽平関からの攻撃に固執している間は心配ない。犠牲を覚悟の上で桟道ルートを選択してきた時が厄介である。しかし上庸と梓潼の兵力を徐々にでも増強することと、益州平定を急げば何とか成るだろうと董清は見ていた。梓潼の開発も佳境に入りつつある。それよりも孫策軍の増強ぶりが気になっていた。今でこそ同盟相手だが、その関係が崩れた時、今のままでは太刀打ちできないだろう。


 董清は成都へ進攻する全軍に関に入るように命を下した。成都に篭る敵軍がほぼ同数である為、兵に一時の休息を与えて鋭気を養わせると同時に、成都の凡将が焦燥に駆られる余り、城で戦う優位性を放棄して迎撃に出てくることを期待してのものである。攻城に秀でた井蘭隊を擁しているとは言え、なるべく城に篭る兵は減らしておきたいところだった。


「ちっ。猪口才な真似しやがって。」甘寧隊の兵が劉表によって撹乱されている。裏で暗殺を企てたり、二強の激突にも日和見を決め込んだり、決して土俵に上がろうとしない元主君が珍しく戦場に出張ってきたと思っていたら、策を弄して侵攻軍の足止めを図ってきたのだった。遠い宛の地ではまたしても曹操軍から来襲があるようだ。嫌がらせの種は双方ともに尽きようとしない。


『現在、漢中軍を中心として兵器の使用が進んでいますが、この度の宛への衝車及び井蘭の輸送を皮切りに、荊北同盟全軍に兵器を行き渡らせたいと考えています。投石機や木獣といった新兵器の開発の優先度を上げて頂ければ幸甚です。』
蘭宝玉は淑瑛宛の返書を認めた。正直あれもこれもと進めたい技術の構想が山ほどある。許昌にいる漢帝を上手く保護できれば、漢朝の権威を借りて革新を早める事ができるだろう。


 鬼龍と董清は成都城と迎撃部隊双方に向けて、矢を乱射した。忽ち迎撃部隊は壊滅、城兵も半減した。
「おのれ!」福貴のいる井蘭隊を狙い撃ちされたことで、董清は純粋に怒っていた。井蘭隊の被害は1000人以上。上庸で旗揚げしてから最大の数である。無論、被害なく戦いなどできようはずもないが、それでも怒りは沸いた。「徹底的に火攻めせよ。」成都への容赦ない攻撃命令が下された。


 成都城が陥落した。大都市を擁するこの地域は内政次第では豊穣な後方基地へと発展させる事が可能だ。梓潼の開発が終了次第、順次官僚を成都に集める意向を董清は示している。上庸と漢中にいる官僚には治安維持を命じ、特に上庸では兵器製造廟の火を絶やす事のないように肝に銘じさせている。次なる標的は江州になるだろう。疲れた兵を休ませて気力を回復させ、準備が整ったら進発しよう。


 陽平関の封鎖。林玲が成しているのはただそれだけだが、益州平定が成った暁には最大の功労者と称えても誰も文句は言うまい。膨れ上がる馬騰軍の脅威をたった一人で押さえ込んでいるのだ。陽平関の兵糧が底をつき、空腹を訴える兵が現れた。腹が減っては戦はできぬ。至極当然の故事にもある通り、馬騰軍の戦意は地に落ちていると言っても過言ではない。これから逃亡兵が続出するだろう。天水では増援が決定されたようだが、陽平関突破の糸口は見出せずにいるようだ。まさに林玲一人によって馬騰軍全体が翻弄されている。「若の命とあれば」とどのような董清の過酷な命令にも忠実に全うする林玲はまさに武将の鑑である。本人に言わせれば「愛です。」とのことだが。


 馬騰軍は長安からも増援を派遣したようだ。間者からの報を受けて、董清はにやりと笑った。全く持って林玲は良くやっている。今度会った折には可愛がってやろう。福貴に聞かれたら憤慨されそうなことを一瞬考えつつ、気を取り直して再び政務に戻った。


 いよいよ江州攻めが始まった。成都の開発はまだ始まったばかりだが他の官吏に任せることにし、福貴、大和、董清、鬼龍は出陣した。じっくり内政に専念するよりも領地を広げる事を優先させたのである。いずれは劉璋軍の主だった者たちを取り込み、益州の統治を任せても良いとさえ考えている。


 漢中軍の官吏が続々と成都に集結している。蘭宝玉もとうとう成都復興の陣頭指揮を執るべく、梓潼を発った。陽平関では食料が乏しくなってきた林玲の代わりを務めるべく張松が向かったが、関から伝わる威圧感に完全にビビッてしまい、動けなくなったようだ。他の武将に救援させた方が良いかもしれない。



 楊松がようやく陽平関封鎖口へと辿り着いた。
「り、林玲殿・・。拙者が来たからには、も、もう大丈夫でござる。一旦、漢中までお退き下され。」足を諤々させ、ぶるぶる震える声で言われても全く説得力がない。だが、諜報員の工作が功を奏し、馬騰軍は陽平関から打って出る気配は全くない。これなら楊松が余程の失態を犯さない限り、大丈夫だろう。
 林玲は従者と共に1年余りに渡る野営宿舎から引き上げることにした。出発前夜にはささやかながら宴が催され、封鎖生活の辛苦を共にした者達が互いに別れを惜しんだ。ここにいる者のうち半数は、楊松が引き連れてきた新兵と入れ替わりで漢中に帰り、残る半数は引き続き楊松と共に封鎖を続けることになる。家族に手紙を託す者、黙々と酒を酌み交わす者、馬鹿騒ぎをする者など様々だが、ここでの1年余りの生活が彼らの絆を強くしたことは間違いない。名もない彼らだが、軍団の根底にある兵一人ひとりの絆がしっかりしているからこそ、荊北同盟はここぞと言う時に大きな力を発揮できる、そう林玲は信じている。その林玲と言えば・・・荒れていた。
「紫音様のばかぁ!」
こともあろうに、親衛隊長の自分を一人陽平関に放り出すとは何事か。別に自分は紫音様を独り占めしようとは思っていない。福貴様から、う・・奪おうなどと大それたことも考えていない。側室になりたいなんて微塵も思っていない。ただ少し、ほんの少し優しくしてくれるだけで良い。戦場で傍らに控え、御身を守れればそれだけで自分は満たされるのだ。それをそれを1年以上も辺境の関の封鎖に駆り出すとは!重要な任務であることは重々承知しているが、だからこそ信頼のおける自分を任命してくれたのは嬉しいが、でも、でも文の一つぐらい送っても罰は当たらないのではないか!?噂では益州平定戦で福貴様と仲睦まじい様子だし、面白くない!全然面白くない!女心を全く持って分かってないのだ、あの馬鹿は!
・・と、まあ酒の勢いに任せて愚痴やら毒やら思いの丈やらを吐き出し、その夜はずっと酒の相手である従者を困惑させまくっていたのだった。
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【2014/04/05 17:48 】 | 三國志 | 有り難いご意見(0)
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