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【2024/04/17 08:04 】 |
董卓の息子


上庸では董清を中心とした董家の面々が(表上は鬼龍を太守として)、政庁の幹部として政に携わっていた。実質的な支配者が董清であることを知る者の中には、「親族縁者ばかりを重用して・・」と陰口を叩くものもいる。もともと董清が信をおく人材は少なく、逆に董清に忠誠を尽くそうと慕うものも少ないからなのだが。

董清の欠点は、他人に信を置かないことであり、他人に頼ろうとしないことだ。だからこそ他人との馴れ合いに関心はなく、そのような人間に魅力なぞあろうはずもなかった。下手に董清の能力が非凡な為、彼自身それで困ったことは然程ないのも要因である。

しかし、いかに個人の能力が卓越していても、彼に魅力がない以上人材不足は深刻で、それ故に上庸では、重職を任せられる人間は董家の者を置いて他にいない・・・というのが実情である。

これからの乱世を乗り切っていくには、このままではいけないことは、自身はもちろん幹部の面々も重々承知していた。筆頭武官である鬼龍は、今日もそのことで頭を悩ませていた。
鬼龍「とにかく若に、列強諸侯らと覇を競って頂くにはまだまだ駒が足らぬ。」
蘭宝玉「しばらくは現場で才あるものを登用していくしかないでしょう。魅力がなくてもコツコツと功を重ねて名声が上がれば、いずれ士は集まります。とりあえず軍資金を確保しましょう。今の税収だけでは立ち行きません。まずは市を作り商業を賑わらせて、税を集めるとしましょう。」


鬼龍「人を遣って調べさせたが、汝南の方には見所の多い士が何人かいそうだ。」
蘭宝玉「上庸から勧誘に出向くには遠方故、効率が悪すぎるわね。新野県庁に連絡して、必要な人材には確保をお願いしましょう。」
 

蘭宝玉「紫音様、軍資金を潤すには貿易が肝要です。まずは房陵港を掌握されてはいかがでしょう。」
鬼龍「うむ。そうすれば新野へ水路を利用した輸送も可能になる。軍事的観点からも有効な手立てかと。」
董清「よかろう。林玲、林玲はいるか。」
林玲「お傍に。」
董清「そなたは手勢を率いて、房陵港を我が手中のものとせよ。」
林玲「分かりました。」
董清「どうせ抵抗するものもおるまいが、本計画は迅速を持って良しとする。10日以内に港の主だった場所を支配下に置くべし。」
林玲「重ねて承知しました。」
董清「よし、行け。」

軍隊を動かすことで、民衆を不安にさせてはならないということで、鬼龍は義兄・大和と共に上庸の巡察を行った。
その功あって、けちくさい悪党の捕縛などが出来、少なからず上庸の治安は良くなった。


鬼龍「若!房陵港の林玲より、文が参りました。港の制圧に成功したようです。」
蘭宝玉「新野県庁にもお知らせするとしましょう。」


鬼龍「本日は若もご一緒に、巡察に回りませんか。」
董清「そうだな。たまには体を動かすのも良かろう。」
こそ泥を捕まえたり、女に暴行を働こうとした酔漢を捕縛したり、董清が良い働きをする度に、鬼龍はそれとなく喧伝して回った。
「良いか。董清様に任せておけば上庸は安泰なのだ。周囲の者にもそう伝えるが良い。」


董清と鬼龍が政庁に戻ると、蘭宝玉が報告にやってきた。
蘭宝玉「紫音様、新野県庁より伝達です。県令殿が漢朝より使者を迎えられたとのこと。詔勅があったようです。」
董清「ふむ、きっと悪い話ではあるまい。これはどういうことか?」
蘭宝玉「おそらく新たな爵位を叙せられるかと思われます。」
鬼龍「ほう。趙雄殿の名前が漢朝にも聞こえているということか。」
蘭宝玉「漢朝を実質支配しているのは曹操です。おそらく袁紹との大戦に備え、後方の憂いを断ち切るために、少しでも県令殿に恩を売っておきたいのでしょう。」
鬼龍「そんなことで、あの趙雄殿が踊らされることはあるまい。」
蘭宝玉「曹操としても爵位を与えるだけで、味方にできるとは思っていないでしょう。おそらく宛の張繍の牽制になればいいぐらいにしか考えてないと思われますが。」


董清は政庁での仕事を終えて、自宅へと引き上げた。ここのところ上庸での政に忙しく、ろくに母や妻の顔を見ていない。
妻・福貴とは結婚当初より折り合いが悪く、彼女のことは半ば諦めている。父・董卓の命で強引に政略結婚させられた二人だった。彼女は結婚してしばらくは我が身の不運に泣き通しの日々だった。今でこそそれは無くなったが、夫婦間の温かみなど今でも全く無いままだ。おそらく今日も顔を見るなり、不機嫌そうな顔をして、散々悪態を付かれることだろう。だから妻とはあまり顔を合わさずに、こっそりと寝所に潜り込んで眠ってしまいたいところだった。
だが慣れぬ土地へと移ってきた母・春風の心寂しさを思うと、母の元へ顔を出さずにはいられない。普段、他人にかける情けや恩情など持ち合わせていない彼だったが、唯一の肉親に対しては別だった。魔王と呼ばれた父の目に留まり、有無を言わさず嫁がされ、董家の一族からは妾呼ばわりされながらも、董清を守り抜いてくれた母には一生頭が上がらないと思っている。

妻には気付かれぬよう、こっそりと母の部屋へと向かっていると、残念な事に書斎から出てきた妻と鉢合わせしてしまった。
福貴「あらあら、どなたかと思えば、愛しの旦那様じゃありませんか?」
董清「福貴か。今帰った。」
福貴「そんなことは言われなくとも分かります。お母上の下へ行かれるのですね?真っ直ぐに。・・私のことは放っておいて。」
董清「何か用があるなら申せ。」
福貴「別に。私はただ旦那様がいつになったらお義父上のように天下に覇を唱えられるのか、待ち遠しいだけでございます。」
董清「そう遠くない。今しばらく辛抱せい。」

董清はげんなりしつつ、福貴との会話を切り上げた。実際に彼は嘘を付いているつもりはない。今、総がかりで上庸における造幣局の建設に取り組んでいる。通貨の流通が円滑になれば
収入も比例して多くなり、そうすれば多くの兵や武具を蓄えることも可能になる。名乗りを上げるのも、そう遠い日ではないのだ。だが相変わらず妻との会話に潤いは全く見られなかった。むしろそちらの方が先の見通しが全く立たないのだった。
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【2014/02/04 00:58 】 | 三國志 | 有り難いご意見(0)
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