ある日のこと、リバーウッド周辺の森でいつものように草花の採取をしていた俺は、通りがかった美女に突然話しかけられた。
「あれ?・・・もしかして・・・カイト・・くん?」
「え?・・・え、えーと・・・。」

「ハルカよ!ハルカ!高等教育時代の・・・もしかして忘れちゃった!?」
「え?え?嘘!ハルカ先輩っすか!マジっすか!」

「マジっすよ。」

「なんでなんでなんでスカイリムにいるんですか?」

「カイト君の方こそ、何でここに?シロディールの帝都大学に進学するのが夢だったんでしょ?」
俺は美人で有名だった先輩との再会に胸を躍らせていた。
高等教育時代、憧れで高嶺の花だった先輩とちょっとした事を契機に知り合うことができ、先輩が卒業するまでの1年足らずの間に冗談を言い合える程の仲になったのだ。
その後は残念ながら、大学に進学する俺と家業を継いだ先輩とで、進路は完全に分かれてしまい、音信も不通になっていたのだが、当時の思い出は今でも俺の心を昂ぶらせる。
鍛冶屋を継いだ先輩は、瞬く間に腕を挙げ、両親を説得して、ここスカイリムに武者修行に来ていた。スカイリムにはシロディールには無い様々な鉱石が採取できる上、タムリエル全土に名声を轟かせる鍛冶屋もいる。
リバーウッドに家を構えた先輩は鍛冶で生活道具を作ったり、傭兵の真似事をしたりして、生計を立てて暮らしていた。そしてまとまった金ができると鉱石の採掘をしにあちこちへ数日間旅を出る・・ということを繰り返しているらしい。
「今日はどうしたんです?」
「この近くに古い小屋があってね。随分前から変なお婆さんが住み着いたらしいのよ。風貌が怪しげらしくて、村の人々は気味悪がって、近寄らないようにしてたらしいんだけどね。『やっぱりこのままの状態を維持するのも問題だ』みたいな意見が出て、結局私が請負料と引き換えに調査に出向くことになったわけ。」
「そんなの危ないですよ!」
「あら?私、こう見えても腕は立つわよ。」
「でも先輩一人じゃ心配です!迷惑かけませんから、俺も一緒に行かせてください!」
「そ、そう?じゃあ、一緒に来てもらおうかしら。ふふ・・・正直言うと、ちょっぴり怖かったんだあ、私。」
「見ての通りのタダの婆さんですじゃ。ご心配をおかけしてすみませんでしたね。」
小屋を訪れた俺達は、入口に置かれた椅子に腰掛けたお婆さんを発見したのだが、特に怪しいところはなかった。話しぶりからも穏やかで思慮深い様子が見て取れた。
急遽、雨が降り出したので、俺達は小屋の中に避難させてもらった。
雨が小降りになった頃、お婆さんは川に水を汲みに行くと言って、出かけてしまった。
「特に怪しいところはなかったですねえ。」
「そうねえ。・・・あら?これは何かしら?」
先輩がしゃがんでいる先を見ると、雑品等で巧妙に隠された地下室への扉があった。
「ここって・・・。」
「先輩、こんなところに手紙があります!」
「うわ。あの婆さん、指名手配中の魔法使いみたいですよ。」
「どうやら仲間とここで合流する手はずだったようね。」
「すぐここを脱出して、人を呼びましょう。」
「そうね。」
俺と先輩が小屋を飛び出した途端、あさっての方角からいきなり火炎呪文を浴びせられた。
「うわっちっち!アチチチチチ!」
「きゃー!」
火炎呪文を浴びせたのは、鬼の形相をしたお婆さんだった。
先程までの仏のような表情とはまるで別人であった。
「私の秘密をどうやら知ってしまったようだねえ!生きて帰しやしないよぉ!!」
くそっ!やられてたまるかってんだ!?
俺は渾身の力で雷撃を放出した。
うわああああああ!
俺の雷撃を浴び、指名手配犯アニスは絶叫をあげた。
こ・・こま・・で・・・か。
「すごいじゃない、カイト君お手柄よ!」

「いやあ、夢中だったもんで、もう何が何だか。」

「ともかくリバーウッドに戻りましょう。報告しないといけないし。そうだ・・私の家に来ない?臨時収入も入るし、ご馳走するわよ。」

「よ、よろこんで!」
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