「今なら地下にいるよ」
そう主人は教えてくれた。拙僧はここで一泊することに決め、かなり気前良く宿賃を支払った。
「早速ワインを頂くとしよう。」
「どうぞどうぞ。好きなだけ飲んで下さい。」
金払いの良い客にはどこまでも慇懃になるらしい。
地下へと下りていくと、いきなり彼と出会えた。
辺鄙な場所の宿屋に長逗留していると、話し相手もろくにいないらしく、拙僧のような他の宿泊客なんて久しぶりらしい。
たちまちのうちに我々は意気投合して、朝まで飲み明かした。
翌日の昼過ぎ、寝坊した拙僧はのろのろと起き出すと、主人が「彼なら池の方へ行きましたよ。」と教えてくれた。
「よぉ。」
「やあ、兄弟。ぐっすり眠れたかい?」
「ああ、あんたは?」
「いや、まだまだ寝たりないよ。外の新鮮な空気を吸ったら、また寝床に戻ろうと思っていたところさ。」
「ここでさっさと寝てしまいなよ!」
あばよ、美食家。楽しい一刻を過ごせたぜ。
さあて、死体を池の中に隠して、発見が遅れるようにしよう。
ちゃっぽ~~ん。
「はっはっは。よくやった。とある辺鄙な場所に建っている宿屋で、一人のオークが姿を消したそうだ。」

「へえ、そんな細かいことまですぐ噂になるんだな。」
「あと、マルカルスの料理長が殺されたらしい。」

「へえ。珍しいこともあるもんだな。ちょうど拙僧も彼に会いに行ってたんだ・・・なんちて。」

「よくやってくれた!改めて、お前の能力の高さには舌を巻くよ。」

「大したことじゃないさ。」

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