「あんた冒険者だろ?ちょっと相談に乗ってくれないか?」
ウインドヘルムの宿屋兼居酒屋で、凍えた体を一杯引っ掛けて温めているところ、カウンター越しに主人から話しかけられた。
「あっちの隅で飲んでる男がいるだろ?ランミルってんだ。・・・おっと誤解するなよ。別に迷惑って訳じゃない。彼はただ黙々と飲んでるだけで、酔って暴れたりはしない。それに支払いの方もちゃんとしてくれてる。」

「なら何の問題もないじゃねーか。」

「彼は今でこそ、酒浸りの毎日だが、以前はああじゃなかったんだ。昔、恋人のイザベラに去られてな。それっきりさ。」
「で、拙僧にどうしろと?」
「まさに今、話をしてただろ。イザベラの消息を調べてもらえないか?もし、彼女の去った理由がまともだったなら、きっとランミルは立ち直ると思うんだよ。」
「余計なお節介はしない方がいいわ。」
拙僧が宿屋の主人の依頼を請け負うと、女将からは釘を刺された。
「人には、誰にも触れられたくないことがあるものよ。解決できるのは自分自身だけ。」
「それも一理あるけどな。見てみなよ、あの飲兵衛がこのまま自立できると思うかい?それより、あんたは何も知らないのか。」

「・・・う~ん、仕方ないわね。実は昔、ランミルがむちゃくちゃ酔っ払った時のことなんだけどね。」
「うんうん。」
「一度だけ暴れたことがあったの。でもその後、すぐに眠り込んじゃって。その時にうわ言で言ってたのよ。『イザベラはリフテンにいるヴェックスに会いに行った。俺も行ったが、門前払いされた』って。呂律が回ってなくて、聞き取れた内容は今の所だけ。」
「ふ~ん、ヴェックスねえ。」
「噂によると、盗賊ギルドがリフテンで幅を利かせてるらしいし、物騒なことこの上ないわ。あなたも行くのは止しといた方がいいわよ。」
「忠告ありがとう。でも、拙僧なら大丈夫だ。」

PR