変人セプティマス・シグナスの紹介でやってきたアルフタンドを抜け、古代の街ブラックリーチへとやってきた。
美しい。

幻想的・・といったら良いのか。
菌類が巨大に生長し、胞子が舞う世界はビジュアル的には圧巻だった。
その中に、ぽつりと研究所らしき建物があった。
白骨化した遺体があった。
置いてあった日記を読んでみると、どうやら死者の名前はシンデリオンと言うようだ。
ん?シンデリオン??拙僧の意識の奥底で何か共鳴するものがあった。
(ナツカシイナ・・)
頭の中に声が響いた気がした。
テーブルの上には真紅のニルンルートがあった。

こんなの、見たことねえぞ。
そもそもニルンルート自体、希少品種だ。

滅多に見かける代物ではないが、赤となると旅なれた拙僧でも初めてだった。
どうやら、シンデリオンは偶然旅の商人から得た情報を元にこの地にやってきたらしい。
そして赤いニルンルートを使って、錬金術界に革命を起こしかねない世紀の大発見をしたようだ。ただし、再現するためには赤いニルンルートが多数必要とのことだった。
正直、拙僧にはあまり興味ない話だったが・・・。
何やら、古い旧友に出会ったようなノスタルジックな気分に包まれた拙僧は、彼の最期の願いを適えてやろうという気になった。日記によれば、サレシ農場という所に彼の弟子がいるらしい。その弟子に材料と研究記録を届けてやれば、上手くやってくれるだろう。
拙僧はこの古代の街で赤いニルンルート探しに明け暮れた。
サレシ農場・・・シンデリオンが野外研究の拠点として、弟子に農場を構えさせ、ニルンルートの栽培を教えた場所。今でも弟子がニルンルート作りを続けているかどうかは分からないが。
「あんた、アブルサ・サレシさんか?」
「いかにもそうですが。あなたは?」
「拙僧はシンデリオンの遺品を持ってきた。」
「ああ!なんということ!いつか、この日がやってくるんじゃないかと思っていました。」
サレシは、シロディールのスキングラードからやってきたシンデリオンに師事し、融資まで受けて、この地で牧場と錬金術を活用し、生計を立ててきたという。
恩師にして、庇護者であるシンデリオンの帰る日を心待ちにしていたのだが、とうとうその日が来ることはなかった。
「分かりました。師の研究は私が引き継ぎましょう。」
「彼は何を発見したんだ?」
「ええと、どうやら彼は究極のアレを作ることに成功したようです。」
「アレって?」
「それは・・・・」
(エリクサー)
「・・・エリクサーです。万能の回復薬と言えばいいですかね。」
まただ、また何かが拙僧の意識に言葉を浮かび上がらせた。
「あれ?泣いているのですか・・・?」
「え?拙僧が?」
気付けば、拙僧の目から涙が流れ出していた。
理由はよく分からないが、温かい涙だった。
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