「本当ならヨソ者には頼りたくはないのだが、致し方ない。」
オーク要塞の一つ、ラーガシュブールで巨人に襲われているところを助けた縁で、一族の母であるアタブから支援を求められた。聞けば、一族の長ヤマーズが守護神マラキャスの怒りを買い、呪いをかけられたらしい。
それ以来、彼の一族は勝利から見放され、要塞も度々襲撃を受けるようになったとか。
「馬鹿な!ヨソ者に助けを求めたというのか!この恥さらしめ。」
「ヤマーズよ。今、何かしなければ一族に待つのは滅亡のみだ。」
「むむむ・・。」
アタブに伴われて、拙僧は引き篭もっているヤマーズに会いに来た。
「マラキャスよ。どうか声を聞かせて下さい。そしてあなたの怒りを鎮める方法を教えてください。」
アタブの主導で、マラキャスを呼び出す儀式が始まった。
ほどなくして、全員の頭の中に直接、声が響いた。
「私を呼び出したのはお前達か?」
「おお!マラキャスよ。どうか我々の長にかけた呪いを解き放ちたまえ。」
「ヤマーズは臆病者で弱虫だ。私の祭壇が巨人に汚されても、何もしようとはせん。」
「ならば、その巨人を倒せばよろしいか。」
「ああ、それならばヤマーズを勇者と認め、呪いから解放すると約束しよう。」
「いいか!お前は俺に同行して、巨人の下へ俺が安全に辿り着くよう支援しろ。」

「は?なぜ拙僧が?」

「お前のせいで、皆の前で、巨人と戦うことをマラキャスに誓わされたからだ。」
ヤマーズは皆が、散会した後、戦支度を進めながら、拙僧に同行するよう強要してきた。
こいつ、本当に勇敢なオークの長か?
戦いぶりも変だ。
巨人が襲ってきても、戦闘は主に拙僧に任せ、ヤマーズは逃げ回っている。

たまに戦うかと思えば、熊など雑魚相手ばかりだ。
マラキャスの祭壇まで、あと一歩というところで、ヤマーズが取引を持ちかけてきた。
「礼を弾むから、俺の変わりに巨人を倒せ。」

「いや、それはさすがにマズイだろう。」

「体調が優れんのだ。呪いのせいで、ここ数週間眠っていないのだからな。」

「どうなっても知らんぞ。」
『マラキャス・・・デイドラ王子の一人。オーク達を守護し、ゆえに彼らから強い信仰を受けている。』
彼の祭壇は確かにぐっちゃぐちゃ。警護に当たっていただろうオークたちは皆殺され、あちこちに血糊がべったりと付いている。当の巨人は今はお出かけ中か?
と、思ったら急に襲い掛かってきた。
急襲とは巨人にしては珍しく頭を使ったようだが、相手が悪かったな!
巨人を倒し、証として、獲物のハンマーを入手した。
「よくやってくれた。お前はヨソ者にしては使える奴のようだ。しかし、帰還した時にうっかりお前の口から真相がばれるとまずいからな。お前には死んでもらおう。」
「薄々気付いてはいたが、やはりお前さん。長の器じゃねーな。そりゃマラキャスも怒るわ。」
「黙れ!」
ヤマーズは呪いとは関係なく、臆病者で弱虫と判明。
しかも姑息な策略を練って皆を騙し、長の座に付いていたようだ。
だが頭は悪いのか。
ヤマーズが恐れる巨人を倒した拙僧に、戦いを挑んで勝てるはずがあるまい?
拙僧の問いに答えるだけの時間をヤマーズは持てなかった。
二合と斬り結ばないうちに、ヤマーズは拙僧の剣の前に倒れたのである。
ラーガシュブールに帰った拙僧は、巨人を倒した証のハンマーをアタブに差し出した。
「おお、巨人を倒したのか。で、ヤマーズはどうした?」
「彼は・・・」
「奴はやはり臆病者で弱虫だった。この者に代わりに巨人の相手をさせ、後から名誉を横取りしようとしたのだ。奴には永遠の眠りが与えられた。」
げ・・・全部見てやがったのか。
ヤマーズよ、筒抜けみたいだわ。仮に拙僧を倒しても駄目だったな。
「おお、マラキャス。それは本当なのですか?」
「俺様を疑うのか?」
「滅相もない。で、我々一族は救われますか?」
「他の者を長に立てるが良い。その者がヤマーズよりも優れた戦士であることを祈るんだな。」
アタブはすぐに一族の中から、最もりりしい男を選び、新族長に任命した。
そして拙僧はマラキャスや一族から、『真の勇者』と認められたのだった。
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