あまりにホワイトランでのナンパが上手くいかないので、もう一度勉強しなおそうと吟遊詩人大学に出向いた時のことだ。
夜遅くまで、詩の勉強をした後、表へ出ると、デルヴェニンという男が嘆いているところに出くわした。
「一体、どうした?」
「ご主人様が休暇から戻られてこないのです。もう何年にもなります。」
「そんなに!?」
ブルーパレス宮殿の『ペラギウスの羽』という部屋に行けば事態は進展するらしい。
「部屋の鍵?貸してもいいですけど、中は蜘蛛の巣だらけですよ。」
掃除係の言うとおりだな。
さて、ここに来れば何かが分かるらしいが。
わお!
(いきなり脱がされた!?)
ここはどこだ?
ん?あんなところで晩餐か?
「もう駄目だ。俺、自信ない。」
「何言ってるんだ!お前は立派に皇帝を務めてるよ。」
「でも何だか落ち着かないんだよね。」
「狂王ペラギウス、お前なくして民はどうするって言うんだ?」
「そうは言ってもさ。駄目駄目。今日のところは帰って寝るわ。」
「あんた、デルヴェニンのご主人さん?」
「いかにもそうだが、何か用か?」
「伝言を預かってきた。『早く休暇を切り上げて帰ってきてください』だとよ。」
「ほう。あいつが寂しがっているのか。この俺がいなくて?」
「まあ、そんなところだな。」
「分かった。では帰るとしよう。案内してくれ。」
「は?何言ってんだ。第一、ここはどこなんだよ。」
「ヒャッハー!いい所に気がついたな、定命のものの癖に。ここはペラギウス王の心の中だよ。」
「・・・あんた誰だ?」
「ヒーヒッヒ!私か?聞いて驚け!泣け!叫べ!マッドゴッドこと狂気の王、シェオゴラスとは私のことだ!」
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・
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「あ、そう。」
「おい、もうちょっとアツイ反応はないのかよ。」
「いや、薄々そうかな~って気がしてたし。」
この不思議な空間から出るための手段として、ペラギウスの心を治療しなくてはいけないらしい。
3つの課題があったが、すべてを解決して、再びシェオゴラスの元に戻った。
「おい。ペラギウスの心を直してきたぞ。」
「えらく主観的な物言いだな。まあ、いい。」
「お、おお!旦那様。私をお呼び下さったのですね。とうとう休暇は終了ですか?」
突然、デルヴェニンが現れて、面食らったが、主従ともども平然としている。
きっと彼らはこういうことを何度も繰り返してきたんだろう。
「いや。休暇はもうしばらく続ける。またこの者のように誰かを寄越されると鬱陶しいから、お前に釘を刺しておこうと思ったまでだ。」
「そ、そんなあ!」
またデルヴェニンの姿が消えた。
「一応、お前には迷惑をかけたようだからな。餞別に杖をやるよ。シェオゴラス様特製だぞ。」
ふと気が付くと、ペラギウスの翼へと戻ってきていた。
現実時間にして、一晩も経っていないだろう。
短時間の間に、いろんなことが起こって、ワケが分からなくなりそうだ。
たった一つ、分かったのは『シェオゴラスって変な奴!』ということだけである。
この言葉も彼にとっては誉め言葉になりそうだが。
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