元アリクルの兵士の情報によれば、長ケマツは『詐欺師の隠れ家』に潜伏しているらしい。
「おーけーおーけー!お前の強さは分かった。我々は話し合うことができるはずだ。」
隠れ家に進入してから、十数人にも及ぶ敵が襲ってきたが、すべてを返り討ちにした。
どうやら拙僧の強さに辟易したらしい。
部下6~7人を従えたリーダーらしき男が戦闘中止を呼びかけてきた。
「ここは平和的に行こう。無駄な血を流さないことがお互いにとって良い筈だ。」
「お前がケマツか。思ってたよりも紳士的だな。・・・殺し屋にしては面白いことを言うじゃないか?」
「俺が殺し屋?はっはっは。お前の冗談の方が傑作だぞ。あの女にそう吹き込まれたか?」
「・・・違うと言うのか。」
「俺はハンマーフェル政府の役人だ。祖国を売り飛ばした罪で、あの女を追ってる。」
「少し話が食い違ってるな。」
「見かけに騙されるな。カワイイ顔をしていても、あいつは百戦錬磨の貴族だ。」
「うむむ。」
「よし、こちらは奴の報酬の倍を出そう。奴に上手く言って誘き出してくれ。」
「分かった。双方の主張を聞いてから、拙僧が断を下す。」
ホワイトランに戻った拙僧は、バナード・メアに隠れているサーディアに嘘を付いて説得した。
「すまん。奴ら全員は仕留められなかった。残党がここに襲撃に来る。馬を待たせているから、それに乗って逃げろ!」
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一瞬ポカンとしていたサーディアだったが、急に脱兎のごとく、走り始めた。
拙僧に礼もなく、目もくれずに・・である。
うーん、感じ悪ぅ~。これだけでも十分有罪なんだけどな~。
「何?一体これはどういうこと?」
ホワイトランの馬屋で彼女を待っていたのは馬だけではなかった。
馬の傍らで仁王立ちしているケマツを見て、彼女の表情は強張る。
「騙してすまなかったな。悪いが、今から拙僧の前で双方の主張を聞かせて・・・」
「くらえっ!」
ケマツから放たれた魔法がサーディアに当たったかと思うと、彼女は石のように膠着して動かなくなってしまった。
こ、この野郎~!
ケマツもむちゃくちゃやりよるやんけ!
こいつら揃いも揃って、拙僧の好意を無にしやがって~~~~っ!
うーん、無礼女と無礼男!どっちの味方につくべきか?
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同じ無礼なら
女だ~!
拙僧に報酬を支払おうと懐をまさぐるケマツに問答無用で斬りかかって成敗した。
卑怯と言うなかれ、非はこいつにある。
ケマツが倒されたことにより、魔法から解き放たれたサーディアが起き上がって礼を述べた。
愛想よく笑って、「お世話になりました。」と頭をペコリと下げる。
そこには先刻までの無礼さは消えてなくなり、いつもの陽気な給仕係がいた。
うーん、やっぱり猫被ってるんだろうな~。

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