仲間の死を次々に確認して悲嘆に暮れる拙僧の耳に、金属と金属の激しくぶつかり合う音が響いた。
まだ、戦っている奴がいる?
すぐさま拙僧は音のする方へと向かった。
音の先には複数名の帝国兵に囲まれながら、戦っているナジルの姿があった。
「ナジル!今助けるぞ!」
オラァ!
くたばれい!
瞬く間に敵兵をことごとく倒すと、ナジルもまた眼前の敵を斬り伏せたところだった。
「助かったぜ。正直ヤバかった。」
「間に合って良かった。」
「正直、あんたを疑い始めてたんだ。裏切者じゃないかってな。しかし今命を救ってくれたからその疑いも晴れた。」
「そんなことはどうでもいい。とにかく早く脱出しよう。他には誰も生きていないのか?バベットとアストリッドは?」
「わからん。帝国軍が聖域に雪崩れ込んできて、あっという間に皆散り散りになったからな。」
「そうか・・ではとりあえずお前は外に出ろ!拙僧はもう少し聖域を探してみる。」
「火の手がものすごいことになってきてるぞ。時間はあまり残されてないぜ。」
「分かってる。お前は早く行け!」
拙僧はその後、聖域内のまだ火勢の弱いところを探してみたが、バベットもアストリッドも見つからなかった。
夢中になって探していた拙僧だったが、気がつくといつのまにか拙僧は火の手にすっかり囲まれていることに気付いた。
「ちきしょお。こんな所で死んでたまるか!」
「私のところに来なさい。そして私を抱きしめなさい。」
拙僧が絶叫した時、またも頭の中に声が聞こえた。この直接、語りかけてくる声は・・・夜母か。
「早くしなさい、『聞こえし者』よ・・。時間はありません。」
拙僧は無我夢中で夜母の棺が置いてある部屋へと走り、夜母の棺へ飛び込むと、急いで内側から棺を閉めた。
その瞬間を待っていたかのように、激しい爆発の音が何度も聖域内で響いた。
「聞こえしものよ。あなたはアストリッドと会って話をせねばなりません。」
「彼女は生きているのか!?」
「ええ。しかし、その命の火はかなり小さくなっている。あなたは早く彼女の元へ行かなければならない。」
「どこに行けばいい?」
「この聖域内にいます。彼女の部屋の・・さらに奥に行きなさい。小部屋があります。」
「分かった。この命が助かれば、あんたの指示に従うとしよう。」
「フフフ・・・あなたは死にませんよ。それにあなたのある限り、闇の一党もまた・・。」
その言葉を最後に拙僧の意識は途切れた。気を失ったのだ。
PR