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【2024/03/28 20:02 】 |
n063 夢幻の如く (蠣崎家)8
・・名生城が落ちた。

      
 名生城に入った蠣崎勢だが、捕虜の処遇や町の被災状況確認などを優先し、破壊された大手門や石垣、壁などを復興を後回しにしていた。防衛施設の補強や修復よりもまず人心を得ることを重んじた・・というわけではない。実際城の石垣や壁は至る所で破損したまま放置されており、まだ火が燻り続けているようなところもあった。隣接する伊達家や最上家からの進攻の脅威があるため、無論このままの状態で良い筈はなく、防衛強化を怠れるものではないのだ。
 正直なところ前線に赴いている武将達のほとんどが武闘派であり、内政手腕に長けた者の頭数が少なく、限られた人材だけではなかなか手が回らないという事情があった。しかし名生城は今後、伊達家攻略の足がかりにするべく最重要な拠点と位置づけられており、攻防どちらにおいても要となる一大拠点に生まれ変わらせる必要があるのも確かだった。
 いつまでも名生城内外の防衛施設を壊れたままにしておく訳にもいかないが、復興の為の手間も資金も不足ぎみである。事態を憂慮する慶広に、なんと先の戦後処理で従属したばかりの瑠杜が大量の軍資金と共に後方から出向いてきて「城の修復を自分に一任して欲しい。」と願い出てきたのであった。半信半疑ながらも慶広の許しを得た瑠杜は、数多いる人足達を小集団に分け、彼らの競争心理を巧みに煽り、仕事の効率化を図った結果、あっと言う間に名生城を修復することに成功した。慶広は大いに喜び、瑠杜に褒美を与えた後、名生城に今後も留まるよう命じたという。
 また伯楼は領内での犯罪のほとんどが、高札に記載されている法の文言が難しく、民衆に意味が正しく理解されていないことが原因であると考えた。試しに名生城周辺の領内で高札が差し替えられたところ、効果は覿面で治安は改善の兆しを見せ始めたのである。早速蠣崎領内のあちこちの高札が新しい文言に書き換えられた。それは誰でも分かるように、努めて平易な文章で記載されており、真実民衆にそれらの法が浸透していった。これにより蠣崎領内では年々犯罪の発生率が下がっていくのである。
 このように蠣崎家では内政面に秀でた武将が少ないながらも徐々に数を増やしてきており、今後の人材の充実に期待が寄せられた。

 

 雪乃に振られた日、伊予姫に失恋の痛みを慰められる形で、抱きすくめられていた虎太郎だったが、(後日振り返っても当時の記憶が定かでないのだが、)勢い伊予姫の寝所で一夜を過ごしたのであった。明朝の鳥の鳴き声によりふと目覚めた虎太郎だったが、傍らにいる伊予姫が自分の腕を枕にしているのをぼんやりとしばらく眺めた後、不意にさーっと血の気が引いていくのを感じた。
(た、大変なことをしてしまった・・・。)
 慌てて着の身着のままで伊予姫の寝所を飛び出したのだが、間が悪いというか、主君慶広の侍女に部屋を出たところを見つかってしまった。侍女は着崩れした虎太郎の姿を見るなり、けたたましい悲鳴を上げながら支度部屋に走り戻ったため、口止めをする暇も無く、あれよあれよという間に事態は慶広の耳に入る運びとなり、発覚後一刻も立たぬ間に、虎太郎は庭で慶広や奥方が見下ろす中、神妙な面持ちで正座をさせられていた。
「ふむ。お前は伊予と一晩床を共にしながら、その実何もしていないと申すのだな?」
「は・・。目覚めた時の状況が状況ゆえ、信じ難きことと思われるのも無理はありませぬが、姫様に対し、不埒な行為に及んでないことは天地神明に誓いまする。」
「半裸で腕枕が不埒ではないと?」
「あ、いえ、そういうわけでは・・そ、その・・・。」
「伊予は女子として魅力がないか?」
「決してそのようなことは・・!」
「まあ良い。お前は昔から嘘の下手な実直な男であった。私も奥もそれは信じておる。お前の言に嘘偽りはあるまい。」
「・・ありがとうございます。」
「だが、世人はどう思うかのう?伊予は最早傷物と口さがない事を申す者もいよう。他家との縁組も適うまい。」
「も、申し訳ございませぬ・・!」
「だがな。幸か不幸か、あれはどうやらお前のことを好いておるらしい。はっきり言わずとも親には分かるものよ。武家の娘に生まれついた者が想い人と結ばれることなぞ、乱世にあっては在り得ぬことかもしれぬが、この蠣崎家ではその限りではない。寧ろそういった幸せひとつひとつを当家では蔑ろにせぬようにしていきたいと考えておる。親は子の幸せを願う者じゃ、虎よ、伊予を娶ってはくれぬか?」
「・・は?・・今なんと!?」
「伊予をお前の妻にと申しておる。」

 慶広の計らいにより伊予姫と虎太郎の縁組が蠣崎家中に公になった。祝いの品代わりにという訳でもないが、箔を付けるためにも虎太郎には当主季広から官位と家宝が授けられた。
 とんとん拍子で話が進み、結納の儀当日まで虎太郎はうじうじと悩む暇も無かった。幸せそうな伊予の顔を見ているとこれで良かったのだと思う反面、もしかすると自分は上手く伊予の思惑どおりに踊らされているのではないかと考えないわけでもない。だがそんなことはこれからの二人の未来を考えれば小さなことだった。二人で幸せになっていこう、虎太郎は改めて伊予とそう誓い合ったのだった。

 

 後方支援を命じられ、左遷に近い形で大浦城主を命じられた沼田が彼の地で兵を掻き集めているとの情報が入った。不審に思った慶広が真意を問い質すべく使者を遣わしたところ、彼は「前線に兵を集中させ過ぎて、空白地帯となった北陸奥の治安の悪化を防ぐ為に候」と申し開きをしてみせた。
 折しも伊達家攻略の為、慶広を初めとして蠣崎家の主だった武将のほとんどが前線である名生城に集まっていた。いざ伊達家との戦端が開かれれば、前線に集結した武将達が後方に下がるのは至難の業である。そうなると蠣崎領内で危急の事態が起こった際には、対処するのは容易なことではない。沼田の言い分は至極最もな話ではある。
 だが大浦城には既に5万もの兵がおり、それは蠣崎家の保有する全兵力の半数近い兵を抱えていることを意味している。抜きん出た大兵力を抱える軍団が他におらず、対して徳山館にいる当主季広の元には1万足らずの兵しかいない。「第2の本能寺が起こりはすまいか?」・・と、そう危惧する者まで現れた。沼田の保有する兵数は諸国の大名に引けを取らない大勢力とも呼べるものであり、一歩間違えば脅威にもなり得る。前々より沼田の素行を快く思っていなかった准太は一抹の不安を感じずにはいられなかった。昨今大浦城には素性の知れない者がちらほらと出入りしているとの噂もあり、准太ならずともここ最近の季広と沼田の確執を知る良識ある者からすれば、沼田は蠣崎家の獅子身中の虫であるとして、危惧を覚えずにはいられないのであった。

   
 
 伊達の主要3城ー利府城、黒川城、米沢城。黒川と米沢に篭る兵は寡兵であり、利生城さえ落とせば伊達家の息の根を止めたも同然。必然、当主政宗を始め、主だった武将が本城には詰めており、守りは固い。  
 

 冬が去り、春 の訪れを待って、蠣崎家は伊達領・利府城へと進攻を開始した。要の城をみすみす落とされる訳にはいかず、政宗を始めとして伊達家は一丸となって頑強な抵抗をしてきた。政宗自らの奇襲攻撃や寡兵であるはずの黒川城や米沢城からも救援の兵がやってくるなど、蠣崎勢はこれまでにない苦戦を強いられた。壊滅に追い込まれる部隊が出るなど、想定以上の被害を被ったが、歴戦の猛者揃いの彼らも負けてはいない。激戦を乗り越えて、とうとう部隊の一部がなんとか利府城に取り付き、堀を越えて城内に潜入することに成功した。次々と現れる援兵に備え、城門に残った伯楼、竜之介の両隊と伊達勢が攻守を交代して激闘を繰り広げている間、虎太郎はこの死闘に終止符を打つべく、天守の最上層を目指していた。
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【2016/05/06 00:02 】 | 信長の野望 | 有り難いご意見(0)
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