謎の依頼者モイラの手による無頼漢達の襲撃を一通り撃退したところで、俺と先輩は再びブリークフォール墓地の探索を再開した。
入口周辺に屯していた山賊達の所持品からは、残念ながら目当ての『金の爪』は発見できていない。
もっと奥に潜ってみる必要ありだろうが・・。
ん?先客か?
奥のレバーに向かっているようだけど・・・なんだかキナ臭いぞ、あれ。
男がレバーを引いた途端、四方八方から矢が飛来して、男は一瞬で絶命した。
遺跡に罠は付き物だろうに・・・。
「先輩はどう思います?」
「どうもこうも、やっぱりあれが鍵じゃない?」
先輩は階上に鎮座してあるレリーフと、眼前にあるレリーフを顎でしゃくって示してみせた。
「やっぱりそうですよね。」
「おそらく目の前のレリーフは、階上の中央にあったものが崩れ落ちたものと考えるべきでしょうね。」
「同感です。」
「そうなると問題はこちらよね?」
「ええ。おそらく彫像とレリーフに何らかの因果関係がありそうですけど。」
「とりあえず調べてみましょ。」
俺と先輩は手分けして、階下にある3つの彫像を調べてみた。
「蛇と魚と鷲の絵が彫られていますね。」
「こっちのもそうよ。それにカイトくん、どうやらこれって回転するみたいね。」
「うわ、本当だ。」
少し重いが、人間ひとりの手で彫像を回転させることができた。
足元の枠に三角のマークがあるが、もしかしてここに絵を合わせろ、ということだろうか?
「とりあえず上のと同じ並びにしてみる?」
「それしか思い付きませんね。」
俺は階下の彫像の絵の並びを階上のものと合わせた後に、おっかなびっくりレバーを引いてみた。
ただしレバーを引いた直後に、咄嗟に地に伏せた上、男の死体を盾にする念の入れようだったが。
「・・・カイトくん?上手くいったみたいよ。」
少し呆れたような先輩の声を耳にして、先を見てみると、確かに扉は開いていた。
「とりあえず先に進みましょー!」
恥ずかしさを吹き飛ばすように、俺は若干、大声を出して前進した。
「カイトくん!蜘蛛よ!」
「蜘蛛?俺は蜘蛛なんてへっちゃら・・」
「よく前を見て!大蜘蛛よ!人の倍以上の大きさがあるわ!」
「うわわわわわ。」
慌てて俺は電撃を放ち、先輩は矢を連射した。
大蜘蛛は我々を捕食しようと迫ってきたが、こちらも常に距離を取りつつ応戦した。
勝負は意外とあっけなくついた。
「余裕でしたね。」
「ふふふ。その割りには、最初、結構ビビッてたみたいだけど?」
「もういじめないで下さいよ~。単に生理的嫌悪から声が出ただけですって。」
「ふふふ。そういうことにしといてあげる。」
「おーい!そこのお二人さん。痴話喧嘩はそのぐらいにして、こっちを助けてくれないか?」
声のした方をみやると、一人の男が蜘蛛の糸で雁字搦めにされているのが見えた。
「助けてくれよ。動けなくて困ってるんだ。」
「ちょっと待ってて。」
俺は電撃を蜘蛛の糸目掛けて放った。
「あちちち。焦げてる、焦げてるって!」
「ちょっとぐらい我慢してて!もうすぐだから。」
男を蜘蛛の糸から解放した途端、急に彼は逃げ始めた。
「ひゃっほーい!」
「財宝は俺一人のもんだ。他の奴らに渡すもんかー。」
「・・・助けてもらった礼も言わずにあんなこと言ってますけど、どうします?」
「・・・とりあえず追いましょう。」
男はけたたましい騒音を立てながら、爆走していく。
俺達も負けじと彼の後に続いた。
ぐおっ!
突然、篭ったような変な声がした。
ぎゃー!
間髪入れず、男の悲鳴が響き渡った。
「見て、カイトくん。ドラウグルよ。」
「ドラウグルって、遺跡にいるっていう動く死体の事ですか!?」
「キラキラした目で言わないで!」
「そんなこと言われても、文献で見ただけですし。」
「研究の事を考える前に、まず自分の身の安全を考えなさい!」
「うわわ。なんだか強そうですよ。」
「だからさっきから言ってるでしょ。」
「だって体もぼろぼろで、殺傷能力低いとか本に書いてたから。」
「そんな当てにならない本を読むのは止めなさい。」
おりゃー!
でえええい!
頼むから、くたばってー!
ゼイゼイ・・・。
「やるじゃない、カイトくん。」
「そりゃ、もう必死でしたから。魔力が尽きかけましたけど。」
「先輩、これ・・。」
ふと足元で絶命している先程の男を見ると、懐から黄金らしきものが覘いているのが見えた。
「なんだか・・獣の爪みたいね。」
「金でできてるし・・。先輩、もしかしてこれが『金の爪』じゃあ・・!?」
「カイトくん・・どうやらビンゴよ。彼の日記にもそう書いてるわ。」
「あれ?どうやらこれ、何か別の秘宝の鍵みたいですよ。」
「本当だ・・。『答えは手のひらにある。』だって。」
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