「ちきしょお、落盤で道が塞がってる。回り道しなきゃ駄目だな。」

「地上にいるドラゴンが派手に暴れてるみたいだね。咆哮が地下にも響いてるよ。落盤はそれが原因かな。」

「おかげで帝国兵が待機してる部屋を通り抜ける羽目になるぞ、覚悟してくれよ。」
「ストームクロークめ。こんな所まで乗り込んでくるとは良い度胸だ。」
「生きる為には仕方ないんすよ。」と言って、通してくれるはずもない。
当初の打ち合わせ通り、レイロフが剣で斬り結び、俺が隙を見て火炎を放つという戦い方でなんとか帝国兵を蹴散らしていった。
「お、物資の蓄えが豊富じゃん。ちょっと補給させてもらおう。」
「もう満足か?」
「いや、もう少し。」

有用な物を持てるだけポケットに捻じ込んでいる俺を見て、レイロフは呆れた様子だった。
しばらく進むと、尋問部屋にぶち当たった。
居合わせた尋問官をレイロフが一撃で昏倒させ、懐から鍵を取り出すと、囚われていた仲間を救出して回った。

「ありがとう。」
「助かったわ。」
「おい、魔法使いらしき奴が死んでるぞ。」
「放っておけよ。」
「いや、それこそ何か有用な物を持ってるかもしれん。カイト、ロックピックを渡すから錠を外して、持ち物を調べてくれ。俺は捕虜達の手当てをしてくる。」
「本当、人生が180度変わったなあ。まさか錠前外しに挑戦することになるなんて・・。」と、ぶつくさ言いながら、イジイジしていると、カチャッと小気味良い金属音が・・外れた?
あっさりと扉が開いた。
俺って、もしかしてこっち方面の才能あるのかな?
魔法使いの懐からは幾許かの金貨と魔術書が出てきた。

ふむふむ、これは使えるな。
時間もないので、簡単に目を走らせただけだったが、破壊呪文のレパートリーが増えそうだ。
レイロフの手当てがまだ続いているので、部屋の探索を続けてみた。
するとテーブルの上に置いてある一冊の本に目が留まった。
『ドラゴンボーンの書』・・?
ドラゴンボーンと言えば、確か帝国皇帝の直系の血筋のことだったと思うけど・・。

オブリビオンクライシスの折に、血筋は途絶えてしまったとも聞いている。
へえ、スカイリムじゃ『ドラゴンボーン』の解釈はちょっと違うんだ。
竜語を解するねえ・・・ドラゴンの存在そのものが御伽噺みたいだけど、でもさっき目撃したばっかだし、声は今でも聞こえてるし。この本に書いてあることは空想って訳でもないのかな。
「おおい!いつまでボサっとしてるんだ。付いてこないと置いてくぞ。」
いつのまにか本の世界に夢中になっていたらしい。

気が付けば、レイロフは手当てした仲間と共に先へ進もうとしてた。
「何か面白い物でも見つかったか?」
「あ、うん。本がね。」

「本?」
「この地方の伝説とか民話だとかに興味があるから見過ごせなくて。」
「研究者なんだってな?レイロフから聞いたぜ。」

「まあね。こっちに来た早々バタバタで、まだ何も研究らしいことしてないけど。」
「がんばれよ。ここを無事脱出できた暁には協力を惜しまないぜ。」

「ありがとう。」
その約束が果たされることはなかった。

この後、繰り返された幾度とない戦闘の中、彼は無残にも命を散らしたのだった。

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