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「劉辟、帰ったばかりで悪いが再び上庸へと向かってくれ。蘭軍師から、上庸の防衛をお前に任せたい旨の依頼状が来ている。」 久しぶりの新野をゆっくりと満喫する間もなく、劉辟は戻り支度を始める事になった。どうやら黄巾崩れの自分を、新野でも上庸でも高く買ってくれているらしい。少々こそばゆいが、その信頼に応えたいという思いが大きくなっているのは確かだ。荊北同盟の一員となるまでは、これほど誰かに頼りにされたことは一度もなかった。そう、神とも崇めた張大師ですらこんなにも信頼を寄せてくれていなかった。 「さて、桃娘は元気にやってるかね。」 すっかり上庸の上級官吏たちにも打ち解けていたようだが、やはり一人残してきたことが気にはなっていた。まずは房陵港に戻り、新たに倉に納められた金と兵糧を徴収してから上庸に戻るとしよう。 「若、兵士の調練及び弩の補充終了しました。」 「治安も高水準で維持されております。」 「漢中の1万4千に対し、我が守備軍2万7千。さらに蘭軍師が万全の態勢を整えておられます。劉辟殿が房陵港から戻られれば、最早隙はないかと。」 次々と董清に報告が上がる。黙って全てを聞いていた彼は、徐に立ち上がると 「よし。後顧の憂い無く、曹操は対北戦線に気を取られている。機は熟した。我らが武勇を列強諸侯に見せ付ける時ぞ!」 応!と一同が応えるの見て、作戦を告げた。 「鬼龍、前軍として弩兵隊を率いよ。大和は蓬莱信、福貴と共に後詰として井蘭隊を指揮せよ。張繍軍を支援する施設は破壊して構わん。俺は中軍として弩兵隊を指揮する。敵はおそらく騎馬隊を押し出してくるだろうが、隊を率いることのできる器を持った将はわずか3人だ。包囲殲滅すれば敵ではない。だが今回は被害を抑えるためにも、上手く新野軍と連携する必要がある。ゆめゆめ足並みを乱すことなかれ。」 情報では、張繍は宛で1万頭の軍馬を飼い慣らしている。董卓の部下だった頃より1万人以上の部隊の指揮を任された万人隊長だった。それらから類推するに、まず打って出てくるのは、多くても張繍自ら率いる騎馬1万騎弱といったところであろう。残る兵は1万2千だが、賈詡と弧車児がそれぞれ別働隊を率いて4,5千を率い、守備兵は2~4千になるのではないか。もし敵の迎撃部隊がすべて南へ向かえば、上庸軍は無傷で宛城へ辿り着ける。そうなれば井蘭と弩兵という攻城に長けた部隊を有する上庸軍である。1ヶ月を待たずに宛は落ちるであろう。そう考えてみると、董清は自分が張繍軍を脅威として感じていないことを自覚した。 やはり自分は来る曹操との決戦の前哨戦程度にしかこの戦を感じていないのだろうか。戦後処理についてもそうだ。宛攻略の暁には、宛の政務は趙雄達新野の連中に任せ、董清自身は上庸に戻って次の戦に臨む所存である。投降兵や捕虜などはすべて趙雄の一存に委ねる。処刑するも良し、自身の配下とするも良し。そこで出される趙雄の決断に一切口を出すつもりはない。 気になる点があるとすれば、曹操軍が漁夫の利を狙って宛を四方八方から攻めてくることだが、それこそ董清の望むところだ。曹操軍の将兵を削り取り、一気に弱体化させる好機だと考えている。その為蘭にはいくらでも宛を支えることができるよう、今この時にも兵の増強を続けるよう指示してある。事あればすぐにでも宛に向けて再び兵を動かすのだ。 東征する上庸軍にあって、やはり話題になるのは曹操軍の動向だ。苑に動乱があったと聞けば、長安・陳留・濮陽・許昌に駐屯する諸将がそれぞれどう判断するだろうか。新興の勢力を早めに潰そうとは考えないか?いや袁紹と対峙している今、余剰兵力はあるまい。様々な意見が交わされるが、結論は出ていない。いくら議論を戦わせようとも、もう少しで答えは分かる。上庸軍にも苑は目前に迫っている。 驀進とも言うべき速さで上庸三軍が東進している。未だ脱落者が出ていないのが不思議なぐらいだ。新野軍とは伝令を密に行き交わせており、互いの位置関係はまるで一個の軍を率いているかの如く掌握できている。董清には気になる点があった。気が早いかもしれないが、捕虜に関する話だ。もし張繍軍のうち迎撃に出ている軍がまだ外で戦っている最中に本拠地が落ちれば、その軍を率いている武将はどうするのだろうか?のこのこと捕虜になる為に、苑へ戻ってくることはなかろう。そうなると行方を晦ました挙句、どこかの勢力に仕えて報復の時を窺うかもしれない。いっそ苑陥落の一歩手前であえて攻撃の手を緩め、迎撃軍が壊滅して将が城に逃げ帰るのを待ってから、一網打尽にした方が良いだろうか。よくよく趙雄と協議しておいた方がいいかもしれない。本格的な戦闘が始まる前に、密書を送るとしよう。 PR |
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