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【2024/04/20 21:47 】 |
n069 夢幻の如く (蠣崎家)13

 出羽の覇者となった今、西を真田や徳川の抑えとして親戚筋となった最上に任せる一方、慶広が目を向ける先は関東しかなかった。それに新たな壁となって立ち塞がるのが佐竹家である。結城家を滅ぼし、北条家を弱体化させて、関東一円に支配を拡げており、その勢いは蠣崎と同じく凄まじいの一言に尽きるだろう。慶広は修復を進める檜山城で開いた軍議の場で、佐竹攻略準備を進めるよう、一同に申し渡した。

 強敵との対決姿勢を鮮明にすると共に、慶広は兵器の技術革新を急がせた。檜山城攻略の要となった大筒を初めとして、攻城の際には欠かせぬそれらに重きを置くべしと判断し、機動性や射程の向上に工夫を凝らすよう命じたのである。
 一騎当千の猛将揃いの蠣崎家臣団ではあったが、将頼みの戦ばかりをするわけにもいかない。今後の日本一統までの長い道のりには、個を支える組織力というものを底上げすべきだと考えたのであった。

 夏の間に前線となる南陸前の利府城や岩代の黒川城に兵や兵糧のみならず、騎馬、鉄砲、兵器が集められつつあった。
 それらの動きに先行して、何故か今やすっかり慶広に心酔している伊達政宗が、磐城の地に支城の建築を開始した。小高城、宇都宮城、太田城と佐竹の三城のど真ん中に行う大胆な作戦である。新当主となった兄を全身全霊をかけて支えようと気負う守広の活躍もあり、政宗率いる2万の軍勢に守られた工作部隊は順調に築城を続けていた。目前にそびえる太田城の主力部隊が旧結城家領国の下総方面に出払っている最中という幸運にも恵まれ、秋になれば完成の見込みである。
 また小高城の北に配されていた砦を守広の手で破壊した後に、すかさず利府城から繰り出した工作部隊の手によって、後の進軍のために道の敷設が進められた。これが滞りなく完了すれば、蠣崎としては小高城を一気に攻めるも良し、搦め手で行くのも良しと戦略に幅を持たせることも可能になる。
  佐竹が西の北条や南の里見にも目を向けなければならない一方で、蠣崎は戦力を集中させることができ、磐城一帯では蠣崎に有利な状況を構築しつつあった。

 ちょうど其の頃、檜山城一帯の内政に一定の目処をつけた慶広が虎之助や准太ら主だった家臣団を率いて、利府城に入城した。佐竹との目前に迫った戦端を前線で自ら差配するためであった。
 
 慶広に付き従い利府城に入った虎太郎の元に、伊予姫から文が届けられたのは間もなくのことであった。

『星の降る夜に人の心は移ろいやすくなると申しますが、それは本当のことだったのですね。優しかったあの頃のあなたの微笑みは幻であったと思わずにはいられません。長い間、お目にかかれていませんが、寂しく感じているのはきっと私と羽咲だけなのでしょうね。きっとどこか余所のいい女を抱いておられるのでしょう。申し訳ないと思うのなら、いっそ早くこの世から消えてください。』

 文を読んだ虎太郎の顔がひきつった。その表情を見て、不思議そうに思った准太がひょいっと虎太郎の手から零れ落ちた文を拾い上げて目を通し爆笑する。
「お前、どんだけ前線に出ずっぱりだっけ?」
「・・もう1年近く伊予に会っていない。羽咲にもずっと・・。」
「ひどい男だな。」
「主命なんだし仕方ないだろ。准太だって、こないだまで雪乃と一緒にいられないとか散々ぼやいてたじゃないか!・・そりゃ最近はずっと一緒にいられるみたいだけどさ。」
「まあ、俺のことはおいといて。で、余所の女とかいうのは本当か?」
「事実無根だ。」
「本当か?お前も側室を持てとか慶広様に言われてんだろ?蠣崎の男子は多いほど良いとか最近よく言ってるじゃないか。」
「その話は本当だけど、伊予以外の人を妻に迎えるつもりはないよ。」
「お~お~妬けるねえ。その気持ちを早く姫様に伝えることだな。繊細そうで意外と嫉妬深いお方だから。」
「・・言われなくてもそうするよ。」
 この後、伊予姫の機嫌を直す為に、言葉の限りを尽くして長文を虎太郎が認めたのは言うまでもない。

 
 

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【2016/10/30 05:38 】 | 信長の野望 | 有り難いご意見(0)
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