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【2024/04/25 19:07 】 |
n065 夢幻の如く (蠣崎家)10
米沢城の攻略に向けて、蠣崎家は2万の軍で進攻を始めた。しかし米沢城は利府城と並んで伊達政宗自ら普請を手がけた堅城である。規模が大きく、防衛設備も整っており、まともに攻めれば相当の被害を覚悟せねばならないだろう。折しも虎太郎達が到着する前に、黒川城から政宗自ら率いる1万が到着したとの報も伝わった。
 蠣崎勢が米沢城を前にして用心しながら陣の展開を始めるも、戦巧者の伊達勢は容易に城の外へ打って出ようとはしない。痺れを切らした虎太郎が総攻撃を命じるが、米沢城はとにかく固く、城兵もまた粘り強く反撃してくるため、攻めあぐねてしまった。そうこうする間に、夜襲やら何やらと休む暇もなく、伊達勢が嫌がらせを続けてくる為、虎太郎は一旦、山形城への転進を決意した。
「まだ時は満ちていないようだ。」
 蠣崎勢の撤退する様を見て、勝ち鬨を上げる伊達勢の様子を後背に感じ取りながら、ぽつり呟いて虎太郎は山形城を目指した。
 山形城に入った虎太郎達は鋭気を養う為、当面は内政に専念することにした。山形城の再奪取を試みる最上と、余勢を駆って攻め来る伊達を気にしなければならず気を抜くことはできなかった。それに加えて、不気味な沈黙を保つ大浦城にも虎太郎や准太は心を配らねばならなかった。獅子身中の虫とはよく言ったものである。


 だがそうこうしている間に山形城に吉報が届いた。なんと利府城から進発した工作隊が米沢城周辺の村々の取りこみに成功したというのである。利府城に残った伯楼が少しでも虎太郎達の援護になればと、策を巡らしたのだ。特に伊達家お抱えの匠集団が集う街を接収できたのは大きな功績だった。それは伊達家の鉄砲技術が衰退することを意味しているからだ。しかも砦を米沢城近辺に建設することに成功したとの続報まで届いた。これで事実上、米沢城の北側と東側を蠣崎領とすることに成功したのである。


 折しも東北南部の雄・佐竹家が黒川城へと攻め寄せた。衰退著しい伊達家を接収すべく、ついに動いたのである。しかし政宗も負けてはいない。果敢にも自ら手勢1万の軍を率いて、それを迎え撃った。だが、それは黒川城に駐屯する伊達家の主だった軍がとても米沢城の救援に行ける様な状況ではないことを意味していた。伊達の頼みの綱である最上家もまた山形城を失ったことによる痛手からまだ回復できていない。蠣崎家にとっては千載一遇の好機到来である。ここからが世に言う米沢の戦いの本幕の始まりであった。


 大浦城では、城主沼田を主君と仰ぐ面々による評定が開かれていた。戸沢盛重、戸蒔義広、佐久間安政の大浦城代家老衆である。彼らは皆、蠣崎家にあって、主流筋から外れた者達であった。僻みや妬みもあってか、いずれの者もどことなく陰気な雰囲気をまとっているのが共通している。中でも最近柴田家(現氷室家)を飛び出して、新たに加わった佐久間安政はその類まれな容姿に比例して、陰惨な噂が付きまとっていた。
 今日も今日とて、前線での虎太郎達の活躍ぶりを全く面白くなさそうに話し合っている。
「前線が南へ南へと動いているようにございますなあ。」
「伊達相手に随分と猛威を振るっているとのこと。」
「米沢城陥落も間近とか。」
「しかし、其の分利府城以北の領地が空白状態になっているぞ。」
「まこと、主筋の方々は前しか向いておられぬ。困ったものよ。」
「くっく。一応、表立っては後方に控える我らがその空白地帯で不測の事態が起こらぬよう、目を光らせておることになっているのだがな。」
「それ故、我らが自由にやれるというのもありますがな・・。」
「それにしても最上も伊達も不甲斐ないことよ。せっかく我らが裏で支援してやってるというに。」
「恩を売って、我らを高く買ってもらおうという算段が台無しですな。」
「蠣崎が負ければ良し。勝っても窮すればなお良し。どちらにせよ、我らに損はないよ。」
「そのとおり。それこそ我らの蠣崎の内での地位が相対的に上がるというもの。無駄に5万もの兵を養っておるわけではない。」
「左様、左様。後は我らが主に蠣崎の中枢に立ってもらい、思うが侭に権力を振るってもらえばよい。蠣崎が潰れたとしても、最上や伊達は我らを高待遇で迎えてくれることになっておる。どう転んでも勝利の美酒は、我らに飲み干されるのを待っておるようじゃ。くくくく。」

  
  佐久間安政は評定を終えた後、自邸へと戻ってから二通の書状を瞬く間にした為、気を揉む家臣を横目に子飼いの乱波を呼んで申し付けた。
「こちらの書状は佐渡島殿へ。こちらは岡倉殿への書状じゃ。努々間違えるでないぞ。迅く行け。」
「はっ。」
「・・とっ、殿!いくら腰掛とは申せ、主家蠣崎に仇なそうとする沼田殿に与力し、更に裏では二組もの闇と気脈を通じていては、命がいくつあっても足りませぬぞ!」
「ふふ。戸沢殿や戸蒔殿のような視野の狭い者らと付き合っておるだけでは肩が凝るわ。本気で沼田殿が蠣崎の中枢に立てると思っておる。その下で甘い汁を吸うことしか考えておらぬ小物と本気で付き合っていてはこちらの身が滅ぶのみじゃ。大丈夫、いずれ佐渡島殿や岡倉殿との絆が生きてくる。利害が一致している間は奴らも俺を無下に扱ったりはせぬ。これが世渡りというものよ。私の処世術を傍でしっかり見ておけい。ふはははは。」
 この佐久間という男、後に蠣崎家を出奔し、織田家、果ては島津家と主家を次々に変え、悉く准太達の前に立ち塞がるのだが、今はまだ先の話である。
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【2016/06/08 01:02 】 | 信長の野望 | 有り難いご意見(0)
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