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【2024/04/19 06:46 】 |
自軍の兵を損ねない将

「斥候からの報告によると、ちょうど山の反対側で敵部隊が進軍中とのこと。その数およそ一万。旗印から袁家の二枚看板の一人顔良の手勢と思われます。」
「我らの動きを察知されたか?」
「現段階では不明。しかし用心は必要です。」
「進軍止めい!この地で編成を整える。各部隊は速やかに輜重隊との合流を図るように。」


「やれやれ、やっと追いつきましたよ。」
「馬鹿野郎!てめえがなかなか来ねえから、待ってやってたんだろうが!ほれ、さっさと次行け!次!」
「へいへい。」

 
「やはり敵の諜報の網にかかったと判断した方が宜しいでしょう。」
「ああ、顔良はこちらの位置を把握していると想定した上で、行動するとしよう。」
「顔良部隊の進軍速度から逆算すると、遭遇地点はここらへんになるかと。」
「よし、そこで罠にかけるとしよう。」

  董清軍にとっては十八番の戦法も、新参の馬超や榛春にとっては、初めて目の当たりにすることになる。董清の采配を間近で見られる時が近付いていることを知り、胸が高鳴るのが自分でもよく分かった。

 
戦場を見定めた董清は諸将の布陣を確かめていく。
「鬼龍隊は右翼、林玲隊は左翼に回れ。大和隊と魯蓮隊は後背に位置し、火矢攻撃と連携して投石を始めよ。俺は正面に位置し、、皆の攻撃の補佐に回る。」
「若!顔良隊の攻撃を正面から受けて立つおつもりで?」
「案ずるな、そんなつもりはない。顔良は勇猛だが、深く考えることのできない馬鹿だ。猪突猛進な奴はきっと俺を見て、真っ直ぐに突っ込んでくるだろう。格好の的だ、外すなよ。その後は奴を撹乱するなり、止めを刺すなり、好きにするさ。我が隊に迫れども、奴の手は俺には届かん。」

 
顔良の真正面に、河北においても名高い董清の旗印が見えた。
「ほう、大将自ら前線に出張るとは、胆の据わった者か、余程の馬鹿と見える。いずれにせよ、この俺が引導を下してやるから、大した差はないがな。」
全軍に突撃の命を下した。自ら調練を施した兵たちが、驀進を始めた。野獣のように、手柄を立てんとして敵に襲い掛からんとしている。ふと、左右にも敵部隊が展開しているのが見えた。だが、それがどうしたというのだ。董清のこれまでの戦いぶりは熟知している。包囲される前に董清の喉元に自分の刃が届く・・・その自信が彼にはあった。もう董清隊は目前だ。
「自らの兵を損ねない将だ?ああん!?この俺が部下どころか、てめえ自身を終わらせてやるぜ!」


董清の顔が肉眼で判別できる・・・そんな距離にまで肉薄したところで、突如視界が暗転した。顔良隊の先鋒が突如口を開いた大穴に嵌って、吸い込まれるようにして消えたのである。穴の深さは落ちた人間が一瞬昏倒するほどで、大した殺傷能力こそないが顔良隊の動きを封じるには十分だった。次々と前線が立ち往生するも、そんな惨状を知らぬ後方は勢いを止めることなく尚も進んだため、味方に押されて穴に突き落とされる者、転倒したところを味方に踏み潰される者が続出した。壊乱状態になったところへ、火矢と岩石が雨霰と降り注ぎ、1万1千もの大部隊だった顔良隊は7割強を一瞬の間に失う羽目になったのである。しかも顔良はまだ兵の混乱を収束できず、火に巻かれて散々な有様だった。そこへ董清軍の容赦のない第二撃が食らわされようとしている。

 
統制の取れなくなっている顔良隊に、董清軍の第ニ射が飛来し、第一射の攻撃を辛うじて生きながらえた者達に、早いか遅いかでしかなかったことを知らしめた。遭遇してから半刻ばかりの出来事であり、ケガを負った顔良はわずかな供回りの者に支えられながら、晋陽城へと逃げ帰った。
董清は、鬨の声を上げる兵たちを静め、すぐさま進軍を再開させた。晋陽の南に兵舎やら軍事施設がいくつか建設されており、早急に破壊しておきたかったのだ。幸い、鄴からの味方の支援のおかげで、壺関の攻略に費やすはずだった時間は短縮できそうである。

 
顔良が一旦退いた。その隙に一気に軍を進めるべく、董清は各隊に号令を出した。だが晋陽でもそれは想定内の行動であったのだろう。城に帰参した顔良にすぐさま8千の騎兵を与えて、再出陣させたのである。今度は顔良が最も扱いを得意とする騎兵隊ということもあって、顔良は一度は失いかけた自信を取り戻す事ができた。だが、総勢5万近い董清軍に単騎で挑もうなどというのは到底視野が狭い証拠である。またもや返り討ちに遭うのが関の山であるのに、彼にはそれが理解できていないらしい。

 
「何だ?何が起こっている!?」
顔良は喚いていた。無理もない。突然、旗下の兵たちが混乱の極みに突き落とされ、火矢を射掛けられたかと思うと、自慢の騎兵部隊が瞬く間に半数近く討ち取られてしまったのだ。しかも遠くからは轟音と共に何かが破壊される音が聞こえてくる。あの方角には晋陽で軍事拠点を構えている平野がある。もしかすると兵舎や鍛冶場が狙われたのかもしれない。
「うぬぬぬ。どこまでも小癪な!」
彼の地が落とされると、晋陽で再軍備を整えるのははるかに難しくなる。しかし今、自分には指を咥えて見ている以外に手立てはなかった。いや、そんな悠長なことをしていられる状況ではない。自身の部隊、いや自身の命すら危険に晒されているのだ。今更ながらに董清の末恐ろしさが身に染みてきた。

 
「若!晋陽より援軍が向かっているとのこと!」
「将は誰だ?」
「沮授です!」
「ならばヨシ。全軍、沮授隊は意に介さずとも良い。前面に展開する顔良隊を血祭りに上げろ!殊更、我らが武威を示すようにだ。大和隊は敵兵舎を叩き潰せ!」
「御意!」
董清の下知を聞いて、まずは顔良隊の殲滅が始まった。顔良隊にとっては、もっとも恐ろしい瞬間であったろう。本気になった董清軍の攻撃を垣間見たのである。それは沮授隊への示威行為を兼ねていたわけだが、最早少数となった部隊が全滅に追い込まれる様は、まさに悪魔に魅入られたかのようであった。顔良はまたもや晋陽へ命からがら逃げ帰る羽目になった。
事も無げに顔良隊を全滅させた後は、董清軍は左右に展開して、沮授隊を待ち受ける陣形を取った。果たして沮授はどう対応するであろうか?余程肝の据わった者でもない限り、先刻までの地獄絵図を見せ付けられた後に、戦場のど真ん中に躍り出ることが出来る者はいないであろう。董清の読みでは、頭ばかり優れた大して武勇もない青瓢箪ともなれば、顔良が逃げ帰った今、晋陽に引き上げるのが関の山なのだが。

 
董清軍は進軍を再開した。全軍が晋陽に向けて、足並みを揃えて前進する。ちょうどここから狭い一本道に差し掛かるというところで、董清は全軍に一旦停止を命じた。守る側からすれば、この地を利用するのが一番である。攻め手はどうしても一隊ずつにならざるを得ず、兵数の少なさをカバーできるからだ。逆に言うと、ここは絶対防衛地点とも言え、自ずと選択肢が狭まってくる。すなわち打てる手の中から最善の手を選ぶのが参謀という人種であれば、沮授は間違いなくここで迎撃の為の兵を出してくるはずであり、それが彼の智謀の限界でもあるはずだった。董清はそれを逆手に取ればいいはずである。

 
思惑どおりに出撃してきた沮授隊を一瞬で葬り去り、董清軍は晋陽まで後僅かという距離まで接近した。彼らと晋陽を隔てているのは、沮授隊を殲滅する時にできた残り火のみである。今回はそのおかげで晋陽からの迎撃から身を守る盾にもなっていた。晋陽に駐屯する兵は僅かに4千。攻略完了まで秒読み段階にとうとう入った。

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【2014/07/26 00:09 】 | 三國志 | 有り難いご意見(0)
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