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【2024/04/25 10:21 】 |
静かなる闘志
「長安へ移るだと?」
「はい。ここ武威及び安定の復興も間近です。余剰人員も生まれてきた今、気に掛かるのは先年荒廃させてしまった長安のことです。」
「復興に携わり、民に報いたいと申すか。」
「馬氏一族及び郎党の総意にございますれば、何卒お聞き届け頂きたく。」
「分かった。許そう。見事復興を果たし、袁家に南だけでなく、西からの脅威に備える必要を感じさせるのだ。我らが長安から実際に攻めるかどうかはともかくな。」
「御意。全力で取り掛かることをお誓い申し上げます。」
董清の認可を得ると、馬騰は武威と安定の余剰人員を引き連れて、長安へと旅立った。袁家包囲網が段々と狭まっていっている。


上庸実験施設の修繕が完了した。ちょうど新野での研究に差し支えないようにと、蘭宝玉が計算して配慮していたので、大した遅延もない。久しぶりに羽を伸ばせると期待していた黄権らはあてが外れて肩を落とすことになった。
安定での開発は最終段階を迎え、造幣局と穀倉が完成すればすべての事業が完了する。董清からは速やかに長安へ移動するように通達が届いていた。長安の復興作業に大人数を割くが、できれば董清個人としては北伐にも参加したいところだった。何とはなしに内政に専念するだけの生活に飽きが来ていたのだった。武威の兵力を移動させて、いっそ晋陽を直接攻めようかとも考え出した。

 
新野での疫病の蔓延は、梁にとって痛手であった。ここには国内の頭脳の粋が集められているのだ。もし人的損失が出たと成れば、それは国力の低下に直結しかねない事態となりうる。さっそく蘭宝玉は新野へ医療班を派遣した。彼らは医療への参加及び衛生指導に当たり、新野での疫病を早期に収束させる使命を担っている。梁首脳陣としては、彼らに大いに功績をあげてもらいたいところだった。
武威では復興作業に目処が立ったことで、駐屯兵を長安へ移動させることが決まった。途中、安定に立ち寄り長安への資金と兵糧の輸送を兼務する予定である。

新野で急速に治安が悪化しつつある。疫病の蔓延に伴い、物流が悪くなり、食物が十分に行き渡らなくなりつつあった。また風評と共に新野製の物品が買い叩きに遭うようになり、余計に民の暮らしを圧迫しつつある。そういった悪徳商人やら流通業者やらを野放しにしていては、いずれは夜盗が蔓延り、長じて山賊の類が生まれるかもしれなかった。いやすでに徒党を組むことを計画している者がいるかもしれない。そうなると学術の府、新野にいる研究員の生命や膨大な研究データに損失が生まれる可能性があり、梁軍全体に波及する大問題になるかもしれなかった。蘭宝玉は熟考の上、新野近隣に位置する宛から一時的に政務を取り仕切るものを派遣するよう要請した。宛の太守を兼ねる段超はその要請に応え、張既、劉馥、伊籍の三人に協力してこの難事に当たるよう命令を下した。自身が疫病にかかるかもしれないとの恐怖に耐えながら、兵を叱咤激励し、民の不満を和らげねばならない。そんな過酷な仕事は誰もが尻込みするはずだが、彼ら三人は快諾して宛への旅支度を始めたものだった。
「どうせ、誰かがやらなきゃならないんだ。なら、一人モンの俺らの方がいいっしょ。」

「んだんだ。姐御の頼みだしな。断る理由もねえべさ。」
「馬鹿なこと言ってないで、さっさと行くぞ。こうしている間にも民は困窮しているんだ。早く暮らしを楽にしてやらんとな。」

武威での内政もいよいよ大詰めに入った。穀倉の建設が完成すれば、武威も直轄から外れ、太守による委任統治が行われていくことになろう。福貴も馬超も伴侶が先に長安へ赴任しており、自身も早く長安へと向かう為、穀倉建設に精力的に取り組んでいた。安定は一足早く内政に区切りが付きそうであるし、これを機に一度軍団の再編成を行ってもいいかもしれない。新野では、早速赴任した張既、劉馥、伊籍の三人が治安向上の為、市中取り締まりの強化や賄賂の禁止、詐欺・恐喝の類にまで目を光らせた。その結果、疫病蔓延が始まる前までの状態には及ぶべくもないが、徐々に良くなり出した。

張既、劉馥、伊籍の三人は引き続き、新野での治安向上の為の布石を打っていた。幸い疫病は収束し、新たな患者の発生は皆無となり、既存の患者も快方に向かっている。療養所に滞在している患者の家屋は盗人の類が侵入しないよう、巡回して確認させている。困窮している者たちには国庫を開放し、備蓄してあった食料の供給などを柔軟に行い、不平不満を和らげていった。政務に通じた彼らが陣頭指揮を執ったおかげで官僚達も職務が明確になり、励むようになった。無論怠けたり不心得の在ったりする者は、たちどころに処分された。確実に新野の状態は改善されてきている。

長安では董清達がもはや十八番となりつつある市場・農場開発を始めていた。大都市長安であれ、西涼の片田舎で行う事と大差はない。


 
賈逵と張春華が結婚した。まさに電撃と言って良い。降って沸いた突然の朗報に趙雄も驚くしかなかった。
苦楽を共にし、長きに渡る共同研究を続けてきた二人であり、そういう関係になっても不思議ではなかった。それに加えて疫病発生に伴う半強制的な軟禁生活がいけなかった。
「お前ら、いつのまに・・・。」
ワナワナと眉間に皺を寄せて怒りに震える黄権に、「はあ、まあ、なんというか、成り行きで・・。」と答えるしかない賈逵であった。筆頭研究員として、責任(苦労)の大部分を引き受けている黄権としては正直身内の幸せを素直に喜べる心境ではなかった。一報を耳にした時は、黙って私室に帰り、「あーもー!」と叫びながらガスガスと壁を荒れ気味に殴った始末である。こうなったら誰か世話好きのお姉さんに仲介を頼むしかないだろう。置いてけぼりを食ったようなショックからようやく立ち直りつつ、黄権はそう考えるのだった。


そんな内情にはお構いなしで蘭宝玉から、城壁強化の開発の命が届いた。占領したばかりの鄴や平原を北伐の足がかりとする為には、占領直後に磐石の防備を固める必要がある。そのための布石である。黄権の計算では約40日ほどかかるが、ちょうど良い時機になるだろう。

 
黄権に「司空」、賈逵に「尚書令」、張春華に「中書令」の官職任命の沙汰があった。

梁軍の軍事力、内政力を飛躍的に向上させるのに大いに貢献したことが評価されたわけだが、それに異存を唱えるものは誰もいない。多方面に渡る研究を続けてきたおかげで、諸問題にも精通している三人だった。蘭宝玉にあごで使われながら、彼女の期待に歯を食いしばって答え続けている精神力が評価されたというのが巷の噂だったりするのだが、真偽の程はさだかではない。まだしばらくは研究漬けの日々が続く為、官職をもらっても実際の政務に就くのはまだ当面先の事になるだろうということが懸念点だったが、これまでも空席のままで何ら問題がでていなかった故、今更何を言うのかというのが趙雄の持論である。
今の調子で功績を挙げ続ければ、黄権、賈逵、張春華の三人が至上の地位を揃って就任する日は遠くないであろう。


武威での開発が終了した。完全に復興が成った町並みを見て、馬超は思わず形相を崩した。これから福貴や成功英と共に長安へと旅立つ。武威の政務は韓徳が一人残って当たる予定だ。
長安では農場の開発が始まった。大勢の人数で一気にこの大都市を発展させる腹である。

 
軍団の再編成が行われた。新軍団は地域別に分けられ、西涼、巴蜀、南蛮でそれぞれ新設される事になった。各地域には文化や特色というものがあるので、なるべくそれらを殺してしまわぬよう、近しい領域ごとの再編成を実施したのだった。
長安では急ピッチで市場と農場の開発が行われていた。何度も戦乱に見舞われ、すっかり荒廃した旧都ではあったが、董清の吹き入れる新しい息吹によって再生の芽が生まれつつある。

 
「次は防衛強化です。城を守る兵が効果的に寄せ手の兵を削る方法を考案しなさい。」

黄権らが城壁を強化する方法を編み出し、城の耐久力が飛躍的に向上してすぐの話だった。
全く蘭嬢は休息という言葉を知らんのか。これだから私には一切出会いと言うものが・・。
ブツブツ黄権は愚痴をこぼすが、誰も聞いてくれる者はいない。
先日まで賈逵や張春華とはこの手の悩みを共有できたのだが、最早彼らは裏切り者である。
はあ~っと深々と嘆息した後、開発計画を立案し始める黄権だった。

市場と農場の開発が行われる中、董清は法の目を掻い潜って悪事を行う小悪党共を取り締まっていた。董清達の統治に対する民衆の反応は上々だ。何度も戦乱に巻き込まれたことと、都としての機能が完全に移管されている為、大商人の類はこの地に残っていない。だが活気を取り戻しつつあるとの噂を聞きつけて、商売根性の逞しい若手の商売人が野望に燃えて続々と移り住んできた。一攫千金を狙う彼らの周りに雇用を求める民衆がやってきて、その周りにハイエナの如く群がる小悪党がいて・・良くも悪くも活気は盛況だ。悪い方向に進まぬよう、時折董清達は市中警邏を続けている。

「鄴にて我が軍と袁尚軍が激突!お味方の大勝利にございまする。」
「周信殿が水攻めを敢行された由、敵軍の被害は膨大なれど、お味方のそれは僅かとのこと。」
「鄴城に篭る兵は1万を切ったとのこと。落城は時間の問題と思われまする。」

(もう、その辺にしろ。してくれ!)

鬼龍と大和兄弟は静かに伝令の報告に聞き入る董清の顔をそっと伺いみた。沈黙を保っているが、目が異様にぎらついているのが見て取れた。気分が高揚している様子がよく分かった。血沸き肉踊るという形容が正しいのだろう。好戦的な気分になっているのは明らかだった。

政務に優れているとは言え、彼の本分は武人である。ちまちま内政を続けていることこそが奇跡だった。だが如何に董清がその気になっても兵がいなくてはどうしようもない。不幸にして今長安にいる兵は全てかき集めて千がやっとである。中華西部を北から南までそっくり平らげた董清軍にあって、鬼龍と大和も久しぶりの骨休めを思う存分楽しんでいたかった。

「報告!安定より輜重隊が到着しました。金及び兵糧の補給が成されております。尚、2万の兵がそれらを守る為に同行していた由!」

顔をみずとも董清がにやりと笑うのが分かった。
(兵キター!あああああああーーーっ!)

『兵が足りん。募集だ、3万は揃えよ。弩がないだと、すぐに補充しろ。兵士の鍛錬を忘れるな。』
すべて董清の寝言である。とうとう夢の中で戦いが始まったらしい。
さすがに福貴は慣れたもので、ここ数日間は子守唄代わりに聞いて寝入っている。

福貴から話を聞いて、大和と鬼龍は腹を決めた。
「あーこーなったら、もう仕方がねえな。若に我慢は似合わねえ。」
「そうですね。戦支度を始めるとしましょう。」
「差し当たって、陛下と軍師殿に連絡するか。董清軍は晋陽へ侵攻する、と。」
「かなりの長期戦になるでしょう。兵站も心配です。」
「なあに、途中の港を落として拠点とするさ。だが兵糧は大量に持っておくとしよう。」
「遠いですからね。道中、士気が下がらぬよう気を付けませんと。」

 
董清が軍備増強策を打ち出し始めた。榛春、魯蓮らには(美貌や愛嬌を生かして?)募兵を行わせ、自らは福貴や大和共に兵装の仕入れのテコ入れをした。

 
鬼龍、馬超、曹仁には兵の鍛錬を任せた。


さらに韓遂らに市中警邏を行わせることも忘れていない。

新参の馬一族には始めてみる主君の様子がある種、異様に見えたかもしれない。ぎらぎらした腹を空かせた狼のような目つき、矢継ぎ早に打ち出される反論を一切許さない事細かな指示、一歩間違えれば暴君と見間違う言動は董清がすこぶる上機嫌であることの証である。
余人が誤解してはいけないのだが、それは優れた資質と未来予知にも近しい裏打ちされた計算力あってのものであり、幸いこれまで彼の判断が間違っていたことはなく、誰を不幸にしたこともない。先の先まで読み切った戦略と柔軟な戦術が、これまでの巴蜀や西涼攻略にて被害をごく僅かにしたことからも分かるだろう。

とにかく董清は雄たけびこそ上げないものの、静かに闘志を燃やしていた。
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【2014/06/30 21:48 】 | 三國志 | 有り難いご意見(0)
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