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【2024/04/26 04:02 】 |
姦雄の最期

 実験場の核部分の再建設が完了し、次週には外壁部分を建設したら完成である。春風と張魯の任務もようやく終わりが見えてきた。新野で研究資金が枯渇しつつあるとの報告が入った。あと1回大掛かりなテーマをこなせば、次はないとのことである。由々しき問題ではあるが、当座の研究費は近場の宛から支援してもらって凌ぎ、恒久的にはまとまった金額を上庸から輸送することにする。


「段超殿の協力に感謝しませんとね。」
 蘭宝玉は胸を撫で下ろした。突然の頼みにも関わらず、荊州総監が快諾してくれた事はありがたい。これまでの言動から金に固執する吝嗇型の官僚ではないとは思っていたが、やはりその解釈は間違いではなかったようだ。必要な時に必要な所に必要なだけの資源を集中させる。大商人だっただけあって、経営の要点をよく理解している。
 新野の研究員には現在の軍制を誰もが納得するように改定する方向で検討せよ、と伝えてある。漢王朝の頃から続く軍規を踏襲しているが、差別的な旧体質の制度を運用していては、いろいろと弊害があった。有能な将にもっと多くの兵を指揮させることが出来るよう、たたき台が作成されれば、さっそく梁王に上表して規律を改める所存である。


宛攻防戦の頃より、長らく続いた曹操軍との戦に終わりが近付いている。乱世の姦雄も次代を担う新しい勢いに抗えることはできない。洛陽攻略と同時に内政や技巧研究を継続し発展させている連中なのだ。物事を見ている視野の広さが違いすぎた。豊富な資金、兵糧、兵装は政の充実を物語り、名将、官僚の人材の豊富さは梁王を初めとした幹部層の懐の広さを示している。戦いの初期にはそれらはまだ十分でなく、それ故宛での戦闘は1年にも及ぶ激闘となった。しかし勝機はすでにそこで尽きていたと言って良い。その後の戦力差の拡大する様は日増しに早まる一方だった。だからこそあの宛での戦闘で勝利しておかなければならなかったのだ。曹操にとって最大の不幸は、同じ時代に趙雄、董清といった傑物と生まれたことである。そして彼にとって最大の愚行は全軍を持って、早々に彼らを潰しておかなかったことだろう。北方最大勢力の袁紹を置いて、当時無名だった彼らに全力を注げというのは神ならぬ身には土台無理な話だが。


「ようやく輜重隊がやって来たな。」
 天水の側道を漢中からの輸送隊が通過していく。行き先は安定だ。天水城にて市場開発、農場開発の指示を出していた董清はふと砂煙を巻き上げながら北進する荷車の集団を見やった。即、馬騰軍を追い詰めず、時を与えたのは降伏する兵や民を受け入れんが為であった。だがそれももう落ち着いたようである。今武威に残っているのは、あくまで主君に忠義を貫かんとする将兵と民のみであった。できればそういう忠義の士こそ、董清が手に入れたい者達である。だが、それがままならぬのは道理である。
 東では趙雄自ら率いる軍が洛陽に篭る曹操を追い詰めているらしい。そろそろこちらも行動に移す時だろう。董清は配下の将軍達に今取り掛かっている内政が終了次第、安定へと移動するように命を出した。


 春風率いる輸送隊が新野へと出発した。隊と呼ぶのもおこがましく、7万もの金を携えておきながら、わずかな供回りだけの構成である。春風その人はもともと鬼龍を師として武芸のたしなみがある。董卓死後の動乱の時代、董清を守る為に会得したものであり、常人では彼女を斃す事は難しかろう。とは言え、わずかな人数で旅をするのはやはり危険である。それを一切顧みないのは生来の剛毅さ所以というべきか。

 
「そうか。逝ったか。」
「命乞いを一切せず、自ら刑場に足を踏み入れたとか。潔い最期だったそうです。」
 董清が天水での内政を終えて、安定に向かう身支度を始めていた頃に、曹操斬首の報が届いた。父・董卓と覇を競った英雄がまた一人消えたのである。感慨を覚えたわけではないが、董清は彼の冥福を静かに祈った。時代を作り上げて来た者に敬意を表したのだ。これからは次代を担う者として、趙雄と自分がその任に当たることになろう。後世の者達に称賛されるか、唾棄されるかは知る由もないが、ただ己の信じる道を突き進むのみである。
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【2014/06/03 00:16 】 | 三國志 | 有り難いご意見(0)
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