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【2024/04/25 16:12 】 |
予期せぬ再会

永安での造幣局建設事業が完了し、復興作業が一応の終わりを迎えた。報を受けた董清は軍団の再編成を行い、永安、江州に南蛮2群を加え、計4群を張任に統べさせることにした。無論、事前に趙雄には話を通してある。張任に課せられた指名は江陵への滞りのない物資の輸送である。来る孫家との戦において、要となるであろう長江流域での前線基地である江陵に軍資金や兵糧の備蓄を今から始めておくのである。
「身命を賭して、この大任を果たしまする。」
根が律儀な張任は『任せる。』とのみ書かれた董清からの竹簡に頭を下げるのだった。


一方董清は、天水での戦支度を終えようとしていた。このまま滞りなく進めば、来週には軍を進発させる予定だ。目標は武威だが、渡河の際に安定から奇襲をかけてくる部隊が現れるやもしれないと見ていた。そうなったら先に安定を落とすのも良いだろう。武威1群を残せば、あっさりと降伏勧告を入れる可能性も出てくる。今の馬騰軍に将はなく、ましてや率いる兵も不足している。せめて陽平関に閉じ込められている将の帰還が成ればと願っているだろうが、相変わらず関の南から圧力を掛け続けているので土台無理な話である。長安を奪取された馬騰軍には最早落日への道しかないように見えた。

 
董清率いる武威攻略軍が進攻を開始した。真っ直ぐに北上し、一目散に武威を目指している。
「もっと強い奴はいないのか?」
馬上で董清は一人ごちた。血の滾りが尋常でないのを感じる。長らく市場建設、農場開発といった地味な作業を経て鬱憤を蓄積してきた董清にしてみれば、戦場こそが本来の生き場のように思える事がある。そこで一介の武人として強敵とまみえ、雌雄を決する事を望む自分がいることは否めない。折しも、馬騰・馬超親子の武名は天下に轟いている。彼らと一戦交えるに当たり、総司令官として全軍を指揮しつつ、武人としての華を咲かせたいとも思うのだ。
そんなことを考える董清の傍らでは副将の魯蓮もまた物思いに耽る日々を送っていた。先日、李と邂逅して以来出自に関する事が気になって仕方がないのだ。李ともっとゆっくり語りたかったのだが、董清から戦支度を早急に済ませるように命令が出て、すぐに城に戻らなければならず、そのまま別れてしまったきりだ。武威に戻ると言っていたが、戦乱に巻き込まれなければいいと願わずにはいられない。ようやく会えた自分を知る人なのだ。縁あるものと知らずに手にしていた方天画戟はきっとすべての経緯を知ってるだろうが、残念ながらまだ何も魯蓮の記憶に訴えかける事はなかった。武威に行けば、何かが分かるのだろうか。


「董清率いる敵軍が武威に接近中!各部署とも、戦に備えよ。」
馬騰の命が全軍に通達され、長子馬超もまた槍の手入れに勤しんでいた。馬超は今気持ちが荒んでいた。荊北同盟軍相手に連戦連敗なのだからどうしようもない。しかし疲れた体を引きずって、故郷に帰った彼を慰めてくれる存在がいないのが、何よりの原因だった。(こんな時、彼女がいれば・・。)
遠い昔、将来を誓い合った彼女のことを思い出した。・・否、忘れた日は一日たりとてない。明るく優しく強く、彼女となら共に歩んでいけると思っていた。休も鉄も雲騄も彼女を慕っていた。中華平定なぞどうでも良い。ただ彼女と共にいられる日が一日でも続けば・・そう思っていた。
運命が暗転したのは突然だった。ある日彼女が突然消息を絶ち、家族が止めるのも聞かず、随分と方々を探し回ったが見つからなかった。馬超は裏切られたと思った。どんなに探しても呼びかけても彼女は見つからない。何か事情があるのでは、と彼を慰める者もいたが、そんな言葉は癒しにもならなかった。馬超が戦場へと進んで赴くようになったのはそれからだった。何かに駆り立てられるように、敵兵の首を取った。何かをしていないと、すぐに彼女のことを考えてしまう自分が情けなかった。だから彼は無我夢中で戦い、彼女への想いを封印してきたはずだった。
だが武威に圧倒的な力を誇る董清軍が迫り、自分や大事な家族、故郷の運命が風前の灯にさらされた時、真っ先に思ったのが『彼女に傍にいて欲しい』ということだった。

図らずも運命の再会の時が近づいていた。

 

斜角計算、威力調査、それに基づく算術、観測術、地理学、周囲環境調査、夜間時の天文学・・・投石機に繰り出される投石の度に様々な学問のデータ測量が成され、分析されていく。基礎と応用を鍛えられた学士達はそれぞれが郷土に帰れば、先生と呼ばれる立場になれるほどの研鑽を重ねている。学術振興と技術開発を鑑みれば、今は一台でも多く投石機を必要としているのだが・・・。
「委細承知しました。手許にある投石機を数台長安に回しましょう。」
蘭宝玉は快諾して見せた。大都市を攻略しようかという前線に投石機は不可欠の代物である。投石機の有無で大きく攻城難易度は変わり、それに伴い多くの将兵の命運が左右される。兵一人ひとりの命の尊さに比べれば、紙切れの数枚分の報告の遅れなど軽いものである。
「その分主任研究者達には頑張ってもらいましょうか。」
不敵に笑う彼女を見れば、黄権たちはきっと天を仰ぎたくなったであろう。仕方がないことも世にはままあるものである。
   

董清の命を受け、武威攻略部隊は一時森林へと身を潜めた。安定から出撃してきた程銀隊をまずは迎え撃つ作戦である。武威より南下してくる馬超隊が交戦域に達するにはさらに数日が必要で、程銀隊撃破後に反転して馬超隊を壊滅させることはタイミングとしては十分可能であろう。悪くすれば逆に挟撃される危険を伴うが、百戦錬磨の董清旗下の将達にその点の杞憂は全くないと言っても良かった。ただ魯蓮にとって運命の邂逅の時が近づいていることなぞ、その場にいる誰も知る由がなかった。

 
程銀隊はひたすら街道を南西へと突き進んでいた。
「隊長殿ォ、敵の姿が見えませんが、もう逃げちまったんじゃないでしょうか?」
「そうですぜ、隊長。我ら騎馬精鋭と向こうは一度もまともに戦った事がないんだ。恐れ戦いたとしても不思議じゃねえや。」
「弛んでいるぞ。気を引き締めなおせ。我らと敵の勢いの差を侮るな。」
部下をたしなめる程銀にしても、騎馬隊の圧倒的攻撃力に自信を持っていた。これまでの馬騰軍の敗戦は、騎馬隊を前面に押し出しての戦いになっていなかっただけだと考えていた。すなわち自分達が戦場に出てきたからには負けるはずがないと確信に近い信条が彼にすらあったのである。
夕暮れが近づき、程銀は配下に休息を命じた。森林地帯ではあるが、敵もこのような地での混戦は避けるだろう。逆手に取ったつもりで堂々と兵に食事の準備を始めさせたものである。最初の攻撃は彼らの腹が半分以上、満たされた頃だった。携帯していた武器を外し、食器に食らいつくようにして、食欲を満たす彼らの頭上に、突如として岩石と火矢の雨が降り注いだ。突然の事に皆が浮き足立ったが、運の悪い事に最初の攻撃で程銀の指示を兵卒に伝達する小隊長たちの大半が討死していた為、混乱に拍車がかかる事態になった。支離滅裂になって、四散しようとする兵達をどうにか纏め上げようとするも、悪夢の攻撃の第2波、第3波と繰り返されると、最早程銀は抗戦を放棄し、単騎となって安定へと逃亡した。取り残された兵士達はことごとく白旗を揚げ、どこに潜んでいるかも分からない敵軍に憐れにも命乞いをする始末であった。
「若、敵部隊壊滅です。」
「喜ぶのはまだ早いぞ。まだ敵はいる。」
「はっ。すぐに部隊を転進させまする。」
無傷で勝利した董清軍は、今度は迫り来る馬超隊との決戦に備えて、静かに移動を始めた。

 
「射よ!」
董清の下知で、森林に潜んでいた弩兵が一斉に火矢を放った。さらに呼吸を合わせたかのように岩石が次々と馬超軍に襲い掛かる。まさに悪夢のようなひと時であったろう。さしもの馬超は長槍を頭上でくるくると回転させ、次々と火矢を打ち落としていくが、他の兵にそれは不可能な芸当だった。9千近くいた兵がみるみるうちに失われていく。さすがに程銀と違い、絶望的な状況の中で馬超は各小隊長に命を出し、兵に統制だてて防衛を図らせた。盾など持っていない彼らではあるが、死人や鎧など様々なモノを使って、どうにか猛攻を耐え凌ごうと銘々が必死になった。上手く残った兵を纏め上げ体勢を立て直す当たり、錦馬超の異名は伊達ではない、流石である。
「ざっと2千というところか。天水奪回は難しいが、このまま立ち往生していても徒に損害が出るばかりだ。これより鬼門の地の突破を図る。皆、我に続け!」
馬超は一頻りの攻撃が止むと、残兵を数えてすぐさま号令を出した。騎馬隊の本文は機動力である。止まっていては単なる的になるばかりだ。すぐさま全軍が馬超に呼応して動き始めた。

「むむ、若!奴ら突破を図ってやすぜ。」
「あの部隊長は逸材ですな。壊滅的な被害を受けて尚、あれだけの指揮が取れるとは。心身ともに鍛えておる証拠。」
「ついでに言うと部下の人望も相当のものですな。よく纏まった動きをしてやがる。」
「・・・だが、敵である限り容赦はせぬ。魯蓮!」
「はっ。お傍に控えておりまする。」
「機会あらば、奴を討ち取れ!趙雄殿から賜った方天画戟の切れ味を見せてもらおうぞ。」

 
「しゃらくせえんだよ!小細工してんじゃねえ!」
大和の槍が馬超親衛隊を薙ぎ払う。先の戦闘で自分の隊を盾にして、包囲網を突破されたことに腹を立てていた。と、同時にこれまで陣を組めば必勝であった董清軍の手中から唯一逃れ果せた者に対して賞賛の思いを抱えていた。天水に駐屯する兵は約1万。馬超隊の残兵はおそらく2千を切っている。いくら勇将の率いる精鋭揃いとは言え、天水を奪回出来る可能性は万が一にもないことは、余程の凡将でなければ簡単に分かるだろう。武威及び天水への道は我々が塞いでいる以上、今馬超隊にできることは破れかぶれの特攻しかない。しかしそんな最期を迎えさせるには余りに惜しい隊であった。
それらの想いがない交ぜになって、大和は馬超隊への突撃を図っていた。図らずも馬超は先刻来、動揺を隠せずにおり部隊指揮に僅かな綻びがあった。その僅かな隙をついて大和は猛然と敵大将の傍まで接近することに成功したのである。
「白銀の大将さんよ、悪ぃが縛についてもらうぜ。」
「ふん、粗野な男だ。俺の槍捌きに耐えられるかな?」
「上庸の大地より立ち上る義侠の積乱雲、大和!字を首里!大義に生きる董紫音の腹心なり。いざ、尋常に勝負!」
「首里殿!相手にとって不足なし!我は馬超、いざ参る!」
二人の槍が一合、二合と激しく打ち合う。もともと攻城戦に秀でている大和であったが、単騎による武勇もまた董清軍にあって鬼龍と一、二を争う程の実力の持ち主であった。膂力に勝る彼の槍が馬超の喉元に襲い掛かるが、技術力で半歩上を行く馬超が巧みに受け流す。実力はまさに均衡していたが、心の奥底に精神的乱れを隠しきれない馬超が戦いが長引くにつれ徐々に押し込まれていった。
「これでどうだ!」
大和必殺の突きが馬超の肩口を捕らえ、彼の体はその力を吸収しきれずにもんどりうって、馬上から転げ落ちた。すぐさま起き上がったが、その時には眼前に大和の槍先があった。
「くっ、無念。」
「ふん。これで決着が付いたなんて思ってねえよ。次があったら万全の状態のお前とやりたいもんだぜ。」

 
大和の勝利により、馬超は捕縛され、隊長を失った親衛隊を始め馬超隊の兵たちは皆が大人しく投降した。無傷で馬騰軍を連覇した董清軍は、またもや安定より程銀隊が出撃してきたとの報を受け、迎撃の構えを取った。
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【2014/05/21 00:14 】 | 三國志 | 有り難いご意見(0)
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