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天水が陥落した。成公英としては何とか一矢報いようとしていたが、全て徒労に終わってしまった。最後には董清隊が率いる投石機の攻撃を受けて城壁が破壊。突入した漢中軍との斬り合いも短期間で終了し、天水城には荊北同盟の旗が翻る事になった。董清の目は既に次の地へと向いている。 再び研究の日々が始まった。今回は騎兵の鍛錬法が主題である。主任研究担当者達は朝の挨拶を交わした後、それぞれ担当する部分に着手し始めた。彼らのおかげで荊北同盟の底力が飛躍的に向上しつつあるのだが、まだ彼らにその実感はない。 「失敗したわい。」 ぽりぽりと頭を掻くが、作ってしまった物はどうしようもない。張魯が蘭宝玉から命じられて実験場の拡張を行っていたものの、迂闊にも宛と上庸を繋ぐ本道まで完全に塞いでしまう形にしてしまったのだった。宛にも投石機を早々に返せるよう、工房を倍増して引切り無しに製造に取り掛かっている最中だった。これでは実験場の東側に建てた軍楽台も無駄になってしまう。 「はっはっは。ま、なんとかなるじゃろ。」 投石機の東側への輸送は海路を使って、新野経由で行うしかなさそうだ。ちょっと遠回りになるが致し方あるまい。 漢中より輸送隊が進発した。武威攻略戦に先駆けて、天水に駐屯する兵の補充と兵糧の確保が目的である。上庸の実験設備拡張は恙無く進み、ようやく張魯隊には帰還するように指示が下りた。部隊には安堵する者、嬉し泣きする者等いろいろいたようである。李恢とは正反対の生活を送る新野の3主任は今週も工兵鍛錬の研究を命じられて、死線を彷徨っていた。 天水で兵と兵糧の補給を待つ間、董清達は市場の開発を進めた。あっと言う間に次々と西の平野に露天が立ち並び、活気に満ち始めた。上庸と新野では数々の実験が繰り広げられているが、次の研究構想がこれまでよりも一段階上の階層にあり、それが結実するまでにはしばし時を必要としている。上庸では実験処理速度を上げる為、更なる投石機の製造が繰り広げられていた。 天水での市場開発が一通り終わったことを受け、今度は東の平野にて農場の開発が始まった。相変わらず巡察は絶え間なく続けられており、治安状態も最良である。新野でもたまには外に出て太陽の光を浴びないと・・ということで3主任研究員による市中警邏が行われた。来週あたりにはまた新たな研究生活が始まるであろう。 「良馬の産出だあ?俺らは馬の専門家じゃねーぞ。」 ここにいると研究の種には事欠かない。今度はより強い騎兵隊を育てるべく、強い馬を入安定して入手する手段を模索せよという指令だった。これまで馬は商人任せで、駿馬の揃った豊作の時もあれば駄馬しかいない時もあり、まことに不安定だった。いくら兵の精強にしても馬が貧弱だと、隊の強さは半減してしまう。一定の水準で入手し続けるには、自らの手で良馬を産出する方法を模索するしかない。何通りもの馬の組み合わせで配合を行ったり、餌の種類を滋養たっぷりに変えてみたり、馬の育成方法なども考える必要があろう。 「ちんたら遊んでる暇があったら、あんたも実験してきなさい。」 「いや、私は民から米の徴収を・・。」 「つべこべ言わずに行きなさい。」 蘭宝玉の眉間に皺が寄る度、また一人投石機使いが増える。 それと同時に荊北同盟全軍に布告が出された。 「統率力のない者、武力に自信のない者、そんなあなたを我々は大歓迎します♪上庸に生き場を見出してみませんか♪」 「この者と、この者と、この者を上庸に連れてきなさい。」 蘭宝玉が独断と偏見で選んだ、各地で暇そうにしてて腕っ節の弱そうな者達に召集がかかった。行き着く果ては、地獄か上庸実験場か、はたまた新野研究所か。どこに行っても廃人になるという専らの噂である。蘭軍師が最近女王様のように見えるとは、よく言ったものだ。荊北同盟の強さの秘密に、一部の者達の血の滲むような研鑽があったとはまさか諸侯は思いもしないだろう。 勢力が拡大すると、後方の兵糧庫より、前線の都市群への輸送量もまた多くなるのは道理である。取扱量の増大により、荊北同盟の各港及び関所の施設能力では取扱量が限界に達すると、かねてより参謀達の間で予測されていた。また、大型貨物船による貨物輸送の長距離化に伴い、荷役工具の更新や取扱能力の増強が求められるようになっていた。今回、参謀達の提言を受けて、蘭宝玉は新野の研究員に港関拡張の為の画期的方策を作成するように命じた。いつものように事も無げにである。 早速、新野では3主任を中心としたプロジェクトチームは組まれ、新規防波堤の建設、軍資金・兵糧・兵装用の貨物置場の整備、省スペースでの大人数兵舎の増設、船舶進入航路の浚渫など次々と案を創出しては実現へ向けて細部を練り始めた。これらをすべて机上の空論に終わらせず、具体化させる道筋を付ける事ができれば、並行して各地の港関の貨物取扱量の増加や利用船舶の大型化への対応を図ることができるであろう。 PR |
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