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【2024/04/25 09:00 】 |
女丈夫、駆ける

「兵を鍛えろ。鬼龍、大和達は戦支度を整えておけ。」
 呉蘭隊の先兵が漢中のはるか西に姿を見せたとの伝令があり、董清は旗下の将兵に備えるように号令をかけた。だが張魯を始めとした内政官には、引き続き開発を進めるよう命じてある。例えすぐ隣の土地で戦闘が始まろうとも決して手を止めるなと。従わぬ者は容赦なく斬り捨てるとの下知もあり、董清を畏怖する官吏達は皆、必死になっていた。
 魯淑瑛の尽力で、孫策との同盟が成ったとの情報が入った。宛で曹操の猛攻を凌ぎつつ、外交にも手を回す当たり流石である。今度はこちらが見せ場を作らねばなるまい。まずは呉蘭隊を殲滅して景気づけるとしよう。


 桟道を必死の思いで通り抜け、やっと漢中へと辿り着いた呉蘭隊を待っていたのは、豪雨の如き矢の斉射であった。長躯してきた呉蘭隊が、漢中平野でまず一息付こうとする場所を蘭宝玉は読みきり、指示を受けた董清、鬼龍、大和、春風達がそれぞれ指揮する伏兵がその場所を包囲するように布陣していた。そんな所へノコノコと現れたのだから、呉蘭隊にとっては災厄以外の何者でもなかった。6千もの兵がまさに一瞬で全滅し、隊長の呉蘭は命からがら梓潼へと逃げ帰った。
「若、趙雄殿より使者が到着してござる。」
 先を促された鬼龍が使者を通すと、弩の改良が近く施されること、荀攸を漢中方面へ転属させることへの打診、騎兵隊の創設について使者が手短に説明した。董清が快諾すると使者は喜んで新野への帰途に着いた。
「騎兵隊の組閣の件ですが、打診のあった張繍殿は間の悪いことに、現在、井蘭製造の為に兵器 工房に出かけているところです。約3ヶ月は戻らないでしょう。」
「出来る限り協力をしてやれ。宛は今最も苦しい時であろうから。」


 趙雄は董清と数回文をやりとりした後、周倉と裴元紹に難所行軍訓練を課すよう命じた。

 さっそく翌日から周倉と裴元紹は兵士達に重量物を背負わせた上で、泥地や浅瀬を歩かせたり、山地を3日間連続で行軍させたりと様々な試みをしている。兵士達も最初はへばっていたが、徐々にコツを掴む者達が現れて進軍が円滑になりつつあった。周信が戦の傍ら、彼らの訓練方法を教本として纏めており、いずれは荊北同盟全軍に行き渡らせる予定である。そうすれば卓越した踏破能力を備えた精強な軍隊を荊北同盟は保有する事ができるだろう。
董清は呉蘭隊を殲滅した後、一度漢中軍に都市に戻るように命じた。兵士達に十分な休養と訓練を課した後、いよいよ益州攻略に臨む予定である。


 漢中では逸る将兵の気持ちを宥め、黙々と新野から伝わってくる踏破新技術の鍛錬が続けられていた。だが地道な訓練に嫌気がさしている者が大勢だった。


 陽平関を寡兵で封鎖している林玲の武勇が伝わっていることもあり、兵士達は皆昂揚を押さえられない様子だ。奇声を発したり、剣を闇雲に振り回したり・・という者が出てきている。董清の厳命の下、厳しく上級官吏が目を光らせていなければ即治安の悪化に繋がりかねない。それほどに漢中では好戦的な気分に満たされていた。当初は多少の兵士の脱落は已む無しとして、強引に益州攻略に乗り出そうとしていたが、折角趙雄から申し出があったこともあり、董清が益州進攻時期を技術の確立に合わせることにしたのも遠因としてある。戦に向けて気分を高めていたところを肩透かしを食らった感じになったのだ。すでに福貴、大和の井蘭隊を攻略の主軸とし、鬼龍と董清自らが弩兵隊にて出陣することが決まっており、あとは漢中開発の進行や馬騰軍の侵略などの状況にもよるが魯蓮の戟兵隊が予備兵として内定している。だが董清の命は絶対であり、兵士達の不満を押さえつけるべく、更なる過酷な訓練を課して何も考えられないようにしようとしていた。
大和「皆に抱えてもらう重量は昨日の2倍だ。それに今日から平地でなくて、山登りすっぞ。皆、がんばれや。」
福貴「井蘭隊も例外ではありません。どんな悪路であろうと、予定通り進軍する事。気張りなさい!」


「何か一度耕した田畑をもう一回耕しなおしている気がするねえ。」
「うむ、俺もそうだ。集約した鍛冶場をもう1回作っているような。」
 漢中では諸将が既知感を覚え、戸惑っていた。


「……やることはいつも通りだ。とにかく、畑を耕す。」
 鬼龍が静かな声で宣告する。ここ数ヶ月余りの農場暮らしで、随分と泥沼感というか百姓らしさが出てきたようだ。
 西の開発地では農場が各地で耕作中で、東では市場の建設計画が効率よく進められている。もう少し農民と人員に余裕ができてきたら、いっそのこと大農場への集約にかかっても良いかも知れない。生き残るためとはいえ、自分も随分と庶民感が出てきたものだ、と董清は自嘲する。


「目指すは梓潼!途中の関所はすべて陥落させる。交渉など悠長なことをやるつもりはない。ただちに進軍を開始せよ。」
董清の号令一下、漢中軍が出発した。福貴、大和が率いる井蘭隊が攻城を担い、董清・鬼龍がそれぞれ率いる弩兵隊が迎撃に出てきた敵の露払いを行うことになっている。漢中の開発は順調で、兵糧基地として今後大いに責を担う事が期待されている。益州攻略いよいよ開始である。
同時刻、蘭宝玉は宛の周信宛に書状をしたためていた。
『宛の防衛が成った暁には許昌を攻略できませんか?目標許昌の都・・というより漢帝です。廃帝とするなら別ですが、擁護するのであれば漢権力の中枢を握る事ができます。そうすれば今後様々な研究開発を国家の大計として成す事が出来、国家施設の使用や技術開発員の協力を得られます。開発が進めば、大いに荊北同盟の力となり得るでしょう。検討してみて下さい。』


 漢中の開発に目処が付きつつある。馬騰軍の進攻を陽平関で食い止めている林玲の功績が大きいが、新太守として内政の手腕を存分に発揮している魯蓮を無視することもできないだろう。武辺一辺倒かと思いきや、意外と統率力のある一面も見せ、ますます持って彼女の素性が気になるところではある。漢中での開発が一段落すれば、占領予定の梓潼で新たなる開発に携わる者、上庸で募兵をかける者に大きく分かれる予定である。
 漢王朝については董清としても何とも思っていない。復興だとかは正直どうでも良く、そういう意味では軽視していることになろう。ただ積極的に滅ぼしたいかというとそうではなく、趙雄同様使えるものは何でも使い切るという姿勢だった。国家の大義なんてものは全く持って重視していないが、それが有効であるならば手中にしておこうかという程度である。そこで趙雄から真意を確認する文が届いた時、董清は至極あっさりと『君側の奸を除き、保護奉るべし。』と返書したものである。宛でのしばしの共同生活の中で、董清の利己的な一面を知った趙雄にはそれで十分伝わるだろう。仮にこの返書が他の諸勢力に奪われたとしても、この文面を見ただけでは言質を取られる心配はない。

 

「こんなむさい奴らと一緒にいるよか、百倍は面白いかもね。」
 蘭宝玉の誘いを受けて、宇文通は宗旨替えを約束した。陽平関の南側へ再三攻勢をかけるべく主張していたにも関わらず待機を命じられ、無能な同胞に愛想を尽かしていたところだった。何をするでもなく鬱々と過ごすのに飽き飽きしていたところだが、大軍でいることをヨシとして弛緩しきっている同胞と異なり、夜陰に紛れて自分の傍近くまでたった一人でやってきた敵軍師の度胸に度肝を抜かれたというのもあった。周囲すべて敵だらけという状況で宇文通は堂々と寝返りを宣言してみせた。と同時に傍らで惰眠を貪っていた張横隊に突進する。散々蹂躙した後、視界の端に怒りの形相で馬玩が隊の矛先をこちらに向けるのが見えた。張横隊も体勢を整えつつある。おそらくこれから自分は死地を迎えるだろうが、不思議と恐れは無かった。むしろ高揚感に満ちている。「何度でも駆けるさね。全軍突撃ー!」


 漢中では長らく檻に入れられ、無頼をかこっていた雷銅が荊北同盟の軍門に下った。梓潼への進攻軍は、剣閣が福貴隊の攻撃に一週間と持たずに陥落し意気を上げたところである。


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【2014/03/25 02:58 】 | 三國志 | 有り難いご意見(0)
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