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鬼龍は新野から帰参すると、真っ直ぐに主の下へ訪れた。
董清「そうか。新野も着々と戦の準備を進めておるのだな。」 鬼龍「はい。新野は軍資金・兵糧・兵力・将の数、およそあらゆる面において上庸よりも勝っております。趙雄殿の非凡さが良く分かりますな。 董清「非凡なのは県令殿だけではあるまい。良い部下に恵まれている。」 鬼龍「それも含めて趙雄殿の功績ということでしょう。・・・時に紀横殿が若の事を案じておられました。」 董清「どういうことだ?」 鬼龍「若が旧知の者達との戦いに気後れなさらないかと。」 董清「張繍に賈詡・・・確かに父の部下だった者達だ。だが、それだけだ。我が覇道の前に立ち塞がるのなら、踏み越えていくまで。」 鬼龍「それを聞いて安堵しました。ですが張繍殿は御父君の軍にあって、唯一今尚精強に磨きを掛けておられるお方。加えて、賈詡殿は大陸最賢の呼び声も高い。手強いですぞ。」 董清「尚更良い。彼奴らを倒して、我が軍の武勇を全土に轟かせてくれよう。彼奴らが軍門に下るのであれば言う事はない。」 来るべき宛攻略に向けて準備が進められている。上庸では市場の整備が第一とされ、次に兵装を整えるための鍛冶設備の建設が大和・鬼龍兄弟の主導で始められた。また林玲による兵士の調練も並行して進められている。趙雄が軍備増強に舵を切ったことは新野からの使者により、董清にも伝わった。上庸でも今後の方針について検討されたが、あくまで市場の整備を優先する事が決定された。隣接する張魯、張繍は未だ大規模な兵力増強をする様子は見られず、長江を挟んだ劉表、遠い長安に駐屯する曹操軍もまた同様である。よってまずは全てにおいて必要不可欠な軍資金の確保を優先事項として選んだのである。仮に余剰が生まれたとしても、その場合は新野へ融通すれば良いだけのこと、と董清は考えている。 後の課題としては……。 「人的資源、か。」 やはり董清も趙雄と同じことを考えていた。だがその結論に至るまでの志向が野心溢れる董清は異なっていた。新野や上庸の専守防衛だけを考えれば事足りる。しかし今後領国を増やし諸勢力と覇を競おうとすれば軍事、内政の各方面において、まだまだ駒が不足しているのだ。別方面の戦を完全に任せられるだけの司令官とその配下の将軍・参謀達・・そういった人材を早急に揃えたい。その為には巴蜀か中原か江東か、まずはどの方面の攻略に取り掛かるか旗色を鮮明にする必要があった。何故か西進や南進することに心が躍らない為、曹操との対決姿勢を打ち出すことを部下や新野県庁には提示してみせたのだが。その心境は彼自身にもよく分からなかった。 (弱者のうちから強者に挑むか。ふっ・・血と炎の7日間の再現という訳だな。) 一瞬、何者かの声が聞こえた気がした。董清は思わず席を立って周囲を見渡す。だが人の気配は全くなかった。いや違う、先程の声は耳からではなく、頭に直接響いたような・・。 「もう酔いが回ったか。」董清は一人ごちて机上の酒瓶と肴を片付けた。 PR |
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