「悪いが城門を開けることはできない。」
「どうして?」
「大きな声では言えんが、ドラゴン襲来の噂があちこちで飛び交っててな。無責任な風聞に踊らされた市民が暴徒化せぬように一時的な厳戒態勢が敷かれている。」
「その噂の元凶のヘルゲンに俺が居合わせたと言ったら?」
「なに・・・?」
衛兵は真っ直ぐに俺の眼を見た。
俺もまた視線を逸らすことなく、衛兵を見返した。
しばらくした後、衛兵は肩をすくめて言った。
「どうやら嘘を付いている訳じゃなさそうだ。通してやるよ。」
「いいの?」
「四の五の言わず、俺の気が変わる前にさっさと通れ!ただし中で変なことしやがったら、真っ先に俺がお前の首を刎ねてやるからな。」
「ここがホワイトランかあ。」
緊迫した空気が漂っているのは否めないが、それでも町の賑わいはリバーウッドの比ではない。通りを忙しそうに人々が行き交い、広場では露店が軒を並べて道行く人々に声をかけている。
「そうよ。ここはスカイリムの中心。文化も交易も人々の交流もここを抜きにしては語れないわ。現首長のバルグルーフは、内戦に関しては中立の立場を貫いているわ。曖昧な態度を取る彼を不満に思う人は多いけど、今の厳しい状況下で断固として中立を貫き続ける彼を私は立派だと思うけどね。」
ともかく俺達は小高い丘の上にあるドラゴンズリーチヘと向かった。
ドラゴンズリーチという名称は、その昔ホワイトランの首長であり、上級王にもなった『隻眼のオラフ』が捕らえたドラゴンをここで繋いでいたことに由来するという。
ジャルデュルから頼まれていたので、リバーウッドの防衛要請をしに、俺は首長への謁見を願い出た。
「ほう、ヘルゲンでドラゴンを見たと。それは確かか?」
「ええ。帝国軍に首を斬られそうになっていたところを、奴の襲撃があったおかげで助かりました。」
「・・・・なんとまあ、そんな事情まで赤裸々に明かすとは、豪胆なことよ。」
「嘘を交えたり、隠し事をしては、閣下に信用して頂けないと思いまして。」
「そうか。他には何か変わったことはなかったか?」
「ウルフリック=ストームクロークが同様に囚われていました。」
「やはりあいつが関わっていたか。色々と世間を騒がす奴だ。お前はあいつのことをどう思う?」
「信頼に値する誠実な人とお見受けしました。」
「確かにあいつは古きノルドの考えを引継ぎ、大事にしておる。世の半数は彼に喝采を送るだろう。だが・・・。」
「?」
「分かった。とにかくリバーウッドを防衛する兵を送ろう。安心するが良い。」
「ありがとうございます。」
「お前に頼みがある。」
「何でしょう?」
「我が宮廷魔術師と話をしてもらいたい。ドラゴンの研究に余念がなくてな。実際に見たというお前の話を喜んで聞くだろう。」
俺はバルグルーフ首長の願いを聞いて、宮廷魔術師ファレンガーと数日間話し込んだ。大抵は一方的なファレンガーの質問に答えているだけだったが、先日ブリーク・フォール墓地で拾った奇妙な石版を見せると、今度はそちらに夢中になり、ようやく俺は解放された。
何でもドラゴンの埋葬地が記されているらしいが、俺には重たいだけの代物だったので、なくなって清清したぐらいだ。石板にしても必要としてくれる人の傍にあった方が嬉しいだろう。
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