俺はここ数日というもの、錬金術に役立つ材料集めに夢中になって、野山を駆け回っていた。

今日も材料収集に精を出してた時、とある洞窟の前で血を流して蹲っている男から声をかけられた。
「おお、人だ!頼む、こっちに来て助けてくれ!」
「どうしたんですか?」
「スプリガンだよ、奴らにやられた。」
「え?あの木の精霊に!?」
文献によれば、スプリガンというのは、自然を守ろうとする人型の精霊だったはずだ。自然を破壊しようとする人間を見るとすぐに襲い掛かってくるので用心が必要らしい。毒の爪や攻撃魔法など、自身の攻撃力も優れているが、動物をけしかけて来る事もあるとか。
「そうだ。この洞窟の中に3体もいやがる。」
「とりあえず出血を止めないと。」
俺は彼に回復の薬を分けてやった。
「ありがとう、青年。俺はヴァルドルって言うんだ。よろしくな。」
「カイトです。」
「ハルカよ。」
「助けてもらっておいてすまないが、俺はまたこの洞窟の中に戻らないといけない。」
「え?どうして!?」
「中にスプリガンがいるんでしょう?死にに行くようなもんです!」
「しかし、仲間2人がまだ中にいるんだ。もう殺されているかもしれないが、せめて仇は取ってやりたい。」
「・・・。」
「どうする?カイトくん?」
「どうもこうも、この人を放ってはおけないですよね?寝覚めも悪くなりそうだし。」
「ふふふ、そう来なくちゃ!大丈夫、私が守ってあげるわ。」
「ええ、期待してます。」
洞窟内に入った俺達の目にまず飛び込んできたのは、全裸の女性の遺体だった。
「ああ、アリ!アリ!何てことだ。」
「酷い・・・。散々嬲られた挙句に殺されている。」
「これが・・・本当に精霊のやることなの・・・歪んでる。」
「くそう!ぶっ殺してやる!精霊だろうと関係ねえ。」
「落ち着いて!無闇に戦いを挑んでも、返り討ちに遭うだけよ。」
「そうです!それにもう1人仲間がいるんでしょう。今死んだら誰がその人を助けるんです!?」
「・・・・そうだな、すまない。」
俺達は、冷静さを取り戻したヴァルドルと共に作戦を練った。
スプリガンの一体が、突如襲ってきたが、作戦通り3人の連携が上手くいって、何とか撃退した。
「強敵でしたね。相手が1匹だけで良かった。」
「気を抜かないでね。あと2匹もいるんだから。」
「そう言えば、ヴァルドルさん達は、何故この洞窟に入ったんです?」
「ああ、そりゃこの洞窟に熊がいるからだよ。奴らの毛皮は高く売れるんだ。」
「へ?」

「ちょっと待て~い!」
「ガオー!」
・・一気に血の気が引いたよ。
確かに分厚い熊の毛皮は、ここスカイリムでは寒冷地ゆえ重宝される。
ただし熊は文献を持ち出すまでも無く、攻撃的で、耐久性にも敏捷性にも優れており、未熟な狩人や冒険者は命を落としかねない動物として知られている。
早く言ってよー!
「あれ?残りのスプリガンは、どうやら熊にやられたようですよ。」
「え?まじで?」
「ヴァルドルさん達は・・スプリガンよりも強い熊を狩ろうとしてた訳ですね。」
「・・・おいおい、命がいくつあっても足りねーぞ。」
「ああ、ニールス。・・・やはり死んでいたか。」
洞窟の最奥で、無念にも絶命している男性の姿を見て、ヴァルドルは肩を落とした。
「世話になったな、カイト!ハルカ!」
「どうしたんです、急に池に飛び込んで。」
「清めだよ、死者を弔う前に体に染み付いた血を洗い流しているんだ。」
「手伝いましょうか。」
「ありがとう。だが一人でやらせてくれ。」
そう言って、ヴァルドルは仲間の弔いを始め、俺たちは彼に別れを告げた。
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