しばらく待ったが、レイロフ達が続いてくる気配がない。
(くそっ。何やってんだ。)
そのうち、ドラゴンが再来したようで、外の様子が騒がしくなった。
俺もこのままだとマズイ。
やむなく、後の再会を願って、俺は脱出を試みることにした。
「あっ、お前。」
「あんたは確かリストの・・。」
宿屋を出た途端、俺は一人の帝国兵と出会った。
「無事だったか。あ、待て、逃げなくても良い。・・逃がしてやるよ。」
「なんだよ、そりゃ。さっきは殺そうとしてた癖に。」
「しゃーねーだろ。上司の命令だったんだよ。でも今はこうやって助けようとしてる。おあいこさ。」
「どーだか。信じられないね。」
「じゃー別にいいさ。ただ生き延びたいんなら、俺に付いて来い。」
結局不服はあったが、ハドバルという帝国兵に付いて行くことにした。
土地勘もない俺一人より、誰かと一緒の方が少しでも生き延びる確率は高くなるはずだ。
帝国軍はドラゴンの相手やら、市民の脱出の手助けやらで大わらわだった。
魔道士部隊が次々と火炎球を放っているが、一向に効いている風には見えない。
たまに地上に下りてきても、戦士達の剣は通じないようだ。固い鱗に阻まれ、剣の刃が中まで通らないらしい。じわりじわりと皆に絶望感が広がっていくのが見て取れた。
(やはり、今は逃げるしかない。)
ハドバルと逃亡を続けていると、その先でレイロフと鉢合わせした。
生きてたか~、良かった。
「よぉ、ハドバルじゃねえか。」

「レイロフ・・・この裏切り者め!」

「そう熱くなるなって。それに裏切ったのはそっちの方だろう?」

「俺がいつ何を裏切った?」

「タロスへの愛だよ。お前はノルドの誇りを捨てたんだ!」
おーおー、何やら熱いトークを交わしてますな~。知り合いか?
「二人とも!今は罵り合ってる場合じゃないだろう?さっさと脱出しよーぜ。」
「こいつと一緒なんて、やだね。」

「それはこっちのセリフだ。」

「カイト!お前はどっちと一緒に行くんだ?」
そりゃ、今選べと言われたら、レイロフになるよ。

ハドバルにはさっき間接的に殺されそうになった訳だし。

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