「もう駄目だ!奴らの方が数において、圧倒的だ。」

「仕方あるまい。ミアズマを解放するぞ!」

「××××!覚悟はできてるか?」
「ああ、大丈夫だ。任せておけ!」
拙僧の精神は今、とある男の中に入り込んで二十数年前の戦いを追体験している。
エランドゥルの作戦は、拙僧が薬を飲んで、封印を解除するというものだった。
「飲むのは拙僧なのか?なんで!?」
薬の効能よりも、理由が納得できなくて、拙僧は食い下がった。
「無理もなかろう。昔はともかく、今や私はマーラの神官だ。ヴァーミルナの息のかかった薬を飲むわけにはいくまい。飲めるのはヴァーミルナの神官か、一般人だ。」
「・・・・。」
自分が飲みたくなくて、理由をこじつけているだけのような気がするが、どーこー言っても仕方あるまい。
まだ見ぬドーンスターの美女達の為に、拙僧は薬を飲むことを決意した。
「いいか。この薬を飲むと精神ははるか過去に飛び、体は消える。お前の精神が再び現世に戻ってくれば、その時体は他の場所で具現化する可能性が高い。」
「なんか、高確率で死にますって言われている気がするんだけど・・・。」

「気のせいだ。きっと成功する。」
「きっととか言うな!」
「ごちゃごちゃ言わずにさっさと飲めって。」
事情はよくは分からんが、拙僧の精神が入っている男はミアズマと呼ばれる睡眠薬の散布を任された。
男は各所で繰り広げられているオークと神官の戦いを擦り抜けて、散布に成功した。
が、男はその後・・・。
「おお!無事に戻ってきたようだな。」
「ああ、上手く追体験した先で、封印のこちら側に来たんでな。」
拙僧の精神は現世に上手く戻ってくることができた。
しかも都合のいい事に、封印の先で体も具現化した。
「その魂石だ。その石を外せば、封印は解ける。」
これかっ!
エランドゥルの言うとおり、石を外すことで封印が解けた。

やっと通れるようになった扉を潜り抜けて、エランドゥルがこちら側へとやってきた。
「なあ、爺さん。」
「ああ?」
「睡眠薬が散布されたときに、聖堂内部の人間は皆、眠ってしまったんだよな?」
「ああ、そうじゃ。」
「なら、なぜ爺さんは助かったんだ?」
拙僧は、とある男の心に入り込んでいる時に、ずっと感じていた。
男は使命を果たすことへの責任感と、使命を果たした後に起こる恐怖に押しつぶされそうになっていた。

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