「私はな、マーラの神官になる前は・・」

「ヴァーミルナの神官だった?」

「気付いておったか。」

「そりゃ、これだけ事情通だったらな。」
隠し扉の存在やら、要となる髑髏の存在やら、実際に関わっていなければ、まず知ることは難しかろう。
しかし、この聖堂の荒れ具合が尋常でないが。
「ここは二十数年も前に、オークの襲撃に遭っての。彼らもまたヴァーミルナの悪夢に悩まされているようじゃった。ともかく神官一同で応戦したのじゃが、多勢に無勢じゃった。いよいよ覚悟を決めねばならなくなった時、神官長たちは禁断の手法を使ったのじゃ。」

「禁断?」
「ああ。簡単に言えば、眠り薬じゃな。ただし、一生目覚めることもないぐらいに、超強烈じゃが。」
「ふうん。じゃあ、神官たちは今はどうしている?」
「眠っているじゃろう。襲撃してきたオークたちとともにな。」
「諸刃の剣という訳か。じゃあ、封印があちらこちらに施されているのはどういう訳だ?」

「眠り薬が聖堂内に満ちるまでに、各所にいた神官が、防衛の為に張ったのじゃろう。とは言え、そう淡々ともしておられん。これら封印を解除せぬことには儀式の間に辿り着けんでな。手がかりを探すぞ。」
エランドゥルと拙僧はまず図書館へと向かった。
エランドゥル曰く、封印を破るための手法が書かれた本があるらしい。
「これじゃ!これじゃ!よし、後は薬を用意するだけじゃな。」

「薬?」

「なかなか貴重な材料が必要だからな。外界で探すとなれば、一苦労じゃ。できれば聖堂内に残っているといいが。」
「薬ねえ。残ってたとして、二十数年も前に作製されたやつだろ?有効期限とか大丈夫か?」

「まあ、不安はないではないが、他に手もないしの。」
「いや、外界で集めなおすとか・・・」
「ほら!研究室に辿り着いたぞ!」
研究室(なぜ聖堂にそんな部屋があるのか不明だが。)もまた、オークの襲撃の折りに、無茶苦茶に破壊されたようだった。
「こんなところに薬なんて残ってるのかねえ。」
「何言ってる?あると思わねば、ある物も見つからんぞ!」
期待交じりの発言(ボケ)に、鋭い返答(ツッコミ)をイタダキマシタ。

全くその通り!拙僧、なくても良いと思ってマス!
「・・・あ、見つけちゃった!」

「でかしたぞ!」
拙僧、なんでこんな時に運を使っちゃうんだろう。

もっと女を口説く時とか博打をする時とか、そういう時に幸運の女神に微笑んで欲しいのに。

PR